24:時間かかってすいません。マジで繁忙期なんです…
「しくしくしく……」
「…………」
俺は今、花咲さんのウソ泣きをボケ~っと眺めている
いや、眺めているというよりは現実逃避をしているという方が正しいな
「夜くん聞いてるのかな?」
「はい聞いてます!!!」
蓮華ちゃんの問いかけで脊髄反射の如く、自分でもビックリする位良い返事ができた
この波能速度と声量での返答はブラック企業の管理職も満足する事間違いなしだぜ!
「……じゃあ、今僕が言った事を復唱してくれるかな?」
だが蓮華ちゃんには逆に不評だった様だ…
返事が良すぎて逆に怪しまれたって事か…?
蓮華ちゃん、恐ろしい子!!
「夜くんほら、リピートアフタミー」
「……すいません、聞いていませんでした」
俺は素直にそう謝罪するが…そう答えた瞬間、花咲さんを除く全員から圧が激しくなった
いや…特にあづみちゃんと蓮華ちゃんかな…
これは戦闘力530,000と言われても信じてしまいそうだぞ…
「ふ~ん…夜人くんは私たちの言葉を聞かずにそこでウソ泣きしている花見ちゃんの事が気になるんだ?」
「いや、そうではないんですが…ウソ泣きとは言え、泣いている子が傍に居たら気になると言うか…」
「あの子、口元ニヤニヤしてるわよ」
「………」
裏切ったな、ブルータス!!!!
いや、裏切りも何も無いんだけどね…針の筵ってこう言う事を言うんだろうなぁ…とまた遠い目をしてしまう
「いや…うん、ゴメンね…。確かにちゃんと聞いてなかったよ。良かったらもう一度教えてくれないかな?」
「えぇ、勿論良いわよ。蓮華ちゃんは貴方に賠償を請求すると言ったのよ」
「……えぇぇぇぇ~」
賠償?
セクハラしたから?
いやでも…被害者である筈の花咲さんは口元ニヤニヤしてるんだよね?
「…ハッ!!こ、これが美人局?!!!」
中学生ながら何て恐ろしい罠を仕掛けて来るんだ…
あんな…あんな快活妹系の花咲さんをチョイスして美人局してくるなんて、極悪にもほどがある!!
「皆…見損なったよ。美人局なんてそんな…いつから皆はそんな風に変わっちゃったんだ?!!」
「え、え~と…夜人くん?盛り上がっている所悪いんだけど…美人局って、何?」
思わずそう言った俺に対し、あづみちゃんは戸惑った様な雰囲気で疑問を投げかけて来る
「あっ!」
まぁそうだよね…勿論知ってたよ?
美人局って言うのは前世の世界での筒が語源であって、この世界では違うだろうって、さ
筒じゃないのなら…何だろう?棒?竿?刀?
まぁ、また調べておこう…
「そ、それは兎も角…ば、賠償って…い、一体何を要求するつもりなのかな?」
箔ノ島さんは知らないけど、彼女たちは基本的に名家の生まれだ
今更金銭やなんだとは言わないだろうし、そこは信頼感があるから心配してない
そう思いながら尋ねると「ふっふっふっふっ」とでも言いそうな表情を浮かべる
「そうね…だったら私達1人ずつ30秒の間、頭を撫でるのを請求するわ」
あづみちゃんがそう言った瞬間、蓮華ちゃん、沙月ちゃん、箔ノ島さんが綺麗に列を作る
あ…花咲さんも並ぼうとしたけど追い出されてる…
「優しく、愛しむ様にたっぷり30秒間よ。これで今回の事は無しにします!!」
「……はい」
理不尽だと声を出せなくも無いが…別に許容範囲の請求なので、俺は甘んじて受け入れる事にした
あ、因みにこの世界では坊人局らしいです…




