時間軸・五日前 九月十五日
「今度は意識を失ってませんね。慣れは良い事ですよ」
こんなものに慣れたって活用する時なんてもう来ないだろう。
「どうでもいい」
見た事はある。それでも、違う場所であることを今でも願う俺は悪いのだろうか。だからこれは確認だ。真実から目を背けるための、納得のいかない子供が駄々をこねるのと同じだ。
「それよりここは、何処だ」
一瞬悩んだようなジェスチャーをし、ぽんと手を叩いた。
「ここは少女の家の玄関ですね。少し待てば犯人が入ってくるように設定してきたので退屈はしないはずですよ」
ガチャ。
ドアノブを回す音のみが聞こえた。
キィィィ
「お、入ってきますよ。さてさて犯人の正体とは一体」
聞こえるはずのない声を抑えそれでも興奮隠しきれていない奴を無視して今開くであろうドアをじっと見つめる。
入ってきたのは、やはり先ほどみた少年だった。
「少女が言っていたことは正しかったんですか。なんだか面白くなってきましたねぇ」
顔以外は黒い服やら何やらで隠す少年だが少女の両親の寝室に入った後は何処かから出した刃物で手際よく両親の息の根を止めていた。この少年が何故悲鳴すら出させない殺し方が出来るのかは分からなかった。
「Foー、やっちゃいましたねー。一端の犯罪者ですよ。この手際の良さは流石に準備の類はしていたでしょうね」
「なんでこいつが殺そうとしたのか、その理由は見られるか?」
ニコニコととてもうれしそうだった。
「ええ!それが過去に起きたことなら、それが未来に起きることであるならば!私はその全てを繋げる事が出来ます。如何致しますか?」
鋭く底の見えない奴の目は淡く光り、口元は笑みを堪えることが出来ないと言わんばかりに口角が上がっていた。
「開いてくれ」
俺は、始まりを、真実を観なくてはならない。二人の親友として。そして、残されたものとして…。
「言われずとも開けますとも。それが私の仕事である限りね」