17:(閑話)テントの中での女子会(あづみ視点)
「今頃男子は何してるのかなぁ?」
「そりゃあ~皆で雑談でもしてるんじゃないかな?」
「う~…混ざりたい~!!!」
「停学になる覚悟があるならね」
私達、1班(通称:夜班)は班員全員でテントに籠りながら雑談をしていた
まぁ、所謂恋バナという類のモノだ
夜班は私、蓮華ちゃん、沙月ちゃん、箔ノ島 小鳥さん、花咲 花見さんと夜人くんの6人だ
「それにしても夜班に入れてラッキーだったよね~!」
「そうね。まさか夜班の希望者があんなにいたなんてね…」
「まぁ夜くんなら当然かもしれないけどね」
男子には内緒だが、班を決める際には自分が1番気になっている人の班に入るのが通例だ
私は勿論、蓮華ちゃんや沙月ちゃんは真っ先に夜班を希望したが…夜班の希望者が私達を含めて15人!!
A組女子の半分以上は夜人が気になっていると宣言したのだ
入学して10日足らずでこの人数は驚異的だと思うしかない…
例年、数人超えてしまう事は流石にあるらしいけど…ここまで偏る事は少ないとの事だ
その理由としては皆、まだ第一印象程度でしか男子を知らない
A組に入れる男子はどの男子も優秀と言えるので、先ずは仲良くなれそうな男子を希望するパターンが多い
入学して初めての一大イベント、可能性の無さそうな男子を狙うよりも先ずは仲良くなる事を優先する事は間違っていないだろう
「でもA組男子は皆良い人そうだから、それなりに皆楽しくやってるんじゃないかしら?」
「そうねぇ…クジで夜班から落ちた子が創班で楽しそうにしてたしね」
「これで夜人くんを狙う子が減ってくれれば良いんだけど…」
私は思わずそう口に出してしまった
ハッとして慌てて自分の口を抑えるけど…もう遅い
眼前にはニヤニヤとした表情を浮かべる3人と、興味深そうに私を見る沙月ちゃんが映る
「おやおや~?あづみ、そんなに聞いて欲しいのなら早く言ってくれればいいのに」
「だねだね~!!確かに蕗ノ薹さんはクジに勝った時もガッツポーズしてたもんねぇ~」
「じゃあ早速、蕗ノ薹さんは八剱くんの何処が好きなのですか?」
「……(チラチラ)」
…くっ!!
まさか私が恋バナの一番槍を務める事になってしまうとはっ!!
けれど、今のは完全に私の失言だ
観念し、夜人くんの事を語るにしよう…どうせ遅かれ早かれ言わされる事は決まってるのだ…
「夜人くんはね…本当に凄いの」
「凄い?まぁ確かに聖明の首席を取るくらいなんだから頭は良いよね」
「ううん。頭が良いのもそうなんだけど…彼はね、意志を貫こうとする姿勢が凄いの」
「えぇっと…我儘ってことかな?そんな感じはしないけど…」
その言葉を聞いて、少しだけ苦笑してしまう
確かに箔ノ島さんの言う事も一理あると言えばあるのだ
「確かに夜人くんは我儘かもね。自分が正しいと思った事には妥協しないで最善を模索し続けるもの」
「そうだね。僕も最初は容姿だけで恋した気がするけれど…今はもう、彼のそんな姿勢も含めて愛していると言えるよ」
「そうね…彼の我儘は自分の為じゃない。誰かの為に、誰かを救う為の我儘だから」
「え…?どゆことどゆこと?」
私の言葉に蓮華ちゃんと沙月ちゃんが同意し、花咲さんが食いついてくる
まぁ、彼をちゃんと知らない彼女からすれば、意味が分からないのは当然だろう
「そうね…彼が優しい事は何となく理解出来ていると思う。だけど、優しいだけじゃ守れない事ってあるのよ」
「あづみ、その説明は分からないよ。そうだね…小学校の時、ある子が苛められてたんだ。優しい彼は当然にその苛めを止めたんだけど…加害者は所謂上流家庭の子だったんだよ」
「「へぇ~…」」
蓮華ちゃんが、誰かを特定できない様にぼやかしながら説明してくれる
それを聞いて2人は興味深そうに耳を傾ける
「しかも被害者の親も黙認していてね、その子は本当に辛そうだった。もし自分が夜人くんだったら…多分、何も出来ないでしょう?だって自分は小学生で被害者の親までも黙認しているんだ。傍で慰めたりする事は出来ても根本的な解決に至らせる事は出来ないと思うでしょ?」
ーーーコクコクーーー
そうね…あの時は本当にビックリした
でも…今思いだせば、あの時以上にビックリしてしまう
名家の血が流れているとは言え、一小学生が四大名家を動かしてしまったのだ
私が今なら出来るか?と聞かれれば…残念ながら絶対に出来ないだろう
そんな事を思いながら蓮華ちゃんの話に相槌を打っていた




