11:えんだぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!
「ところで月さんの趣味はなんですか?僕は紅茶の飲み比べが趣味なのですが、紅茶はお好きですか?」
「…そう」
「?余りお好きではないのですかね…あまり好まれない様でしたら無難な所でダージリンは如何でしょうか?春摘みの茶葉であれば渋みも抑えられておりますので非常に飲みやすいですよ。」
「……」
「もしそれでも紅茶が渋いと思われたならミルクや砂糖を入れてみましょう!紅茶愛好家の中にはミルクや砂糖を入れるのは邪道だという視野の狭い輩がいますが、僕は紅茶好きが増える為には寧ろ必要な事だと考えていますから気にしないでください!!」
「……」
おぉぅ…アルス君の怒涛の攻勢によって月姉さんが彼のイケメンフェイスに見惚れている様だ
照れているのだろうか?
さっきからジッとアルス君を見つめながら無言を貫いているのを見るに、既にかなり彼にお熱だと予測できる
あぁ…これがNTRという奴か…(違う)
俺が思った以上に心にクルものがあるな、NTR…
流石に脳破壊まではいかないけれど、今夜は酔っても良いかな?っていう気分だ…
「……夜人様」
そんな娘の晴れ姿を見る感情と、目の前でNTRたという虚無感を味わっている俺に対して麗さんが背後から声を掛けて来る
…珍しいな
麗さんは小学校では俺に声を掛けてくる事は滅多にない
以前のその理由を聞いてみると麗さんなりの拘りがあるみたいで…
曰く、「小学校という成長過程で大切な時期にこそ同年代の子供たちとより触れ合って欲しい」という事だ
まぁ、理屈は理解できるし納得もしている
けど…俺、おっさんなんだよなぁ…
だからこそ麗さんが教室で俺に話しかけて来るのは非常に珍しく何かが起ころうとしているとも言える
「どうしたの、麗お姉ちゃん?」
「…月様をお止めしないで宜しいのですか?」
…止める?
あぁ…確かに俺と月姉さんは婚約者だ
だからこそ麗さんは俺からアルス君に乗り換えようとする月姉さんを止めないのか?と聞いているのか
「う~ん…」
まぁ…正直に言うとそんな気持ちが0なのか?と言われると否というしかない
月姉さんとは10年ほどの付き合いなのだから愛もあれば情もある
ただそれが家族的要素なのか恋人的要素なのかと聞かれれば…
(…やっぱり家族的要素の気持ちの方が強いんだよなぁ~)
多分、僅かに感じるモヤモヤとした気持ちも父親が娘婿に「娘はやらん!!」的な気持ちなんじゃないかな?と思う
俺のそんな感情で姉さんの幸せを奪っても良いのか?と問われれば…それも違うしなぁ…
う~~んと頭を抱えている俺に対して、麗さんが非常に珍しく目に見える程に焦りだした
「よ、夜人様!!」
「…ん?…おぉ!!」
俺が悶々と悩んでいる間に此処まで進んだのか?!!
月姉さんは徐に右手を上げて、アルス君の首?肩?に触れようとしていた
おいおい!!
チューなのか?!!
初対面からチューなのか?!!!と俺は興奮するかの様な気持ちでゆったりと動く姉さんの手を見ていた
(…ん?待てよ…)
そんな興奮した俺の脳裏に突如名案が浮かび上がる
よりドラマチックでより情熱的に2人の幸せを祝福しようではないか…
「月お姉ちゃん!!」
0.0001秒でそう結論付けた俺は月姉さんに声を掛けた




