7:考え方が既にチート
「あづみちゃん、僕の出る種目だけ教えても良いかな?」
「えっ?!どうしてっ?!」
「零くんは僕と男同士で競争したいんだと思うんだ。この保育園で男の子は僕らだけだから・・・だから僕は零くんと競争したいんだけど・・・ダメかな?」
「・・・・・・」
あづみちゃんは俺の言葉を聞いて考え込んでいる
男である零や俺の気持ちを汲んでやりたいという気持ちが有るのだろう
何だかんだでこの世界の女の子は優しいから・・・
「・・・分かったわ。じゃあ夜人くんの出る種目だけ教えて良いわよ」
「有難う」
流石あづみちゃん、白組を率いているだけあるね
あづみちゃんの許可を得たので俺は零の方へ視線を向けた
おいおい・・・そんな期待に満ちた眼差しを俺に向けるなよ
単に俺が出る種目を伝えるだけだぞ
間違っても「零、勝負だっ!!」みたいな事を俺は言わないぞ
「零くん、僕はアスレチック競争に出るよ。・・・順番は1番最後になると思う」
「っ!!よ、よしっ!!だったら俺様もアスレチック競争の1番最後の順番で出るっ!!よ、夜人・・・勝負だっ!!」
「う、うん・・・精一杯頑張るよ」
すまない、零・・・
見かけは5歳児でも30歳児の俺は、零のテンションには呼応出来ない
「きゃーーーーーーー!!!」
「男の子の戦いよ!!!」
「2人とも頑張って欲しいっ!!」
だが周りの子たちはそうでも無かったみたいだ・・・
片やハイテンションな零、片やローテーションな俺とのやりとりを班という垣根を超えて、アルパカ組の子たち全員が興奮した顔で見つめながら黄色い声をあげている
まぁこの世界では男同士の戦いなんてフィクションにもなりにくいんだろう
それが現実に見れるんだから彼女たちが興奮するのも致し方ないとは言える
「ふんふん・・・因みにあづみは何の競技にでるのかな?」
「・・・私は言わないわよ」
「おや、どうしてだい?」
「私は白組の中では運動できる方だけど、蓮華ちゃんはそんな私よりも運動が出来るから。」
「・・・へぇ、僕から逃げるんだ?」
「・・・えぇ逃げるわ。蓮華ちゃんから逃げて私たちが勝たせてもらうわ」
再度火花をバチバチと散らせるあづみちゃんと蓮華ちゃん
いや、君たち本当に5歳児??
実は俺と同じで精神年齢高かったりしない?と思わずエアツッコミを入れてしまう
個の勝負をしたい蓮華ちゃんに対し、全の勝利を優先するあづみちゃん
俺の周りの子たちが優秀過ぎて、俺自身が付いていける気がしないなぁ・・・と思わず遠い目をしてしまう様な出来事だった
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お昼の後、白組の俺たちは自由時間を練習に割り当てる事になった
少々ガチ過ぎて引いてしまっているのは内緒だ
紅組は誰が何処に出るかのメンバー調整を行っているらしい
俺は同じアスレチック競争に出る『りんちゃん』『めいちゃん』『さつきちゃん』とグランド端に集まった
「私さっきアスレチックって何があるのか先生に聞いたんだぁ~」
と無邪気喋るのはは『りんちゃん』こと夏夜野 凛
「えぇ~・・・すごいすご~い!!・・・せんせぇ、おしえてくれたのぉ~?」
とゆっくりフワフワと相槌を打っているのが『めいちゃん』こと鳴上 メイ
「でもそれって大丈夫かしら?私たちの反則負けなんてならない?」
と鋭い質問を投げかけて来るのが俺てきに将来委員長になる最有力候補である『さつきちゃん』こと日暮 沙月だ
この新3人娘と共にアスレチック競争への練習メニューを考える事に取り掛かった




