14:上司の目を盗んでの執筆は中々難しい…
「カッコイイ…」
「こんなの姫騎士だよ…」
「小学生で弟と婚約…?そんなの漫画でも見た事ない…」
「月お姉さま…ハァハァハァ…」
クラスの女子たちがボソボソと(多分)月姉さんを賞賛している声が聞こえて来る
いや…色々とツッコミどころはあるよ?
こんなの姫騎士ってなに?とか、ハァハァしてる奴はマジでヤヴァイとかさ
でも全体的に俺のクラスでは月姉さんに好意的らしく、悪い様には広まる事は無いだろう事に安堵した
ただそれより…首っ!!俺の首が痛い!!!
「月様、夜人様が苦しがっております。愛情表現はそれ位で自重ください。」
「…あ」
どうやら麗さんが月姉さんを止めてくれたらしい…
首を解放された俺は月姉さんの「ごめんねごめんね」という言葉に微笑みながら問題ないと手を振る
…ふっ、子供の無邪気なやらかし位はおっさんの寛容な心の前では何てことないのさ
だから女子たちよ…「何て寛容なの」とか「優しすぎて辛い」とか言わんでよろしい
聞きたくないのに聞こえるのよ…
「よ、夜人くん…き、君は…ほ、本当に…」
「……?あ、アルス君」
震える様な声で名前を呼ばれたから振り返ると愕然とした表情を浮かべるアルス君と目が合う
うん…彼からすれば恋して即破局みたいな感じになったんだから、そんな表情を浮かべちゃうよね…
しかも相手が弟の俺なんだから、彼の動揺が嫌でも理解出来る
「夜人くん…君は…その…本当に月さんの婚約者…なのかい?」
「…うんまぁ…そうなんだ…」
俺はバツの悪い気持ちでそう答える
だってさ…ついさっきまで「アルス君頑張れ~」って内心思っていた訳じゃん?
なのに肯定せざるを得ない今の状況が何か申し訳なくてさ…思わず俯いてしまう
「……チッ!!」
…ん?
ふと何処からか舌打ちが聞こえて顔を上げる
そう言えばこの世界に来て舌打ちって初めて聞いたかもしれない
零にされた事あったっけな?いや…多分ないわ
「…分かったよ、ここは潔く引くよ。朝焼くん…良かったら一緒に帰らないかい?」
「っ?!!!」
「流石の僕も今は傷心中でね…君が一緒に帰ってくれると嬉しいな」
「…………」
「ねぇ、どうかな?朝焼くん」
「……うん」
アルス君は流石に傷心中らしい…
今この場が居心地が悪いのもあって朝焼くんを連れて帰宅するみたいだ
まぁ、俺だったら秒速でこの場を去りたくなるのだから気持ちは分かる
「アルス君と朝焼くん、また明日ね!!」
「…あぁ。夜人くん、また明日」
「…………」
俺の挨拶にアルス君は若干不機嫌に挨拶を返し、朝焼くんは…ん??
何か…怯えてる??
え…?
俺が怖いのかな?
「グェ!!!」
そんな事を考えていると身体の側面部分から月姉さんがダッシュして抱き着いてきた
その痛みの悶えてしまい、さっき考えていた事を思い出すのはその日の晩になってしまった




