12:身体と頭が繋がらない時の対処法って心を落ち着ける事なんだけどさ、
「と~~~う」
「フガッ!!!!」
「「「おぉ~~~~」」」
思わず感嘆の声が口から漏れ出してしまった
というのも阿多地女史がこちらへズンズン近づいてくるスピードを見計らって、凛ちゃんがドロップキックを繰り出したのだ
それが思った以上にクリーンヒットしたらしく、阿多地女史はゴロゴロと転がっていった
これには俺だけでは無く、零や姉さんも思わず感心してしまった位に見事なドロップキックだった
「いえ~~い」
凛ちゃんは立ち上がるや否や俺たちに向かって満面の笑みでピースサインを
俺達はそれに思わず拍手をしてしまう
「な、何するのよっ?!!」
「何って…悪者退治?」
「誰が悪者よ誰が?!!」
「おばさん」
「お、おばっ?!!誰がおばさんよ!!私はまだ28よっ!!」
「おばさんじゃん」
「っ?!!!あ、あんた…今この瞬間に全世界の28歳以上の女性を敵に回したわよっ!」
阿多地女史は尻餅をついた状態でキーキーと抗議している
でも…手段云々は兎も角、凛ちゃんの言う悪者の部分は間違ってないんだよなぁ~…
「いやだっておばさんさぁ、このお店って男性専用店だよ?男性若しくは男性の同伴者しか入店できないお店だよ。そんなお店に店員さんの制止を振り切って無理矢理入店して来て、そんな目が血走って突撃してくるのは悪者以外、何者でもないんじゃないなぁ?」
「うっ!!わ、私はげ、芸能界のスカウトよ?!!私が見出した芸能人が人気になれば貴女や貴方以外の女性の人生に活気を与えることが出来る、崇高な仕事なのよ!!」
「崇高なお仕事かどうかは人によりますが、夜人くんの意志を無下にする様な…ましてや社会のルールも守れない様な輩の話なんて聞くに値しないと思いますが」
だよね…どんな職業でもルールを破って良い免罪符にはならない
政治家だから法律を遵守しなくても良い訳じゃないし、ましてやスカウトなら何処にでも入店できる訳なんてない
ましてや男性専門店に突撃してくるスカウトなんて俺(男)からすれば印象最悪だわ
「あ、あんた達ねぇ~…」
凛ちゃんと姉さんの言葉に血が上ったのだろうか?
顔を真っ赤にしながら、射殺す様な目で俺達を睨みつける
(俺の周りではこんなタイプの女性は居なかったけど…まぁ居ても可笑しくはないなぁ…)
所謂、逆ギレというやつだな
多分凛ちゃんのおばさん発言で余計に冷静ではいられなくなったのだろう
まぁ、個人的な主観では全然おばさんではないと思います、はい
「いちいち私のする事に余計な事をしないで頂戴っ!!!!」
そんな事を考えていたその瞬間、阿多地女史は立ち上がって再度こちらに向かって突撃してくる
いや、突撃してどうするんだよっ?!!
あんたの目的はスカウトだろ?!!
俺達にタックルかましてスカウト出来る訳ないだろ?!!!
「はぁ…」
「夜人くん?!」
「夜人?!」
そんな事を心の中でツッコミながら、俺は一歩前に歩みを進める
このまま成り行きを後方で見ていても誰かがケガするかもしれない
男の俺が飛び出せば、勢いは弱まるだろうし、そもそも足運びからして素人丸出しだからな
万が一にも俺がケガする事なんてあり得ない
「ななななななな?!!!!」
「ほい」
案の定、阿多地女史の勢いは俺が一歩前に出てきた事で急速に弱まりだしだ
肩に触れると同時に足払いをし、クルンと回った瞬間に右手を掴んで地面に撃ちつけられる衝撃を弱めてやると同時に関節を極める
「え~と…店員さん。申し訳ないですが、警備員さんを呼んで頂けますでしょうか?」
そしてそのまま店員さんに声を掛け、阿多地女史をドナドナして貰う事にしよう
……今日はイベント盛り沢山だなぁ~等と考え、若干憂鬱な気持ちになったのは内緒だ




