8:マッサージで背骨が鳴ると凄く気持ちが良い
「夜人くんはこの服装の私と、この服装の私のどっちが好き?」
「う~ん…どっちも可愛いとは思うけど…どちらかと言えばこっちかな?」
姉さんが試着した服装を写メで撮影し、見比べながらそんな感想を口に出す
こう言う時って女性の中で答えがすでに出ているらしいのだが…そんな正解は俺には分からない
前世でも同じ様な質問をされ、同じ様に答えると「え~~?!!でもこっちの色味の方がさ…」とか言われたりして「じゃあ聞くなよ!!」と心の中で叫んだりもしたもんだ
けれど月姉さんはそこら辺が一味違う
「そっか!じゃあ夜人くんが似合うと思う方にしよっかな?」
「でも今始まったばかりだから、取り敢えずはキープで良いんじゃないかな?」
「そうだね!!」
……皆さん聞きました?
やっぱり月姉さんは天使ですわぁ~!!
自分の中でどっちでも問題ない状態から聞いてくれるだけでどれだけ俺(男)の心の負担が軽減される事か…
「ところでさ…あの人ってどうする?」
月姉さんに目線で誘導されるまま店外に目をやると、先ほどの女性が店内に入らずに廊下の端で仁王立ちして俺達を監視している
「絶対に俺達の事を見張ってるよねぇ…」
「ほんと邪魔」
「宜しければ警察を呼びましょうか?」
明らかに視線を向ける女性に対して、店員さんも流石に心配になったのだろう
そんな事をやんわりと提案してくれるんだけど…
まぁ、有りがたい申し出ではあるんだけど、そこまで大袈裟にすることでもないしなぁ…
「夜人くんはホントに甘い。男性をつけ狙う行為は普通に犯罪」
「え?」
ナチュラルに心の声を聞かれたんですけど?!!
まぁ危害を加えられたわけでもないし、過去に何度も声を掛けられているからこれ位は大丈夫かな?とは思っていたけれど…
コクコクコク
だがやはり俺の認識はまだ甘かったらしい…
横にいる店員さんも姉さんの言葉に無言でメチャクチャ頷いている
確かに俺は男だし未成年だし…決して褒められた行為ではないわな
「あ~…じゃあ警備員さんを呼んで頂けます?警察になると事情聴取とかでデートが強制終了する可能性もありますから」
「っ!!!店員さん、警備員さんをお願いします!!10時間くらいは監禁しておいてください!!」
「わ、わかりました!!」
月姉さんの言葉に店員さんは思わず姿勢を正して返事をする
どうやら月姉さんはその可能性を考慮していなかったらしい
初めてのデートが事情聴取で強制終了するなんてやっぱり嫌だもんな…
あの女性は俺達という利益を求めている以上、危害を加えそうな感じではあるし大丈夫だろう
まぁ、いざとなったら俺の合気道が火を噴くZE!!って事で…
「ちょ、ちょっとあ、貴女たち何ですか?!!わ、私は客ですよ?!善良な通行人ですよおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!」
……3分後、両脇を警備員に固められて引きずられながら去っていく阿多地女史を俯瞰的な目で見送った事を此処に記しておこうと思う
「さ、夜人くん。邪魔者は居なくなったし、次のお店に行こっか!!」
「ソウダネ」
阿多地女史の哀愁ある去り際に対して姉さんは特に感想を言うでもなく、ショッピングの続きへと繰り出そうとする
この辺りが女性の強い所だなぁ~…とつくづく実感せざるを得ないなと思ってしまった




