34:「あ…ずれてました?そっすか…すいません」って時の居たたまれない感じとかそんな感じ
「えっと…ヨルヨル?」
「ん?」
約1分程固まっていた棗さんと月姉さんだが、衝撃が解除されたのか不意に声を掛けてきた
けれど俺の予想とは違い、棗さんは何処か若干困惑したかの様な表情を浮かべてる
俺としては喜んでくれるか怒られるかのどちらかだと思っていただけに…正直、この困惑した表情は予想外だな
「確認なんだけど…これからは私と月ちゃんの事をしっかりと見るって事だよね?」
「うん…そうだよ。今までは見てなかったみたいな言い方になるけど…。ごめんなさい」
「あぁ、いやそれは良いんだよ。良くはないけど、先ずはそれは良いよ。それよりも…私たちがヨルヨルを男してでは無くてヨルヨルとして見て欲しいんだよね?」
「ん…そうだね。この世界でだと男は稀少だから…どうしてもそう言うフィルターが掛かってしまう事は理解してるよ。してるんだけど…やっぱり俺個人を見て欲しいなって…」
「「「「「はぁ~~~~…」」」」」
棗さんとあづみちゃん達は俺の回答が不満だったのだろうか?
さっきまでギスギスしていたにも拘わらず、同じタイミングで溜息を吐きだした
え?何?俺って何かそんな悪い事言った??
月姉さんは未だに固まってるし…え?え?え?
「どうするよ?ヨルヨルってば相当重症なんだけど?」
「僕もまさか夜くんがそんな風に思っているなんて予想だにしていませんでしたよ」
「私も…」
「わ、私も…」
「ちょっと精神構造おかしいのかしら?」
いや…俺の理解出来ない所でツーカーで話通すの止めてもらませんかねぇ?!
俺が重症だとか、精神構造おかしいとか…皆して酷くない?
地味にボディブローが効いて呼吸困難になるわ!!
「う~ん…どうする?このまま放置しても面白いかもしれないけど…私としてはさっさと解決したかも」
「そうですね。いつまでもそう思われるのは癪ですし」
棗さんの言葉に俺と月姉さん以外の全員が頷く
なんなん?俺ってやっぱり何処かおかしいんでしょうか?
「じゃあ…代表して私が言っちゃおっかな。ヨルヨル、今まで私がヨルヨルを男だからとして接していたと思ってるんだよね?」
「…うん」
「だよね。先ず言っておくけど…それ間違ってるから」
「………え?」
「私たちは男だからヨルヨルを好きになったんじゃないから。好きになったのは……ヨルヨルだから、なんだよ」
「………」
…え?…マジ?
ちょっと照れながらそう言う棗さんの表情に思わず胸がドキッと跳ねる
「で、でも…こ、この世界は男女比が1:10で…」
「そうだね、だから?」
「お、男が珍しくて…」
「そうだね、で?」
「だ、だから…お、男の俺に…こ、好意を…」
「そこが違うね。珍しい男だからって無条件で男を好きになる訳ないじゃん」
「そうだね。その理屈だと僕がどんな男に告白されたも付き合っちゃうという事になるよ」
「え…あ…」
「そうだよ。私たちはずっと昔からヨルヨルをヨルヨルとして見て、ヨルヨルに好意を感じてたんだよ」
……マジか
俺は…本当に彼女たちを異性という目で全く見てなかったんだな…
思わず自分に悪態をつきそうになる
「言っとくけど、私だって男に付き合えって言われた事くらいあるからね」
「私も」
「僕も」
「わ、わ…私も…」
「私もあるわ」
「未だに動き出さない月ちゃんだって、私が知る限り何回か言い寄られてる。だけど私達全員、他の男と付き合った事なんてない。理由は…言わなくたって当然わかるよね?」
「……うん」
「この世界は男女比1:10だよ。珍しいけれど男はある程度存在してる。…ヨルヨル、男であれば誰でも良い…そんな風に私達を見ないで、これからの私達をちゃんと見て欲しいな」
「……うん。……皆、本当に…御免なさい」
皆に心からの謝罪をすると同時に…自分自身に此処まで嫌悪感を感じるのは…前世を含めて2度目だった




