2:彼女ですか? …前世では居た事あります
「そこからかな…?俺は多分女性という性別に対して潜在的に距離を取り出したんだと思う」
「………」
「俺の父親は今思えば良い人だったんだろうな…。前の世界では夫婦は同居する家庭が大多数でね、これまでアイツと行っていた事を全部父親が引き受けていたからね。仕事して、家事をして、偶に外食に連れて行ってくれて…出来る限りは俺に寄り添ってくれていたんだろうなと思うよ」
まぁ、寡黙と言うか…口下手だったからな…父親の苦労や想いの真意は分からない
今となっては二度と分からない事だが、多分結構大変だったんだろうなと思う
いかんいかん…思わず感慨に浸ってしまった
「だからなのかな?小学校や中学校時代は女子とは余り話したりせずに、男子とばかり話したり遊んだりしていたよ。幸い…周りも思春期に入ってお互いを意識していたからね、俺の行動が変に浮くという事もなかったしね」
月姉さんに思春期って分かる?と尋ねると無言で頷く
どうやらこの世界でも思春期ってあるんだなぁ~…
「夜人くんは…その…前の世界でお付き合いした人はいたの?」
「……うん、いたよ」
「っ?!!!」
まぁ月姉さんなら尋ねて来るだろうなぁ~と思った
居なかったと嘘をつくのは簡単だけど、俺は出来る限りは嘘をつきたくない
「ただこの世界とは違って、前の世界ではお付き合い=結婚じゃないんだ。結婚前のお試し?みたいな感じでね。男女比が1:1だからこその慣習なんだろうけどね」
この世界では男が貴重だからこそ、お付き合い=婚約みたいな部分があるからな
言い方は悪いが、前の世界ではその人と上手くいかなくても他の人を探すことが出来る
でもこの世界でも可能とは言え、絶対数は男が少ないから容易ではないという事だろう
そこら辺も歪になってしまっている要因なんだろうなぁ…
「どんな人…?」
「最初に付き合ったの人は…どちらかと言えば、活発な感じの人だったかな?」
「っ?!!な、何人も付き合ってたの?!!!」
「あ~……そうだね」
姉さんの指摘に対して思わず失言してしまっていた事に気づく
実際に過去に数人と付き合った事はある
俺個人としてはアイツの事があったから付き合うとか、そういう部分を敬遠していたが…告白して貰ったり、この人はアイツとは違うと信じてみたりして付き合ったりがしたんだが…残念ながら俺には縁が無かったみたいだった
「じゃ、じゃあ…け、結婚とかしたりしてたの?!!!」
「ううん。残念だけど結婚はせずに独身のまま死んでしまったんだ」
そうなんだよなぁ…
俺が前の世界で通り魔みたいな奴から女の子を助ける為に飛び出せたのも、守るものがない、大切な人がいない…所謂、失うモノがないという側面があった事は否めない
「そっか…」
月姉さんは俺の答えにホッとした表情を浮かべる
まぁ女心は分からないけれど、どうしてホッとした表情を浮かべたのかは…何となく理解出来る
「じゃ、じゃあ…よ、夜人くんは…そ、その…どうして前の世界で…亡くなったの…?」
けれどその後、何処か思いつめたかの様な表情で俺の死因を聞こうとする姉さんには、シュールな面白さを感じたりした
本人に本人の死因を聞くって…何となくシュールじゃない?
そんな事を思いながら、前世の最後の瞬間を思い出しながら月姉さんに説明する様に口を開いた




