8:大きな一歩(月視点)
「じゃあ、私はそろそろ休むわ」
「あら…今日は早いのね」
「つ、月…お休み~」
22:30頃になり、私は家族に挨拶をして自室の扉を開ける
ーーーパタンーーー
「ふ、ふふふふふふ……」
自室の扉を閉じた同時に思わず声が口から漏れ出てしまう…
危なかった…本当に危なかった…
ずっと口角が不自然に上がってしまわないかヒヤヒヤしながら、けれども夜人くんの傍にはずっと居たいという相反する欲望に流されながら、気が付けば本当に限界ギリギリなこんな時間まで耐え続けなければならなくなったのだ
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ…」
だけど自室に入った今この瞬間、私は自分の感情を解放させても良いっ!!!
そうなれば感情が口から漏れ出てしまっても何ら問題は無いのだっ!!
私は衝動のままにベッドへ身を投げて足をバタつかせる
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい
夜人くんがっ!!
夜人くんが私のハグに応えてくれた!!
夜人くんが私を月と呼んでくれた!!
夜人くんが私の「あ~ん」を受け入れてくれた!!
夜人くんが私に「あ~ん」を返してくれた!!
夜人くんが私に前世の事を話してくれた!!
どれも私に対しての信頼がないと出来ないモノだ
それを夜人くん自身が決めて、私の愛に対して応えてくれたのだ!!
私は一生、今日という日を忘れる事は出来ないだろう…
「これは神様に感謝するべき事案ね」
私は夜空に向かって感謝の御祈りを捧げ、再度ベッドに身を投げ出して足をバタつかせる
私は今、この瞬間の為に生きていたのかもしれない…そう思うに足る出来事だった…
◆◆
「……ふう」
気が付けば時計の時刻は23:21を指している
幾分が気持ちが落ち着いた私は今後の事を思案する
元々確定事項ではあったけれど、私はこのまま夜人くんと結婚する
けれど…結婚をするにしても、お互いに愛し愛される結婚生活になるのか、惰性的な結婚生活になるのかは今からの2人次第なのだ
普通の男ならば惰性的な結婚生活なんて懸念事項は考えない
何故なら気に入らない事があれば相手の事も考えずに破棄するだろうから…
けれど夜人くんは違う
愛では無く、情や申し訳ないという様な気持ちで私と結婚する事が有り得る
そうなると一定周期で家には来てくれるだろうけど…私の理想とする愛し愛される結婚生活とは異なってしまう…
「その為には…まだまだやる事は山積みね」
そんな言葉が思わず口に出てしまうが…それでも私の口角は上がってしまっているだろうが、それは仕方がない
これからも困った事や嫉妬する事、怒る事…もしかすると喧嘩する事だってあるかもしれない
けれど今日この日に於いて、私は夜人くんの本当の婚約者になったのだ
その気持ちだけで私の人生は明るいと…心からそう信じられたのだ




