16:何となく不穏な空気が流れている気がしないでもない
「ソワソワソワ…」
俺の自室へ招き入れて5分が経過した…
初めて入った訳でも無いのに麗さんが挙動不審な動きを見せる
しかもそれだけでは無く…口で「ソワソワソワ」とか言っている動揺っぷりである
「あ、あの、麗お姉ちゃん?」
「っ?!!」
「あの…そろそろ質問しても良い?」
「っ!も、勿論です。ど、どうぞお尋ねください!!」
あぁ…麗さんは公私をしっかり分けるタイプなんだなぁ…
思えば俺を起こしにきたり、部屋を片付けたりしてくれる時は仕事中だった
今は母さんと引継ぎを行い、プライベートの状態なんだろう
…そう考えたら申し訳なくなるなぁ
多分、「じゃ明日に教えて」と言っても「今言って」と言われて押し問答になるヴィジョンが容易に浮かぶ
だったら聞きたいことをさっさと聞いて終わらせた方が彼女の為かもしれない
そう思って麗さんに聞きたかった事に対して口を開く
「えっとね…同じクラスに朝焼くんっているじゃない?」
「……はい」
ん?朝焼くんの名前を出した瞬間にあからさまに落ち込んだ表情を浮かべているぞ?
何か言いづらい事でもあるのだろうか?
「えっと…教えてもらえる範囲で大丈夫なんだけど、朝焼くんってどう思う?」
「…どう思う、とは?」
「ほら、朝焼くんって男女関係なく人が苦手みたいじゃない?男の子でそんな感じになるの珍しいなぁって…」
「……」
Oh…麗さんの表情がバリキャリモードに変貌していったぞ
この表情の彼女なら俺の質問に対しての答えも期待できるかもしれない
「上手く言えないんだけど…男の子って、女の子を怖がったり、女の子を蔑ろにする子を見かけた事はあるんだけど…男女関係無く怖がっている子って初めてだからさ…珍しいなぁって…」
「成程……」
「ほら、アルス君に一緒に帰ろうって誘われてたでしょ?その時の朝焼くんの表情がちょっと気になったんだよね」
「…………」
「…麗お姉ちゃん?」
「……申し訳ありません。夜人様、そのご質問に関しましては明日にご報告させて頂く形でもよろしいでしょうか?」
「?……うん、僕は全然大丈夫だけど……」
「有難う御座います、それでは明日にご報告させて頂きます。」
暫し思案顔を浮かべていた麗さんだが、俺にそう告げると同時にさっさと部屋から出て行った
「…………」
いや…俺の部屋に入った瞬間にやたらと挙動不審な雰囲気を醸し出していた人とは思えない豹変っぷりである、マジで
(だけど…コレは思ったより面倒な事なのかもしれないなぁ…)
俺の中で麗さんは仕事がバリバリに出来る人である
前世の俺と比べてもダントツに仕事が出来る人だ
まぁ…比較対象がショボいというのは愛嬌だろう…(グスン)
そんな麗さんが、その場で答えを出さずに仕事を持ち帰るという事は余程難解な理由があるのか…それとも明言出来ない様な理由があるのかだと思う
まぁ、杞憂である事を願うけどね…
そんな事を思いながら少しモヤッとした気持ちを抱えながら俺は布団に潜り込んだ




