14:男×男(卑猥な意味ではありません)
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…なぁ、もう良いだろ?こんな所まで連れ出してきて何の用だ?」
剛山にロッジから連れ出され、俺は人気のない林でコイツと対峙している様な感じだ
ていうか、一体何の用だよ?
連れ出したかと思えば、ず~~っと黙ったままだしさぁ…
正直俺は剛山に好感を抱いていない為にこの時間自体が苦痛だったりする
「…………」
「いや、何も言わないならもう良いや。俺ロッジに戻るから」
そう言って剛山に背を向けてロッジへ戻っていく
大体、人を呼び出して置いて黙っているままというのが失礼極まりない
取り巻きを連れてこなかった事を評価して大人しく付いてきたけど…失敗だったかな
「お前っ!!!源の事はどう思ってるんだ?!!!」
「……源?あぁしずかちゃんか」
「しずかちゃんっ?!!!き、きききき貴様っ!!!既にそういう関係なのか?!!!」
剛山は俺がしずかちゃん呼にすると唐突に怒り出した
いやだって、お前ら完全にドラえも〇ファミリーじゃん!!
ジャ〇アンから源呼びされたら思わず言っても仕方なくね?!
「いや、そう言うわ「貴様に源は渡さーーーーん!!」うぉっと!!」
俺の弁明を聞く事も無く、剛山は俺に殴りかかってきた
だが残念ながら…この世界の男は基本的に俺みたいに身体を鍛えたりする奴は少ない
剛山も多分に漏れず、殴りかかっては来たものの容易に回避できるスピードだった
「生意気にも避けやがって…生意気だぞ!!」
「いやいや、生意気も何も殴りかかられたら避けるでしょ?」
「五月蠅いっ!!!」
そう叫びながら、尚も俺に殴りかかって来る
身体は大きいから当たったら痛いのかもしれないが…残念ながらこれ位なら当たる事は無い
パンチは大振りだし単調、スタミナが無いのか徐々にスピードも遅くなっている
こんな相手なら合気で簡単に転がせることが出来るレベルだ
「ハァハァ…みな、もとは…き、貴様なんかに…わ、渡さないぞ…ハァハァ…」
「いや、渡すも渡さないも…今日初めて会ったんだけど?」
「は、初めてあ、あったから…ハァハァ…付き合ってい、いない理由には…ハァハァ…な、ならないだろうが…」
「まぁそうかもしれないけど…。俺自身は特に思う所は無いよ」
「そ、そんな…わ、訳…ない、だろうが…」
「いやいや、これ本当だけど」
「だ、だったら…ハァハァ…な、何故、し、ししずかちゃんハァハァ…しずかちゃん呼びなんだ!!」
「いやそれは…ちょっとした深い理由があってだね」
流石に前世のアニメですとは言えず…何と言うべきかと押し黙ってしまう
だがそれが剛山にとっては俺が言い訳を考えている様に見えたのだろう
更に激高しながら拳を振り上げてくる
「ほら見ろ!!き、貴様の言う様に…ハァハァ…な、何の興味もない…しょ、初対面の女に…し、しずかちゃんなんてよ、呼ぶものか!!!」
「いやそれはつい言ってしまっただけだ。今のところ他意はない」
そこだけはハッキリしておかないとと思い、剛山にそう告げる
だが意外にも…剛山は安心したり喜んだりする様な表情を浮かべなかった
どちらかと言えば、悔しい様な…苦しい様な表情を浮かべ、尚も俺に殴りかかって来る
「くっ!!ど、どうして…どうして…ハァハァ…どうして!!!貴様がA組の…しゅ、主席なんだ!!!」
「いやどうしてって言われても…」
マジで困る
俺だって自分がA組主席に相応しいとは全く思っていない
俺的A組主席は公理くんか剣真だったりする
そんな事を考えていると剛山の動きが止まり、膝を曲げて息を整えだす
「お、俺様だって…ハァハァ…お、俺様が…A組に…A組になれない事は分かっているんだよ!!」
「……」
「俺様は…お前ほどよ、容姿はと、整ってない!!!運動も出来ないし頭も良くない!!!俺様はA組に…ふ、相応しくない!!!そ、そんな事くらいは…お、俺様にだって分かってる!!!……分かって…る…んだ…よぉ~~…」
剛山は叫びながらも声は震え…泣いている様だった…




