9:(閑話)蛍ヶ丘 蓮華 視点 仁義なき組分け
「行ったか・・・」
僕は夜くんと零くんが廊下に出て行った事を確認し、思わずそう呟いてしまった
だがその言葉はホッとしたとかそういう事ではない
今から始まる戦いを・・・女の子の仁義なき戦いを彼らには見て欲しくないからだ
そして同じクラスの女の子たちも今から起こり得る事を理解しているのだろう・・・場が一気に緊張感を持ち始める
「では・・・今から紅組さんと白組さんに分かれてもらいます。」
先生も今から起こり得る事を理解しているのだろう、急に重々しい口調で私たちに問いかける
「先ずは立候補してもらいますね・・・紅組さんに行きたい人っ!!!」
そう言われた瞬間、私を含めた全員の脳がフル活性化して悩み始める
そもそもこのクラス・・・いや、この園では『夜人派』と『零派』で完全に分断されている
それは誰1人例外も無く、夜くん推しか零くん推しかのどちらかしか存在していないのだ
王子様の様な容姿で大人っぽく物静か、そして何より優しい彼に恋焦がれる『夜人派』
最初は我儘で太っちょだったが、夜人くんと友達付き合いをする内に私たちにもある程度優しくなり、それと比例する様にカッコよくなっていたワイルドな彼に首ったけな『零派』だ
派閥割合としては7:3くらいで『夜人派』が園を占めている
勿論僕は『夜人派』、何なら夜くんと仲良くなった『原初の3娘』に名を連ねる幹部だったりする
というものの、園では『夜人派』と『零派』で戦争している訳では無い
夜くんの行動や言っていた事を同じ派で共有したりしている程度だし、『零派』もそれは同じだろう
今問題なのは・・・『夜人派』の自分は夜くんと同じ組になれるのは紅組なのか白組なのかという事だ
それはあづみも雪もそうだろうし、零派の面々だって同じことを考えている
(考えろ・・・夜くんは紅組なのか・・・白組なのか?!)
此処で当たりを引けば、余程の事が無い限り夜くんと同じ組だ
同じ組だったら運動会が終わるまでアドバンテージを取ることが出来るっ!!
(夜くんの性格上、零くんに紅組を譲りそうな気がする・・・という事は白組が正解か!!)
よし・・・白組だっ!!
そう思った瞬間、雪の右手がピクリと動いた
(雪は夜くんを紅組と読んだのかっ?!確かに夜くんは基本的には優しいが譲れない所は譲らないという意志の強さがある・・・雪が紅組だと読んだのならその可能性は・・・高い!!)
『原初の3娘』に数えられる雪も当然は『夜人派』だ
僕は雪に負けじと手を上げた
「はいでは蓮華ちゃんは紅組ですね」
先生が手を上げた子供の名前をドンドン書きだしながら告げて来る
・・・ん?・・・蓮華ちゃんは?
雪は?雪はどうしたんだ?!
そう思って彼女をみると「はわわわわ・・・」と言いながら手を引っ込めだした
先生が名前を呼ばなかった事により手を引っ込めたのか?!
どうやらあづみも白組を選択したらしく、上手くいけば『原初の3娘』の中だと僕だけが彼と同じ組になれる!!!
そう期待しながら白組に手を上げたあづみや他の子たちを見送り、自分で選べなかった雪たちが先生に聞き取りされるのを見ていた
・・・・・・そしてその十数分後、私は心の中で泣いた
 




