9:いつもと同じ登校風景(の筈)
「夜人くん、準備は出来た?」
「うん、大丈夫だよ」
土日と体と心を休めて、月曜日
俺と月は平日のルーティンである「準備できたか」「出来たよ」というやり取りを行って玄関へ向かう
「ほら夜人くん!早く早く!!」
廊下で俺を追い抜かし、急いで靴を履いて手招きしている様は非常に愛らしい
いかんな…心持ち一つで、こうも考え方は異なるものなんだな…
「「いってきま~す」」
母さんは既に会社へ向かった為に誰からも返答は無いが、いつもと同じ事をして玄関の扉を開けた
そして一歩外に出たその瞬間、月は俺の腕をギュッと掴んできた
うん…これも今までと同じルーティンではあるものの…やっぱり心持ちで感想は変わるもんだね
今の俺の感想としては…決して悪くない
そんな感情を抱きながら俺は学校へ向かって行った
◆◆
ーーーざわざわざわーーー
姉さんと一緒に登校する度に他の生徒からの視線を滅茶苦茶感じる…
まぁ、元々姉さんは校内では有名人だったらしいから、男性である俺と一緒に登校するという事に注目を浴びるのは致し方無い部分ではある
正直、そろそろ慣れて欲しいという気持ちはあるのだが…
(あっ!月姫様と聖王様よ!!)
(あっ!!今日は2人のご尊顔を拝見できたから良い事あるかも!!)
(て言うか…今日の月姫様って何か光り輝いてない?!!)
(確かにっ!!あのまま翼が生えて飛んで行っても驚かないレベルに光り輝いてる!!)
(そこは驚こうよ…)
けれど今日はここ最近と比べて1.5倍くらいの視線を感じる気がする(当社比)
まぁ、週明けだからという事もあるし、3日振りに俺が登校してきたという事も多少は関係しているのかもしれないな…
「夜人~!!!」
「…あぁ、零くんお早う」
そんな事を考えながら歩いていると、聞きなれた声が俺の名前を呼ぶのが聞こえる
一瞬スルーしようかと考えてしまったが…普通に挨拶してくれている友人に対してスルーするのは酷いと思うし、挨拶を返しておいた
何か零って、時々おちょくりたくなるんだよなぁ~
「良かった…夜人、生きていたんだな?!!」
「……ん?」
どういう事だ?
そんなデッドオアアライブみたいな生活を俺は送ってないんだが…
「どういう事?」
「ほら、金曜日に引きずられてされていただろ?!!公理たちに夜人の命が危ないかもしれないと相談していたのだが…無事で良かった…」
あぁ…ガチ切れの姉さんに引きずられるかの様に連れていかれた俺の事を心配してくれていたのか
零は天然ではあるが、良い奴だからな
俺の事を心配してくれていたんだろう
「公理たちに夜人へ連絡しようと言ったんだが…何故かアイツ等に止められてしまってな。全く友達甲斐の無い奴らだ!!」
そんな事を言いながらプンプンと怒ったかの様な表情を零は浮かべるが…それは公理くん達が正解だと思う
男女関係の事は相手から相談が無い限り、第三者が口を挟むとロクなことが無いからな
「あの時の夜人の様子を見ると、このまま二度とあえないかと心配していたのだが…無事で良かった!」
「お兄ちゃん…」
あ、雪ちゃんも居たんだね
零の背中に隠れていたから分からなかったよ
「いや~…しかし月さんの勢いは凄かったな!!!俺でさえ、今思い出しても恐怖を感じるくらいだったからな!!」
「お、お兄ちゃん…」
…繰り返すが零は良い奴である
だが…天然でもある…
「あれから月さんにどんなお仕置きを喰らったのだ?!中々厳しかったのではないか?!俺もこの前、母さんに怒られた時は「零くん…」っ?!!!!」
それにしても…零は俺の直ぐ傍にいる姉さんが見えなかったのだろうか?
それだけ俺の事を心配してくれていたのかもしれないが…やっぱりコイツは天然だわ
姉さんの一言で恐怖の表情を浮かべる零を見て、俺は複雑な気持ちになってしまった




