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大空の果てまで君と共に

 僕とちひろは幼馴染だ。僕が初めてちひろを好きだと認識したのは小学五年生のときだった。きっかけは友達がちひろに告白したのだ。その時僕はちひろと離れたくないと思った。きっとちひろはこのまま中学校を卒業し、高校、大学へと進学するだろう。大人になって結婚をして子供ができ、幸せな家庭を築いて行くのだと思う。僕はそれを受け入れることができるだろうか、ちひろのことを心から祝福することができるだろうか…自分にそう問いかける。その答えは…

「誰にも渡したくない」

そう呟いた。僕はちひろが好きだ。いくらでも笑わせて、決して悲しませたりしない。そう考えると居ても立ってもいられなくなって家を飛び出した、時間は夕方五時、ちひろの家は家の近くだ、そこまでの全力疾走。ちひろの家の玄関前にたつと、自分の鼓動がひどくうるさい、そこに混じってひぐらしの鳴く声が聴こえる。インターホンを押すとちひろのお母さんが出てきた。

「すみません、こんな時間に。ちひろに少し話があって…ちひろを呼んでください。」

ちひろのお母さんは、ちひろを呼びに行った。その後にすぐちひろがでてきた。

「話があるんだ、ちょっとそこまでつきあってくれないかな」

「いきなりどうしたの」

ちひろは笑いながらそう言うも、自分の母親に散歩に行ってくると伝え、ついてきてくれた。近くの公園まで歩く。その間はたわいない話をしていたような気がするが、あまり覚えていない。公園についた。緊張する。心臓の音がうるさく、それ以外はなんの音も聞こえない。むりやり落ち着けようとしてもできない。仕方なくそのまま言葉を紡ぐ。

「ちひろ…僕はずっと君が好きでした、だから僕と、付き合ってくれませんか」

そう言いながら頭を下げる。その後すすり泣くような音が聞こえたため慌てて顔をあげると、やはりちひろが泣いていた。嫌だったのか…悲しくなった僕は

「ごめん、嫌だったよね。わすれて」

「まって!ちょっとまってやまと」

「え?」

「今泣いてるのは悲しいからじゃなくて、うれしいから。とても嬉しいから泣いているんだよ」

「じゃあ、それじゃあ」

「うん、こちらこそよろしくお願いします」

その言葉を聞いた瞬間涙が出てきてしまった。

「大丈夫?」

「ごめん、かっこ悪いよね、でも両思いだってわかって嬉しかったんだ」

このときの僕は幸せだった。そしてそれからの毎日は楽しくて仕方がなかった。一緒に学校に行き学校から帰った。本当に幸せで浮かれてて嫉妬されることもあったけど、それすら幸せの証明みたいで嬉しかった。修学旅行にも行けて、自由行動のときに抜け出して二人で京都を回った。そのときに見た金閣は夕日に映え金色に輝いてきれいだったけど、それを見ていたちひろはもっときれいで可愛かった。きっと僕達はこれからもっと幸せになって行くんだろう、もっと幸せな毎日を送れるんだと、そう思っていた。

 その日はクリスマス直前の終業式12月23日のことだった。目の前でちひろを失ってしまったのだ。二人で冬休みに遊ぶ計画を立てながら横断歩道を渡ろうとしたときに、僕が前に出て振り返ろうとした。その時爆音がなりトラックが突っ込んできた。大型の質量が突っ込んでくる様子に体がかたまり、逃げろと叫ぶ頭の命令を無視し続けた。

「やまと‼」

そう叫びながらちひろが僕を突き飛ばした。次の瞬間トラックがちひろを吹き飛ばした。鈍い音が響き、吹き飛ばされたちひろの体からは赤い血が流れ出していて、地面を赤黒く染めていった。僕はすぐに救急に電話をかけた。けど舌がもつれうまく話すことができない電話係の人に「おちついてください」と言われても落ち着けるわけ無いだろうと叫び返した。けど少し冷静になって、やっと今の状況を、この絶望に包まれた状況を説明することができた。すぐに救急車が来て病院に運ばれた。すぐに手術が始まり治療を受けた。無事を祈りつつ手術が終わるのを待つ。気がつくとあたりはすでに暗闇に包まれていた。手術をしたのであろう医者が出てきた。

