28:人が人に行う宣言は覚悟と責任と勢いが大事なのだ!!
「スゥーー…」
俺は彼女たちにそう告げた後、無意識に深呼吸をしていた
自分の心臓がドクドクと激しく脈打っている事を自覚する
今から俺が彼女たちに言う言葉は…ある意味では最低なのだから
そんな最低な言葉を発しなければならない、発しなければならない状況を創り上げた自分に嫌気がさす
「さっきも言ったけれど、俺を誘ってくれて本当に有難う」
「「「「…………」」」」
「その上でだけど…ごめん、俺は皆と軽々しく踊る事は出来ない」
「「「「っ?!!!!」」」」
ハッキリと彼女たちにそう伝えて俺は頭を再度下げる
頭を下げた俺には…彼女たちの表情を窺がい見る事は叶わないが…
決して笑顔を浮かべている訳では無いだろう事は流石に理解出来る
「軽々しくという事は…そうでなければ問題ないという事よね」
「うん、そうだよ」
予想通り、沙月ちゃんが俺の言葉を反芻して質問してくる
彼女は頭が良く、冷静で、現状把握する能力に秀でている
だからこそ質問してくるのは彼女だと思った
「だからこそ、俺の今の気持ちを皆に正直に話そうと思う。俺の気持ちを話した上で友達のままで良いやって思いなおせるかもしれないからね」
「「「「………」」」」
俺の言葉に誰も反応しない
多分、俺が何を言うつもりなのかを真剣に聞いてくれているんだろう
「あづみちゃん、蓮華ちゃん、雪ちゃん、沙月ちゃん。正直に言うと皆が俺に好意を持ってくれているのは結構前から分かっていたよ。……自意識過剰じゃなければだけど、ね」
「「「「え?」」」」
俺の言葉に彼女たちは思わずと言った具合に声が漏れ出た
……えっ?!!!
何?!!その「え?」ってどういう意味?!!!
『別に好意なんて持ってないけど?自意識過剰じゃない?』の「え?」なのっ?!!!!
何なの?!!
これ罰ゲームなの?!!!
男女比が狂ってる世界でも俺ってこんな扱いなのっ?!!!
聞くのが怖い…メッチャ怖い……
でも聞かないと話が進まない…
「えっ…と…お、俺ってじ、自意識過剰でしたかね?」
俺がそう質問すると4人が揃ってブルブルと首を横に振る
良かった…自意識過剰ではなかったみたいです…
「そ、その…夜人くんって私たちの好意に気づいてないのかな~?って思ったりしてたから…」
「だ、だよね…。月さんが殆ど傍にいたから余りアプローチできなかったし」
「わ、私はそ、その…ほ、殆ど…で、出来なかったから…」
「私は天然の人誑しだと思っていたわ。……釣った魚に餌をあげないタイプの」
沙月ちゃんの俺に対する評価が何気に酷いな!!!
コホン…それはそれとして、話を進めよう
「皆からの好意にをはぐらかしたり、気づかない振りをしていた事は本当に申し訳ない。本当に…ごめんなさい」
そう言って再度、俺は彼女たちに頭を下げる
「夜人くんが僕たちの好意に気づいていた事は意外だけど…嬉しくもあるよ。だったら君は何故そんな事をしたんだい?」
「………正直に言うと、皆の事を恋愛対象として見ていなかった。」
「「「「…………」」」」
「俺からすると皆は…仲の良い友達で…妹みたいな…そんな感じの目で見ていたんだ。だから…皆と結婚したいとか…付き合いたいとか…そんな感情で見た事が無かったんだ」
流石に「前世の倫理観で…」とか「精神年齢四十路なので」等と言う訳にはいかない
そこらはボヤかしながら、俺の正直な気持ちをつたえるしかないのだ
「それって…これからも…私たちの事を…す、好きにならないってこ、事かな…?」
雪ちゃんの質問に俺は首を横に振る
俺は俺の心と折り合いをつけて、今世の世界を前向きに生きていくと決めたのだ
その為に彼女たちにはしっかりと宣言をしなければならない
「俺はこれからは皆の事を1人の女の子として見る様にするよ。これは俺の決意表明であり、俺の身勝手な宣言だと言うことも理解はしている。でも…今直ぐ完全に気持ちが切り替わる訳じゃない。だから…そんな優柔不断な、皆の気持ちに寄り添えなかった俺でも良ければ……一緒に踊ってください」
俺の所為一杯の宣言は前後の文脈がしっかりと繋がっていない様な…なんともしまりのない言葉になってしまった




