39:出来る事は限られる…だからこそ限られた出来る事を行うのだ!!
「まぁ、夜人さんからすれば無条件で受け入れようとしていたというのは不思議よね」
「そうねぇ…流石に小学生にそこまで求めるのは酷よね」
いや俺精神年齢30です…すいません
でも分からないモノは分からんのです…
「これ以上勿体ぶるのは大人の悪い所よね。理由は幾つかあるけれど…先ずは泡沫様が同席されているからね」
「っ?!!」
此処で母さん?!!と思ったけれど…成程と納得する
確かに母さんは元とは言え【白冬】という四大名家の中に位置していた人間だ
今は八剱だとは言え、同格とは言い難いのかもしれない
「夜人さんも予想しているかもしれないけれど、泡沫様の持つ影響力は凄いの。でもそれは…ただの切欠よ」
「切欠…ですか?」
「そうよ。私たちは腐っても名家と言われる家の当主、影響力が凄いというだけでは軽々と他家に従う事はしないわ」
「はぁ…」
そんなもんなのかな?
まぁ派閥が違うとか意地とかそう言うのがあるんだろうなぁと思いながら相槌を打つ
「でもね…泡沫様には借りがありましたらね」
「そうなんですか?」
「えぇ、娘たちが夜人さんにチョコレートをお渡ししたでしょ?あれは母親が拒否する事だって出来るのよ。けれど…白冬直系である貴方に渡す事を泡沫様には容認して頂いたからって言うのは大きいわ」
あぁ…そう言えば俺があづみちゃん達にチョコを貰ってる時、母さんが草子さん達に頭下げられてたもんね
それってそう言う意味があったんだ
「以上が無条件で受け入れようと思った理由ね」
「そっか…お母さん有難う」
母さんの寛大な心がこの交渉での役割が大きかったのだと感じた俺は横に居る母さんにお礼を言う
…当の本人は未だふくれっ面だけど
一体何が不満なのか俺にはもう分からないよ…
「だけどその借りも…言ってしまえば朝焼家当主の配偶者を追い出すまでで想定してたのよ」
「「ねぇ~」」
「成程…」
チョコを渡す程度で四大名家の事まで力を貸せるほどの借りではないよな
それ所か朝焼家当主の配偶者を追い出す事に力を貸す事すら過剰とも取れるし…
「だから正直、夜人さんから黄秋家の人間まで追い出す事を提案された時は心底焦ったわ」
「それはその…申し訳ございません」
「でも結局私たちにも非常に利のある交渉になったのだから、そこは素直に喜びましょう」
「「そうね」」
「いえコチラこそ…非常に有難い場を設けて頂き恐縮です、はい…」
そう言って恐縮する俺を(無理矢理)巻き込んでキャピキャピする友達の母親と、俺の横でひたすらふくれっ面を浮かべている母さん、そしてチラッと後方を確認すると「無」の表情を浮かべる麗さんに囲まれていた場の雰囲気は地獄だったという事だけは此処に記しておこうと思う
(さぁ…俺が出来る最善の手札は切った。他人任せでちょっと心苦しいけれど…後は四大名家がどう動くか、だな)
そう思いを馳せながら、僅かばかりの達成感とどうなるか分からない不安感を胸に俺は数日間過ごす事となった




