第43話
廻原視点
さっきの神山に対する雪崩式の想いはなんだったんだ?
今はそんな邪念は振り払い、如何に現状を把握し、どうやって侵入者を排除するか考えなければならない
もっとも、そんな暇すらも無いのだが
「廻原君、敵が見えたわよ」
僕達は丁度、曲がり角に身を潜め、ゆっくりと近づいてくる敵さんに対していつでも不意打ちを仕掛けられるようにしてるのだ。
少々危ない橋を渡るが超至近距離で銃を構えて撃つのは、時間が惜しいというのは素人の僕でも解る。まだグリップでこめかみを叩きつけるのがマシだ。
「う~気持ち悪いわねあいつ。なんか薄笑いを浮かべてるわ」
確かに
よっぽど殺されない自信があるか、自分の実力に絶大な自信を持っているのかのどちらか、あるいは両方だろう
いずれにせよ奴は油断している。
だったら予想外の行動で奴を倒すしかない。
萩原視点
周囲の使用人達は皆、青ざめている
この女の強さに
まるで美しく
勇猛で
なんとなく、部族の戦士という人種を私は想像した。
下の階、一階二階あたりではまだ激闘が繰り広げられているだろう。
夜は本当に長い。
私は戦慄を覚えると共に武者震いした。そろそろ私の出番かな?
夜宵は私を庇うように前に出ている。
「そこのお兄さん。あたしの名はマンデネア・アンドラス。我々は楽しい事を楽しむ為にここに来た悪いけど全殺しさせてもらうわよ?」
ハッ くだらない言葉遊びだな。まだ廻原達との話題が楽しめる。
「アンドラスさん?あなたは見た目美人なんだから、こんなことしてるくらいなら、婿探しにでも励んだらどうです?」
「……今まで何回かお見合いしたけど、耐えきれずに数人は殺しちゃったわ。だからそんな物、いらないのよワタシには」
アンドラスさんはゾッとする微笑みを浮かべ、周りを凍りつかせようとする。
「若々しい男は素敵よ。お見合いで殺した数人の中には、精子を限界まで絞り取って、私の胸に優しく抱かれながら、ナイフでメッタ刺しにしたしねぇ!」
あははははははと笑いながら言葉遊びを続けるアンドラスさん。
時間的にはそろそろ余裕がない頃合いだ。下の奴らの騒ぎも途絶えている。
ああなる程、合点がいったな
コイツは、アンドラスさんは捨て駒って訳か(笑)
「夜宵。」
「なんでしょうか時斗様」
「茶番は終わりだ。このアマを八つ裂きにしろ」
「わかりました」
「あは、あはは!このあたしを八つ裂きにするってえ?いいわ、そこのお兄さんはこの女共を皆殺しにしたあと、手足ちぎって、天国の妖靡淫靡をもたらしたあと串刺しにしてあげる!」
悪いが私の貞操は夜宵の為にあるのでな。貴様如き腐れビッチにくれてやるものか。
夜宵は包丁を持ち、アンドラスはナイフを持って、激しい斬り合いが生じた。
他の使用人達がそれを見守っている。
「おい君たち、私は大丈夫だから下の様子を見に行ってくれ」
「待ってください!万が一、夜宵様がやられたらあなたは…」
「いざとなったら私が出る!それより下の階が気になるのだ。なにか違和感がある!早く見に行ってくれ。」
「は、はい!わかりました!」
さて、振り向くと夜宵が押されていた。所々が、斬られていて痛々しい。
「あは、こんなものなの?」
段々癪に障ってきたなこいつは。どうでもいいけど。
そろそろ私が出よう
「夜宵、君はよく頑張った。その傷の責任はいつか取ろう。ここは私に任せたまえ」
「はい…もうしわけない……ていうか今なんて…」
「ようやく現れたわね。イケメンのお兄さん。腹くくるのならヤらせた後、殺してあげるわよ?」
ああ駄目だなこいつは
私の許容範囲を軽く超えている。私の法則から大きくズレている。
「何、ブツブツ言ってるの?私を拒むのなら無理矢理、犯してあげるんだから!」
アンドラスさんはナイフを構えながら突進してくる。
私は夜宵から借りた包丁を構えて、
「アンドラスさん…あなたは生きる価値の無い“誤身”だ」
「え……そんな…なに?これ…」
フン、所詮はケンカ屋か
私は身体能力が良い他には、夜宵から武術を教えてもらったのだよ。
アンドラスさんの胸に真っ赤なザクロが咲いている。
血のシルエットで個体が見えないが、やはり包丁で刺したと考えた方が正しい。
「ちょっと待ちなさいよ…体好きにしていいから早く放して…」
私はアンドラスさんの体を眺めると鼻で笑う。
「残念ながら、私は夜宵みたいなスレンダーな体が好みでね」
さようならと呟くと、私は包丁を奴の胸に当て、一気に貫通した。ズブズブと音を立ててアンドラスは絶命する。
外はいつの間にか晴れていた
今日もいい天気になりそうだ