「残念でした」

周りの音が聞こえなくなった。

「最善を尽くしたのですが、既に手遅れで…」

刹那僕はその医者に掴みかかった。

「嘘だ!まだ!まだできることがきっとあるはずだ!そうだ!別の病院に行こう!もっと大きな病院なら大丈夫なはず!だからちひろを返してください!」

「申し訳ありませんでした」

その言葉で僕の体からは力が抜けた。

「すみませんでした。僕が何もできないせいでちひろが死んでしまって…」

近くにいたちひろのお母さんに謝罪すると「大丈夫だから」と言われ、続けて「ここから出ていって」とも言われてしまった。その言葉はより一層僕を苦しめた。僕は学校に行くことができなくなった。自分の部屋に引きこもってしまい、他人と関わることができなくなった。



 家から出ると風が強く吹き付けてきた、身を切るような風の冷たさに慌てて家の中に入る。…あの日から一年が経ちまたクリスマスが近づいてきた。このままじゃいけないと思い自分を変えようとするも変えることはできなかった。ちひろを失ってから僕の中では時が止まってしまった。それでもなんとか外に出ることはできるようになった。外に出ると自然に事故があった場所に足が向く。あの交差点には花が置かれていた。そこに爆音が鳴り響き、あの日と同じようにトラックが飛び込んできた。

「そうか、僕は死ぬんだ。今そっちに行くよちひろ……」

体が宙を舞った。


目が覚めたら白い空間の中にいた。体に痛みはなく特に大きな問題はなかった。でもここはどこだろう。

「ここはあの世とこの世の境目だよ」

優しい声が聞こえた。この一年間聴きたいとどんなに願っても叶うことはなかった声。忘れることのない声。

「ちひろ!」

「やまと!」

僕らは抱きしめあう、久しぶりに感じるちひろの体温。一時のあいだ僕らは幸せだった。ただ、幸福な時間は終わってしまった。

「やまと、こっちに来たらだめだよ。」

「どうして」

「やまとはまだ生きているから。」

「でも!」

「だめなの!前にも話したでしょ?」

確かに生きている間にそういう話をしたような気がする。お互いが死んでしまったらどうするか。僕はちひろを追いかけるといったらめちゃくちゃ怒られた。そしてその後しばらく話しかけられなかった。

「でも僕はここにいる!」

「たしかにそうだけど!でも私は!やまとは大丈夫って信じてるから!」

そう返されると何も言い返せなかった。ちひろがぼくを信じてくれた。こんなときでもその事がとても嬉しくて言い返せなかった。

「わかった。じゃあ僕は戻るよ」

しぶしぶそう言った。そしたら辺りは暗くなってきた。そして完全に闇に包まれたときになったとき

「私はやまとと過ごしてとても楽しかったよ。じゃあねバイバイ……」

ちひろが言ったような気がして、僕も幸せだった、そう叫ぼうとしても叫ぶ前に意識を失ってしまった……



目が覚めるとそこは白い部屋だった。ただ体を動かすことは出来ない。体全体を鈍い痛みが包み少ししびれていた。周りをよく見回すといろいろな機械が見えた。

「目が覚めました!」

誰かの声が聞こえる。

「やまと!」

その声は願い続けた声ではなく母親の声だった。ここは病院か……

「心配かけてごめんなさい」

かすれた声で母さんに謝る。

「心配したんだから……」

どうやら僕は3日ほど寝ていたらしい。ただ命に別状はなく、すぐに退院することができた。


これから僕は生きていかなければならない。だってちひろと約束したから。きっと辛いこともあるだろうけど、諦めずに僕は生きていく。ちひろが迎えにくるまで。青空の下でそう自分に誓うと、ちひろが笑ったような気がした。


この作品は自分が中学生の時に書いたものです。拙い文章ですがここまで読んでいただいた方、またこの作品を開いてくれた方ありがとうございます。この小説を読んで素直に感じたことを感想として書いていただけると幸いです。

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