9:言葉が分からないからこそカッコ良く見えるデザインのシャツって、後で調べたら微妙な気分になる
警備員さんに引っ張られながら去っていく阿多地女史を見送った後、俺達は再度別のお店の洋服や小物等を眺めながらショッピングを楽しんだ
まぁ、中学生の俺達は購入したい物があれど厳選せざるを得ない
そういう意味では殆どウィンドウショッピングだと言っても差し支えないのだが、思った以上に楽しめた
夏が近づいてくる時期という事も有り、夏用の新作が出ていたりして色味も派手で華やかな物が多かったしね
「あっ!夜人くん男性用のお洋服専門店だよ!!」
「本当だね」
「ちょっと寄ってみようよ!!」
「そうだね。良い物があれば良いけれど」
やっぱりこれだけ広いショッピングモールでも、男性用の洋服専門店は非常に少ない
だから男性用専門店が目についた瞬間、姉さんは俺を引っ張っていく
まぁ、このモール全体でも男性用専門店は数店舗しかないから別に良いのだが…
(考えてみれば…前世でも男性用の専門店は女性用と比べると少なかったもんな。この世界だとさらに少なくなっても仕方ないか…)
俺はそんな事を思いながら姉さんに連れられながら店内に入っていく
店の名前は…【apogée de la vie d'homme】と書かれている
白い看板に青い文字、iの点の部分が炎のロゴになっている為にお洒落に見える
この世界では男性用専門店というだけで目新しい部分がある為、男用の店で凝ったデザインロゴなのは珍しい
それにフランス語…か?
こう言う店名も以外と少ないのだ
まぁ…意味は分からないんだけどね
店の前から期待値が上がり、俺は店内に入っていく
店内にはそこまでの商品数は陳列されておらず、充分な通路スペースを確保している様な形だ
前世でいう所のエル〇スとかが近いかな?
「いらっしゃいませ。本日店内のご案内をご担当させて頂きます。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
店内に入るとギャルソン(?)の様な女性スタッフがそう声を掛けてくれる
どうも男性専門店にはこの様な形での接客サービスが多く存在するらしい
以前に別のお店で聞いた話だが、男性客の中には何処に何があるかが分からずにブチ切れたりする輩が一定数いるらしく、この様な形なのが一般的だそうだ
……この世界の男って救えねぇわ
「あぁ…いえ。店内をゆっくり拝見したいので、何かあればお声掛けさせて頂きます」
「畏まりました。それではごゆっくりとお過ごしくださいませ」
けれど俺みたいにゆっくり見たい男からすれば付きまとわれるのが不快だという男も存在する為、断れば店の端っこで待機してくれる
こんな接客を受けると場違いな高級店に入ってしまったのではなかろうか?!と都度不安に思ってしまい、近くの衣服の値段をさり気なくチェックするのは内緒だ
店内直ぐのマネキンに着せているシャツの値段は…うん、セーフ…
女性と比べて需要が低い為に値段は若干割高ではあるが、想定範囲内の金額だ
まぁ男は存在するだけで給付金も国から振り込まれたりする訳だから、充分に手の届く金額ではある
「ねぇ夜人くん。こういう服はどうかしら?」
「ん?う~ん…結構派手なシャツだね…」
中心部分に【男】と大きくプリントされているTシャツを手に取って提案してくる
幾ら姉さんからの提案だとしても、このシャツは却下だ…
何が悲しくて男をそこまで自己主張しなければならないのかがよく分からない
しかも男の文字周りに金糸やラメが使用されており、無駄に豪華なのが余計に腹が立つデザインだ
まぁ、好きな人は好きなのだろうが…俺はパス
「え~…じゃあねぇ~」
どうやら俺の表情で余り気に入っていない事を察したのであろう姉さんは、他の商品に目を向ける
その瞬間に「夜人ではないか?!!!」と背後から聞いた事がある声が俺の名前を叫んできた




