43:女は度胸、男は愛嬌???
「ヨルヨルはよ~!!」
「む」
翌朝、月姉さんと共に学校へ登校すると、棗さんが俺達を視認するや否や駆け寄ってきた
彼女の表情を見るとかなりスッキリとした表情を浮かべているのが分かる
取り敢えずはもう安心かな?
問題は…姉さんが棗さんをあからさまに警戒して俺に抱き着いてくる事くらいだな
まぁもう1個あるっちゃああるけど…
「棗さんお早う」
「夜人くんに何の用ですか?」
「まぁまぁ月ちゃん、そんなに警戒しなくても良いじゃん」
「貴女は厨二女狐先輩ですからね…警戒するに越したことはありません」
そう言ってズイと俺に身を寄せる姉さん
ちょ、ちょっと!!朝から修羅場的な事を学校前でする事は無いんじゃないかな?!
「(見てっ!!聖王様と月姫様が身を寄せてるわ!!)」
「(も、もしかしてイケガキ先輩と対峙してる?!!も、妄想が捗る~!!)」
「(お姫様とお姫様が王子様を取り合ってる構図?!そんなの童話でしか見た事無い!!)」
ほら~!!
通学している学生たちからすれば…絶好のゴシップネタを提供している様なもんじゃん!!
皆こっちをチラチラ見て何かヒソヒソと話してるんですけどっ?!!
「まぁまぁ、私の話はすぐ終わるからさっ!!……ヨルヨル、昨日はありがとね!!」
「いや別に…特に何かできた訳じゃないけど」
「ううん!あれからお母さんと話をしてね、確定はしてないけど取り敢えずどうして行くかは話合えたよ!!これもヨルヨルの御蔭…ほんと、ありがと!!」
「まぁ…役に立ったなら良かったよ」
夏位までにはある程度進路先を考えないとダメだろうけど、前向きに考えることが出来たのなら…まぁ大丈夫だろう
「でね…昨日の結婚を前提にって話なんだけどさ…」
「「「「「(?!!!!)」」」」」
さっきまで懸念していた問題点を棗さん自体が投下してきた!!!
こんな公衆面前で話し合う様な話題じゃねぇ~!!!
「あれだけどさ、返事はまだしなくても良いから」
「へ?」
棗さんのこの言葉には正直意外に感じた
女性からすれば男性の返事は死活問題になるだろう
だからこそ早ければ早いに越した事は無い筈なのだが…
どうやら俺は難しい表情をしていたのだろう…
棗さんは俺の表情を見て考えている事が理解出来たみたいで「クスッ」と笑う
「だってヨルヨルって私だけじゃなくて誰に対しても恋愛感情を持ってないでしょ?ううん、持たない様にしてるのかな?」
「っ?!!」
「だったら今、無理やり返事を求めるよりはじっくり待った方が良いに決まってるっしょ?」
……驚いた
棗さんが俺の深層心理を読み取る様に断言したその言葉はかなり核心をついている
確かに俺は保育園時代からそんな感じで接していたにせよ…そこに気づく彼女は観察眼に優れているんだろうなと心の中で思わず驚嘆してしまった
「それに」
「なっ?!!」
棗さんはそう言葉を続けると同時に、一気に距離を詰めて来て…俺を軽くハグしてきた
そして俺の耳元でこそっと言葉を発し、1人でダッシュして校内に入っていった
「…………」
「ねぇ夜人くん!!あの厨二女狐は何て言ったの?!ねぇ何て言ったの?!!!」
「…………」
『私はヨルヨル以外の男を狙うつもりはないから時間が掛かっても良いんだよ』
彼女は俺にそう言ったのだ




