10:デート中にクラスの子に出会うと何となく気まずい
「夜人じゃないか?!!」
「姉さん、このシャツなんてどう思う?」
聞き覚えしかない声を華麗にスルーして、パッと目についたシャツの話題を姉さんに振る
何で入学式といい、大事なイベントの日に限って出くわすのだろうか…?
「おい夜人、いつもいつも俺を無視するな!!王逆では天丼というらしいが、流石の俺も飽きたぞ!」
「いやいやいや…それを言うなら、入学式やデートに限って零と出会うのもいい加減飽きたんだけど」
「ちょっとそれ酷くないか?!!」
「いや全く」
「くすくすくす…相変わらず仲が良いなぁ~」
そんな感じで零とじゃれ合って(?)いると、横から笑い声が聞こえる
どうやら零も1人で来たのではなく、女友達と遊びに来たみたいだ
……ん?オンナトモダチ?
……誰が?零が?
そんな事を思いながら零の傍らに立っている女の子に目をやる
黒い髪をボブカットにしており、健康的な小麦色の肌が快活なイメージを与える美少女だ
私服だから分からないが、うちの学校の生徒だろうか?
少なくともA組の子ではないのは確定だが…
だがさっきの台詞といい、何処か既視感がある子なんだよな…
「何だ零?お前もデートなのか?」
「デッ?!!デート…ではない…かもしれない…」
「あれ~デートじゃないの~?私はデートのお誘いかと思って今日はお洒落してきたんだけどなぁ~」
「なっ?!!」
「あぁヤバいなぁ~…私泣いちゃうかもしれないなぁ~!!夜になったら枕濡らしてるやつだよ、これ」
「デ、デート…なのかもしれない…」
零が顔を真っ赤にしながらそう呟くのを聞いて、その子はケラケラと笑いだす
何だろ?夫婦じゃないのに夫婦漫才感が凄い子だな…
「そうそう、夜人くんも久しぶりだね~!相変わらずイケメンっぷりが半端ないね!」
「あ…あ~…何処かで会った…よねぇ~?」
既視感はあるのに誰なのかは分からないのがもどかしい
俺のそんな返答がお気に召さなかったのだろうか?
頬は膨らませて抗議の視線を俺に送る
「月さんもお久しぶりです。夜人くんが私の事を分からないみたいですがどう思います?」
「えぇ久しぶりね。…正直、夜人くんは私以外は視認出来なくても良いとすら思っているから特に思う事は無いわ」
そんな姉さんの回答に「相変わらずですねぇ~」をケラケラ笑いながら話続ける
姉さんも知っていて、姉さん相手にも尻込みせずに受け流せる子といえば…
「っ?!!!り、凛ちゃん?!!!」
そうっ!!保育園時代の同級生である【夏夜野 凛】ちゃんだ!!!
凛ちゃんと最後に会ったのは…多分小学校5年生になる直前だったと思う
え?!3年でこんなに変わるの?!!
雰囲気も凄く大人っぽくなってるし、受け答えも以前とは違う
前は何でも「何とかなるなるっ!!」みたいな感じだったのに…
はぁ~…女の子の成長って早いわぁ~…
となると、零がいつの間に凛ちゃんと仲良くなったのだろうと気になり、零の方へ視線を向ける
すると顔を赤くしながら若干俯きながらボソボソと話し出す
「いやその、な…?この間の練習試合に行った時に偶然会ってな?その…何だかんだで遊びに行く事になってな…?」
「ふ~~~ん???」
いや、誰に言い訳してるんだよ?
何か青春している感じで良いじゃん?!!
そんな気持ちを込めてニヤニヤすると、零にちょっと小突かれた
……解せぬ




