17:イジメカッコ悪い!!いやマジでキモイ!!
「夜人様、お早うございます」
「っ?!!……麗お姉ちゃん、お早う御座います」
いや怖いよっ?!!
朝起きてから身支度してさぁ、自室の扉を開けた瞬間に目の前に人が居て声を掛けてきたら誰だって怖いと思う…
しかも俺の部屋の扉ってさ、部屋から見ると押戸なのよ
なのに扉に当たる事無く真ん前に人が居たら…そりゃ怖いだろって話だ
「昨晩の件ですが…宜しければ本日は車で学校へ向かいませんか?」
「……そう、だね。月お姉ちゃんが良いって言うならそうしよっかな」
麗さんがこんな提案をして来るのは初めてだ
だからこそどうしても身構えてしまう
(結局、何かしら面倒な事があるんだろうなぁ…)
大したことが無いのであれば通学中に教えてくれても良い
大切な事であれば、今日の夕方に俺の部屋で教えてくれても良い
だけど、登校時に車で伝えるという事は…『大切な事であり、迅速に教えるべき事柄がある』って事だ
あぁ、ヤダヤダ…
朝焼くんの違和感に気づかなければ面倒な事に巻き込まれないで済んだのになぁ…
だがそれでも気づいてしまったからには仕方がない
このモヤモヤを抱えたまま生活を送る方が、俺の精神衛生上はよろしくないのだ
そんな事を思いながら月姉さんに声を掛けた
◆
◆
「それでは昨日に夜人様から頂いたご質問にご回答させていただきます。」
「「…………」」
俺と月姉さんは麗さんの言葉でゴクリと唾を飲み込む
……っていうか、月姉さんは聞いても良い話なのか?!
今更ながらそんな事に気づいてしまった
「今回の話は多少は月様も関係する話ですので一緒に聞いて頂いた方が宜しいかと…ただ、この事はご内密にお願いいたします」
どうやら麗さんは俺の思考を先回りしたらしい
俺が尋ねる前に明確な答えを口にしてきた
ただ、朝焼くんの事が月姉さんに関係するという理由がよく分からない…
「先ずは結論から申し上げます。『朝焼 公理』様は苛め…いえ、虐待にも近い様な扱いを受けております」
「「?!!!!」」
麗さんはそう言ったっきり何も言わない
いや…そんな事ある?!
言わずもがな、この世界で男性は稀少な存在だ
それは保育園にも行かせる事無く、家族全員で守られるかの様に扱われる…それがこの世界での男という存在だ
「えっと…朝焼くんて…実は女の子だったり、する?」
「いえ…彼は正真正銘の男の子となります」
「……男の子がこの世界で、そんな事…あり得るの?」
「………基本的には、ないとしか言い様がありません」
「………ふぅ~」
まぁ基本には例外があり、原則には但しが付与されるのはどの世界でも同じだ
腸煮えくりかえる気持ちを落ち着ける為に深く深呼吸して、冷静になろうとした
いや…冷静になる振りをしようとした…
「朝焼くんは基本的という枠内には存在しないっていう事だね……なんで?」
「それは……彼が『朝焼』という家の直系男子だからです」
「……???」
俺の頭の上に???マークが羅列される
そんな疑問が表情に浮かんでいたのだろう…麗さんは言葉を続けて俺に説明してくれた




