28:親と子って難しいよね
「ハハハ…ヨルヨルは凄いなぁ…」
「……」
「ちな、どうしてわかったの?」
「昨日に棗さんが『将来道場継ぐんだから今の内に好きな事やっとく』的な事を言ったからです」
「それだけ?」
「はい。ただその時の表情が何と言うか…寂しそうというか、カラ元気というか…そんな印象を受けたんですよね」
「へ~~…やっぱヨルヨルは凄いね」
そう言った棗さんは両手を挙げて降参というポーズをとる
だけどそのポーズに関しても嘘くさいというか…やっぱりカラ元気の様に俺には映る
「でもさぁ、私達みたいな年頃なんて将来の事とか進路の事なんて誰だって悩むもんでしょ?私も例に漏れずそうだって言うだけだよ。ヨルヨルが気にする事なんてないない!!」
「まぁ、そうかもしれませんけどね」
実際俺だって前世では進路で悩んだりもしたしな
学力通りの地本の高校に行くか、挑戦という意味で他府県の進学校に行くか1人で悩んだりもしたし
「そうそう!だからヨルヨルの気持ちは嬉しいんだけどさ、もうちょっと自分で悩ませてよ」
「…………」
まぁ、そう言われてしまえばそうなのかもな…
確かに要らんお節介だと言われればその通りだし
でもなぁ…何か引っかかるんだよなぁ~
「棗さんって…絵が好きなんですか?」
「え…うんまぁ、嫌いじゃないよ」
「へぇ…因みにどんな絵を描くんですか?」
「う~ん、色々だよ。風景画も描けば人物画も描くし…その他も色々かな」
「そうなんですね」
「そうそう!ち、因みにヨルヨルは部活決まったの?!」
無理矢理話題を変えて来たな…
多分、棗さんは思ったよりも絵に関して触れて欲しくないみたいだなぁ
「お~す!!!夜人はちゃんと来てるか~?!!」
「あ、師範。お疲れ様です。」
「おう、ちゃんと来てるみたいで感心感心!!ん…今日は棗も参加するのか、珍しいな!!」
「……そんなんじゃないから」
あれ?知らない内に師範と棗さんの関係が悪くなってない?
昔はウザ絡みをする棗さんとそれを後ろで眺めながら大笑いしながら眺めている師範と言うのが昔の光景だったと思うのだが…
(そう言えば最近は棗さんと稽古をあまりしてなかったなぁ…)
単純に美術部が忙しいだけなのかもしれないが…
「じゃあ私帰るから!ヨルヨルまたね!!次は学校で話そっか!!」
「あ、あぁ…はい」
そんな事を考えてると棗さんはサッサと道場を出て行った
こうなると俺と師範だけの稽古だなぁ…今日はキツイかもしれないなぁ…
「全くアイツは…一体何を考えているのやら…」
そうぼやく師範の声が聞こえてきた
え?何か絶賛喧嘩してます?
師範は俺の顔を見ると何かを察したっぽく、「あぁ」と納得した表情を浮かべた
「棗が3年になってからな…急に私を避けだしたんだ。別に喧嘩をした訳でもないのだが…。ま。夜人には関係のない話だ。じゃあ今日もしっかりと夜人用の練習に励むとするか!!」
「は、ははは…お、お手柔らかに…」
無理だと思いながらも僅かな可能性に賭けた俺の懇願は…全く叶う事は無かった




