26:BBQって本番の方が楽しい稀有な例だよね?
「夜くん、こっちのお肉焼けたよ!!食べて食べて!!」
「夜人くんお肉ばかりじゃダメだよ!はいカボチャ!!」
「2人ともお皿に入れ過ぎよ…。はい夜人くん、お茶を飲んでおきなさい」
「ふぁ、ふぁい…」
モグモグゴクン…
オリエンテーションの結果発表も無事に終わり、暫し休憩した後に夕食の準備に取り掛かった
キャンプ(?)っぽく、今日の晩御飯はBBQだ
まぁ、基本的には食材を切るだけだから準備自体は非常に簡単だ
今回も飯盒チェックは俺の役目だが、それ以外に食材とかも切ったりした
うん…1人で火を眺めるのも良いけど、こうやってワイワイしながら準備するのも楽しかったりする
ただ…蓮華ちゃんやあづみちゃんや沙月ちゃんが、ドンドンと食材を俺の皿に入れて来る為に箸休めをする暇がない
BBQでわんこそば状態って…これ無理筋じゃない???
「あ、あの…3人とも?そ、そのペースは夜人くんむ、無理じゃないかなぁ~?」
「そ、そうですね。私もそれはちょっとやり過ぎじゃないかなぁ~と思います」
俺のフンガフッフッ状態を見かねた花咲さんと箔ノ島さんが助け舟をだしてくれる
でもさぁ…何でそんなに遠慮がちなんだい?
遠慮なくぶっこんでいっちゃってください!!
…そんな俺の思いを知ってか知らずか…3人は花咲さん達の方へ一斉に振り返る
「「ひぃっっ!!!」」
その瞬間、花咲さん達は何かに怯えるかの様に悲鳴をあげた
え…なに?
3人がすっごい怖い表情でも浮かべてるの??
こっちからは死角になって見えないんだけど??
「花咲さんと箔ノ島さん。甘い…それは甘すぎるわ」
「そうだね…。残念ながら君たちは今が千載一遇のチャンスである事を失念していると言わざるを得ないよ」
「そうね。今なのよ…今この場に居る事が出来る幸運を自覚し、行動しなければチャンスは来ないのよ」
?????
彼女たちは一体何を言ってるのだろうか…?
「野外学校は明日で御終い。明日以降は普通の学校生活に戻る」
「それじゃあ、無理なんだよ。あの絶対要塞を崩す事は現実には不可能に近い」
「幸い今は…手薄。それにこの非日常空間に於いて印象付ける機会は早々に巡ってこないの」
「「ひ、ひぃぃぃぃぃ~」」
あづみちゃん達の言葉を聞いて、2人は抱き合いながら悲鳴を上げるのを見て俺は納得した
彼女たちからすれば、月姉さんが居ないこの時間がボーナスタイムなのだ
更にキャンプファイヤーという、絶好の機会が待っている以上、自分をアピールするという機会は今以上には有り得ないのだろう
普段の学校生活では、登下校や昼食時には絶対要塞(月姉さん)が俺の傍に居る
だからこそ、今以上のチャンスは中々に巡り合う機会がないという事を言いたいのだ
(詰まりは…あづみちゃん達は絶対に俺をダンスに誘うんだろうなぁ…)
問題は…好意を寄せられている俺自身の心持ち次第
昔と比べて彼女達も大人っぽくなったとは言え…俺は恋愛感情を未だに抱くことが出来ていない
周囲からすれば、好意に気づきながらも拒みもせず受け入れもしないクズ野郎かもしれない
だけど…そんな対外的な理由で彼女たちの好意を受け入れても良いのだろうか?
「う~ん……モグモグモグ……。……ん?」
「…………」
考え事をしている俺の口に、無理矢理に肉が突っ込まれる
突っ込まれた方向に視線を向けると…顔を真っ赤にした雪ちゃんがいた
「あ」
そして俺の言葉を聞く前に、ピューっと何処かへ逃げて行ってしまった
「あぁ…くそ。これは…どうするべきかなぁ~…」
俺は班員女子がワイワイと何かを言っている声を尻目に、無駄に瞬いている夜空へ視線をむけてぼやいてしまった…




