44:(EPILOGUE)世界じゃそれを愛と呼ぶんだぜ
「眠い・・・」
ヒーローショーの件があった翌朝、若干寝不足気味になりながらも俺は麗さんの運転する車に揺られて保育園の向かっていた
「スー・・・スー・・・」
そしてそんな俺に100%もたれ掛かって眠っているのは安定の月姉さんだ
「昨日は大変でしたからね・・・」
「でも僕が悪いから・・・」
そう・・・帰宅後に俺は母さんの宣言通り、お説教をしっかりと食らっていた
相手に暴力で訴えかけるのは愚か者のする事だ
人が傷ついている行為を相手の目の前で自分が行ってどうする
あそこで向こうの親や護衛官が有無を言わさず暴力で訴えかけてきたらどうするつもりだったのだ、と・・・
間違いなく正論ではあるし、愛あるお説教だったからこそ甘んじて受け入れたが・・・最後は抱きしめられながら危ない事はしないで欲しいと言われた事は・・・本当に参った・・・
今朝は母さんにも休んでいいとは言われたけど・・・月姉さんも行く訳で、俺だけが甘える訳にはいかないと登園しているのだが・・・既にもう眠いグゥ・・・
「夜人様、月様、到着いたしましたので起きてください」
そうだよね・・・大体寝付きそうなタイミングで目的地って到着したりするよね等と若干ふらついた頭で納得しながら、月姉さんを起こして車から降りる準備をし始めた
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「よ、よよ夜人くん、おおはよう・・・」
「ゆ、雪ちゃんおはよう。き、昨日はごめんね・・・」
モモンガ組に到着すると雪ちゃんがこっちに駆け寄って挨拶してくれた
どうやらお兄さんを泣かした事には怖がられていないみたいだ
だが俺が雪ちゃんのご家族に無礼を働いた事実は消えないので謝罪する
「う、うううん!!きょ、今日ね、朝起きたらね・・・お母さんが横にいたんだ」
「ほう・・・」
「で、でででね・・・お、お兄様も・・・お布団にいて・・・わ、わ私・・・嬉しかった」
「ほうほう」
・・・詰まり、普段は一緒に寝ていない家族の人と一緒に寝て嬉しかったって事かな?
まぁ、雪ちゃんが喜んでいるのならばこれ以上の野暮は言うまい
「良かったね、雪ちゃん」
「う、ううううんっ!!で、ででねっ!き、きょ「イタッ!!!」」
雪ちゃんの話を聞いていた俺の後頭部に痛みが走り思わず声をあげてしまった
誰が何もしていない俺を叩くんだよと振り返ると・・・
「お、俺様の妹に・・・て、手を出すな!!!」
「・・・・・・え?」
そこには昨日のかなりふくよかな女性に変装した彼では無く、僕と同じ保育園の制服を着たかなりふくよかな男の子・・・零くんがいた
「ゆ、雪は俺様のい、妹だっ!!!妹に手を出す奴はゆ、許さないぞっ!!!」
「いや、零くん・・・だよね?な、何でここに居るの?」
「っ?!!お・・・お前が保育園に来いって言ったんだろ?!!」
いやいやいや・・・確かに言った・・・言ったよ?
だけど、さ・・・彼の性格上、来るなんて欠片も想定していないかった
それに昨日の今日だぜ?どれだけ行動力があるんだよ・・・
「マ、ママとお兄様とお、お話して・・・き、今日からお、お兄様もほ、保育園に行く事になったの」
「ふんっ!!俺もお前と同じ週3日だけどなっ!!マ・・・ママがひ、人にや、優しく・・・出来る人になって欲しいって言ってたから・・・仕方なくだぞ!!」
「OH・・・」
どうやら俺の保育園生活も色々な意味で濃密になりそうだなぁ・・・
零くんを探す茎中先生の声を遠くに聞きながら、思わずそんな心情を浮かべてしまった




