46:【EPILOGUE】這い寄る混沌
「…で、アチラとは最終的にどの様な契約になったの?」
「はい、此方になります」
私の質問に対して予測していたかの様に契約書を手元に献上してくる
その契約書を手に取り、パラパラと中身を確認するが……なるほど
「幾つかの変更点があったのね」
「はい細々した箇所は割愛しまして大きな変更点は3つとなります。1つ目は先方が希望しない限りは顔合わせに対して同じ人間は斡旋できないとなりました」
「まぁ…それは良いでしょう」
相手からすれば好意の無い人間をコチラが押しつけ、毎年顔合わせするというのは苦痛なのだろう
私個人としては次期当主を宛がいたい所ではあるが…年に1度しかない貴重な機会を無碍にはしたくない
芽が無い以上は切り替えて別の女を宛がう方が効率が良い
「2つ目は当主自らが対象女性として場に参加する事を禁ずる項目が付与されました」
「まぁ…それも良いでしょう」
私自身、自分が参加したい気持ちが無い訳ではないが…相手が小学生である以上は至極真っ当な項目だろう
まぁ、私は釘を刺されなくとも参加する気は無かったが、アレは参加しそうだからな…項目追加は妥当な線だろう
「最後に参加者の対象年齢は不問としますが、参加できる対象家格は四大名家宗家と分家、分家と同格の家格までとなりました」
「………見落としてくれたらと思っていたけど、其処までは甘くなかった、か」
確かにそこを制限しなければ四大名家が関係する家は無尽蔵に出て来ると言っても過言ではない
そう考えれば真っ当な要求ではあるが…相手の思惑にホイホイ乗ってしまった状態なのが面白くない
「けれど…白冬の血が入る事を考えれば致し方ないとも思える、か」
我々四大名家は一般的には横並びだと思われがちだが、実のところ細かい所では上下関係がある
その頂点に立つのが白冬であり、白冬に対抗するには最低でも残り3家が結託しなければ話にもならない
「それに今回、黄秋が我々の中では明らかに不利な立場になった事だし…まぁ溜飲を下げておきましょう」
黄秋家直系が他家まで巻き込んでやらかした事は黄秋からすれば大きな傷となった
結果、経済面でも後塵を期す内容の話し合いで決着がつき、来年から2年間は白冬家の男子と出会う場には参加できない事となった
来年は緑夏家から2人、再来年は紅春家から2人を斡旋して少しでも縁を繋ぐ可能性を高めておきたい
「御屋形様…来年は是非とも我が娘をお願いいたします」
「……分かってるわ」
傍に鎮座していた蕗ノ薹草子の言葉に投げやり気味に応じる
この話を持ってきた報酬として草子は自分の娘を1番に宛がう事を報酬として要求してきた
本来であれば反故にするか断るべき報酬だが…如何せん草子と白冬、いや八剱家の距離が近すぎる
無いとは思うがこちらに悪印象を持たせる様な情報を相手方には漏らしてほしくはない
持ってきた内容と報酬を天秤に掛けると致し方ないと思えるという事は…まぁ釣り合ってるのだろう
「けれど草子までがまさか白冬の血を求めていたとは知らなかったわ」
私がそう告げると、当の本人はキョトンとした表情を浮かべた後にコロコロと笑い出す
……一体何が可笑しいのだろうか??
「御屋形様、私は別に白冬の血なんて求めていませんよ?」
「嘘ばっかり」
「本当です。私がというより、娘が求めているのは【八剱 夜人】という男性からの愛情です」
「ふ~~ん…白冬の男はそんなに良い男なの?」
「そうですね…少なくとも私が今まで出会った男性の中では1番良い印象を受けましたよ」
「…………」
草子のそんな言葉にホンの僅かにだけ、八剱 夜人に興味を持った




