16:思春期にありがちな思い込み
「剛山さぁ、何て言ったら良いのか分からないけど…取り敢えずお前は間違ってるよ」
俺は呆れ半分、同情半分の心の内を反映させるかの様な声色で剛山に告げる
それを聞いた本人としては、認めたくないのだろうか?俺の言葉を聞いてキッと睨みつけて来た
いや…睨んでも事実は変わらないって
「貴様に何かが分かるっ?!俺は源に相応しくなる様に必死に取り組んできた!!それでも…それでも…」
「いや、先ずそのからだけどさ…お前はしずかちゃんの為に頑張ってないじゃん」
「何を言っているっ!相応しくなる為「それってお前の都合じゃないか」っ?!!!」
俺の一言が予想外だったのだろうか?絶句したかの様な表情を浮かべて反論できなくなっている
まぁ、この際だから年長者の余裕として伝えるべき所は伝えるか…
それを活かすかどうかまでは面倒見切れないけどね
「そもそもだけどさ。お前としずかちゃんは毎日の様に遊んでいたんだろ?」
「……そうだ」
「その時もお前はずっと今の様な態度を取ってたのか?」
「……いや。小さい時の俺様には親としずかしか居なかったから、そんな事は無かった」
「だよな?お前がしずかちゃんや周りに高圧絵的な態度を取り出したのって小学校くらいからだろ?」
「…………」
「良くあるらしいけどな。小学校に入学して沢山の女子と自分以外の男子が居る環境でどう接したら良いか分からないって奴」
「…………」
「そう言う奴ってさ…急に沢山の女子を見て恐怖を感じたり、他の男子が女子に接する態度を見てそれが正しいと誤認して同じ様に接するんだってな。お前もそうだろ?」
「…………」
「しずかちゃんからすれば毎日遊んでいた仲の良いお前が急に高圧的に接してきたらどう思うと思う?」
「………嫌だと、思う」
「だろ?それでもしずかちゃんは約4年間、辛抱強くお前に接してくれたんだろ?そんな彼女に対してお前は?周りの男子がやっている事が正しいと思って彼女にどの様に接してきた?」
「…………」
「数年間、彼女は我慢していたにも拘わらず、お前は一切変わる…いや、この場合は戻るか?要は態度が変化する事は無かった訳だ」
「…………」
「だから遂に彼女はお前に言ったんだ。この世界じゃ、女性が男性にそんな事を言うのはよっぽど勇気が必要だったと思う。なのにお前ときたら反省する訳でもなく、彼女の言葉をそのまま受け止めて中学校にまで追っかけてきたって訳だ」
「俺、様は…俺様は…どうすれば…」
ハァと深い溜息が思わず零れる
一般の男性ってどうすれば良いのかも自分で思いつかないのかね?
コイツがC組とは言え、聖明に入学できるって…他の男性が怖いんですけど?!
「まずは謝れ。心の底から今までの振る舞いだったり、自分勝手な思い込みだったりな。そこからは…しずかちゃん次第だ。それでも彼女がお前を敬遠したがるのならば素直に従え。許して貰えたのなら…今度こそ間違えない様に行動しろ。今お前が彼女に出来る事はそれ位しかない」
こんな事を剛山にわざわざ言ってやる義理は無いけれど…勝手に暴走してまた迷惑かけられるのも困るしな…
「後は自分で考えろ」とだけ言って俺は剛山に背を向けてロッジへ戻ろうとした
が…ふと頭に浮かんだことを剛山に告げるべく、俺は奴に再度声を掛けた
「剛山~…俺、お前の事をこれからジャイアムって呼ぶからな」
「ジャ、ジャイアム?」
「そう、ジャイアム。という事でジャイアム、しずかちゃんにちゃんと謝れよ」
俺はジャイアムにそう告げて今度こそロッジへ戻っていくのだった




