29:これまでとこれからと①(あづみ/蓮華 視点)
【蕗ノ薹 あづみ 視点】
~♪~~♪~~
「……ふふっ」
「ど、どうかした?」
「ん~ん、何もない♪」
私は今、夜人くんと一緒にキャンプファイヤーの中心部で踊っている
それが何とも夢見心地で思わず笑みが零れてしまっただけなのだ
保育園時代からずっと見続けていた男の子…
そんな男の子と強制ではない状態で一緒に踊ることが出来て…嬉しく無い訳ない
……そりゃ、婚約までいければ最上だったかもしれない
だけどその線はかなり薄いと思っていたし…なんだったら今回もはぐらかされるすると思ってた
だけど…今日の夜人くんは私たちの気持ちを真剣に受け止めてくれた
結果は保留かもしれないけれど、これまでとは手応えが全然違う
そう感じた瞬間、思わず頭に疑問が過ぎる
「夜人くん…何故今日は私達の気持ちに真剣に応えてくれたの?」
私は彼の顔を少し見上げながら、そんな質問を投げかけてみた
すると、彼は「え~っと…」と言葉を選ぶかの様に宙を見上げて思案していた
「そうだね…公理くんや零、剣真の後押しもあったんだけど…最後の決め手は剛山だろうな」
「剛山くん?」
合宿初日の日に夜人くんに対して暴言を吐いていたC組の男の子だ
夜人くんと彼の間で何かあったのだろうか…?
「そう…彼も変わろうとしてるんだ。だから俺も変わらなきゃな、って…そう思ったんだよね」
「そうなんだ…」
私の剛山くんに対する印象は決して良くない
けど…夜人くんが真剣に私たちの意見を受け止めてくれたキッカケになったのが彼と言うのならば…
ほんの少しだけは感謝しようかな?
【蛍ヶ丘 蓮華 視点】
~♪~~♪~~
「どうしたんだい、夜人くん。もう疲れたのかな?」
「いやいや…キャンプファイヤーのダンスって、そんなにキレッキレで踊るもんじゃないよね?!」
「そんな事はないよ。盛り上がる曲はこんな風に踊った方が良いのさ♪」
「えぇ~…ソロなら兎も角、2人で踊るのにそんなにキレッキレなの…?」
夜人くんは頭に疑問符を浮かべながらも、私のダンスについてくる
まぁ、確かにこのダンスはそんなにアクティブに動くものじゃないけれど、許してほしい
何せ僕のテンションはこれ以上に無い程に跳ね上がっているのだ!!
ダンスで発散でもしなければ、僕は興奮しすぎて今晩は寝ることが出来ないだろうからね!!
それにしても…あぁ!!
今後の学校生活がこれほど楽しみになるとは、本当に予想外だっ!!
これからの僕のアプローチを夜人くんはしっかりと見てくれる!!
という事はこれまでの努力が無駄じゃなかったという事だ!!
正直な所、僕はこれまでの努力を努力だとは考えていない
彼と共に過ごす時間に対して、こうしなきゃっていう感情もなかった
彼と共に過ごす時間が心地よくて…もっと共に過ごしたいと思っていただけなのだから…
「あっ、ちょ!蓮華ちゃん?!!」
「ほらほらほら、頑張れ頑張れ!!」
この底抜けのテンションを悟られない様に私のダンスはさらにスピード感を増していった
あぁ…これからが本当に楽しみだ!!!




