39:摺り合わせって大事だよ
「という訳で厨二女狐先輩に発破をかけておいたわ」
なでなでなで
「そうなんだ…。姉さん有難ね」
なでなでなで
「夜人くんの為だからそれは良いわ。でも…後は厨二女狐先輩しだいね」
なでなでなで
「そうだねぇ…師範は別に継いでほしいという気持ちは余りなさそうだから…棗さん次第かなぁ」
なでなでなで
「1人で悩んで癇癪起こして夜人くんを傷つけて…本当にどうしようもないわね」
なでなでなで
「それは俺が踏み込み過ぎた気もするし気にしてないよ。それよりも姉さん…」
なでなでなで
「まぁどちらにせよ私たちが出来る事なんてもう無いわ。後は厨二女狐先輩が勇気をだして葵さんに相談出来るかどうかにかかってるんじゃない?」
なでなでなで
「まぁそうかもしれないね。ところで姉さん?」
なでなでなで
「月、禿げるわよ?」
ガバッ!!
例によって母さんの一言で姉さんは頭を上げる
まぁこのやり取りも予定調和だったりもするので何も気にならない
「確かに月の言う通り、これ以上は貴方たちが踏み込んで良い領域では無いわ。棗ちゃん自身がどうかする事だし、葵さん自身が気づくべき事よ」
「だよね…」
「ただし」
母さんの言う通りなんだろうなぁ…と思っていると母さんが言葉を付け加えるかの様に会話を続ける
「夜人きゅんが棗ちゃんの人生の幾らかに責任も持つつもりなのであればその限りでは無いわ」
「「!!!!!」」
「彼女の人生がどういう形になろうとも、そこに寄り添って生きていく…そんな覚悟でもって介入するのであれば夜人きゅんが介入する余地はあるわよ。逆にその覚悟が無いのであればこれ以上の介入は止めておきなさい」
「夜人くんにはまだ早い!!!」
「……」
母さんの言葉に対して考えてみる
確かにこれ以上に俺が介入するとなると友人関係を踏み越えた領域になるだろう
それは俺の前世と照らし合わせても相違は無い
前世も今世も結局の所、どこかで自分自身に対し決断をしなければならないのだろう
とは言うものの、葵さんの考えを棗さんにそれとなく伝えておきたい気もするのだが…それも領域を超えたアドバイスになるのだろうか?
う~~む…
「どうしたの夜人きゅん?棗ちゃんを恋愛対象として見ているのかしら?」
いかんいかん
どうやら恋愛感情を持っているのかという質問に対して悩んでいると思われていたらしい
「……正直、今は恋愛感情としてはもってないかな?気のいい友人というか…そんな感じ?」
確かに棗ちゃんは美人さんだと思う
それに客観視してもスタイルも整っているし、性格だって能天気っぽくあるが一緒に居て楽しい
(でもなぁ~…中3なんだよなぁ~…)
いや俺も身体的な事で言えば中1だからおかしくない事は理解してるよ?
だけどさぁ…一般的な常識のある人間からすれば前世の記憶があるのならばそこに引っ張られるのは仕方ないと思う
「だよねだよね!!!」
俺の回答に月姉さんは分かりやすく喜び、母さんは若干複雑そうな表情を受かべる
「まぁ、将来的には複数人の奥さんを持つ事は理解しているけど、今のところはそんな余裕もないかな?ほら、中学校も始まったばかりだしね」
「だよねだよね!!!」
「そうね…でも夜人きゅん。夜人きゅんはそろそろ色々と自覚しなければならないと思うわ」
「??」
「まぁ、その話は追々することにしましょう。あと月、貴女はあとで淑女道の勉強よ」
俺の疑問は姉さんの絶望を浮かべる表情で答えを得る事は出来なくなった




