7:今はもう、失われた青春よ…
「じゃあこのまま支えておくから杭を打ってくれる?」
「「「「は~い♥」」」」
「お前たち!!他の班に負けず、1番にテントを完成させるぞ!!」
「「「「頑張りま~す♥」」」」
「早くに完成しても倒壊しては意味が無い。地形を省みると…これ位の角度かな?」
「「「「了解で~す♥」」」」
「ほなこのまんまお互いに引っ張るんやで!綱引きちゃう!綱引きちゃうからな!!」
「「「「は~い♥」」」」
「……がんば」
「「「「頑張りま~す♥」」」」
……お分かりだろうか?
俺達A組男子が各班のテント貼りを手伝っているのである
俺達がテント設営に取り組んでいる女子たちの元へ赴いた所、そりゃザワザワとした反響は凄まじかった
A組女子は勿論、他のクラスの女子たちもテント設営を中断して俺達をガン見してたもんな…
その上であづみちゃん達に手伝う旨を伝えると大層喜ばれ、各班に男子1人ずつが手伝うという事になった訳だ
女子のテントは6人用の大きめのテントとなり、それを5人で宿泊するらしい
テントと言われて想像する三角形のモノとは違い、四角形型になっている
そう考えたら5人でも作れなくはないが6人で作った方が効率的だろう
……創くんは寝そべりながら応援しているだけだけど
「八剱くん、これくらい打ち込めばいいかしら?」
「ん…あぁ多分問題ないよ。後の仕上げは俺が打ち込むね」
「あ、ありがと…」
「「「「(ヤバッ!何あの神対応!!)」」」」
何を言っているかは知らないけど、班員の子たちも喜んでくれているみたいで何よりだ
入学して半月程度、まだまだクラスの皆と仲良くなったとは言い難いからね
こうやってクラスの皆と仲良くなったり結束力が強くなるのは良い事だ
これを機にあづみちゃん達以外のクラスメイトとも仲良くなれたら嬉しいなぁ等と思いながらトンテンカントンテンカンと杭を打ち込んでいった
◆
「ふぅ…」
何とか無事にテントを張り終えた俺は達成感と心地いい疲労を味わっていた
因みにテント設営作業を手伝ったのは、A組女子のテントだけではない
A組女子のテント作業が終了した所で零が「雪の班のテント設営を手伝ってくれ」と救急要請を受けたのだ
それに伴って零と共に雪ちゃんの班のテント設営を手伝っていた所、他クラスの女子が羨ましそうにこちらを見ていた為…俺の罪悪感が加速し、A組男子全員に頭を下げて希望の人たちの所へ各々出向き設営を手伝ったのだ
……既にテントが完成していた班が解体しようとしていたのは流石に止めたが
まぁ、何かともあれ夕食に取り掛かる時間までに学年全部のテントが完成したというのは良い事だろう
「夜人くん、お疲れ様」
「公理くんもお疲れ様。無茶なお願いをしてゴメンね」
「まぁ中々無い事やけどな。せやけどワイも楽しかったら問題ないやろ」
「元はと言えば雪の班のテントを作ったからだからな。ジケンジャーも『事件は事務所で起きてるんじゃない、現場で起きているんだ!』と言っていたしな!」
「…がんばった」
「創は寝転がって応援しとっただけやろ?!!」
ーーーーハッハッハッーーーー
あぁ…なにか凄く青春してるっぽい…
俺は皆のやり取りを聞きながら、やっぱりこの野外学校に参加して良かったなぁ~と充足感を感じていた
それにしても…B組男子もC組男子も様子見すら来なかったなぁ…等と考えていた所、
「何だと?!!!!貴様もう一度言ってみろ!!!!!」
やたらと大きな声が響き渡ったので、そちらに視線を向けると…
3人の女子生徒が剛山たちと言い合いをしていたのだった




