11:さっさと話を進めたいのに気分がそれを許さない…
「そう言えば2人も今日は買い物デートかい?」
「デッ?!…ま、まぁそんなところだ」
この店に入ってきているという事は詰まりそう言う事だろう
男性専門店は基本的には男性と同伴者しか店内に入る事は出来ない
そうでなければ男性がゆっくりと買い物が出来ないという理由かららしい
「奇遇ね。私も夜人くんに相応しい洋服がないかと思ってこのお店に来たの」
「そうなんですか。因みにどうでした?」
「未だ全ての商品を見た訳じゃないけど…これなんかどうかなと思ったのだけど」
姉さんはそう言って先程の『男シャツ』を再度広げる
ヤだよ!!!
こんなシャツ、ただの罰ゲームじゃないか…
「あぁ!そのシャツ、このお店の一押しらしいですね「嘘っ?!!」」
凛ちゃんの発言に言葉を被せる様に反応してしまったが…これは仕方ないと思う
こんなシャツを打ち出しているお店とは残念ながら俺の趣味とは正反対の方向へベクトルが向いていると言わざるを得ない
「おぉ!確かにこのシャツは俺も良いなと思っていたぞ!!夜人、俺と一緒にこのシャツを買わないか?」
「買わないよ?!!」
……どうやら零みたいな俺様系には刺さるデザインらしい
俺には理解出来ないが、詰まり男からのニーズも全くない訳ではないらしい
「ん?こんなにカッコイイのに何が不満なんだ?」
「あっ!!ハッハーン…夜人くん、どうやらこのシャツの背面プリントを見てないんじゃないの?」
「背面?ま、まぁ確かに見てないけど…」
「やっぱりっ!!だったら背面部分を見るとこのシャツの良さがより理解出来ると思うよ!!」
背面のプリントがどうであろうとも、大きく『男』と書かれているシャツ何て絶対欲しくはないのだが…
凛ちゃんはそう言いながら自信満々にシャツを反転し、バックプリントされた柄を見せる
「…………」
要らねぇ…
そこにはデカデカと『盛』という漢字がデザイナーズ風にプリントされていた
表に『男』、裏に『盛』…果たしてこのシャツを欲しがるセンスはどうなのだろうか…?
そう思わずにはいられない一品だ
「夜人くん、これカッコ良くない?!!」
「夜人!!俺と色違いで買おうぜ!!」
「このお店の名前って日本語訳すると男性の最盛期、詰まり『男盛り』って読むんだって!!これはもう買うしかないよ!!」
そう言いながら3人が3人とも俺に対し打ち出し商品を進めて来る
だが俺は絶対にこの商品は買わない!!
胸元にワンポイントある位なら譲れなくも無いが…こんな蛍光色で書かれた漢字のシャツなんて買う事自体が黒歴史だ!!
そんな事を考えながら、さてどんな風に拒否すれば波風を立たせる事が無く断る事が出来るだろうか…と思案していると…
「お客様困ります!!!当店は男性の方、若しくは男性同伴の方のみのご入店に限らせて頂いております!!」
「だ、大丈夫です!!あ、あそこに知り合いが!!知り合いがぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
何処かで聞いた事のある声が聞こえて思わず振り返ると…さっき警備員さんに連行された阿多地女史が両腕に店員さんを抱えながら俺達の元にやって来た
いや…これって下手すれば犯罪なんじゃね?
若干呆れた面持ちでそんな事を考えている間に、ドンドンとこちらの方へ近寄ってきたのだった




