第38話
暗闇の中で、三人の人間がひとつの屋敷に向かっている。ひとりは紳士のような服装を纏い、ひとりはまだ幼さを残した、男の子だ。その後ろからだるそうについてくる、男。
「サブナク。君はやる気がない割にはここまで、ちゃんと来るとはどういう事かね?君みたいな傲慢な態度をとる人間はしかる後に罰を与えなければならない」
「うっせ。誰がてめえなんざにやられるかよ!お前のそのスカした皮、削ぎ落とされたいか?ハーゲンティ?」
グチグチと言い争う二人の名は、だるそうに歩いてるのが、ダート・サブナク。
そして、丁寧な口調なのがジョン・ハーゲンティだ。
「ちょっと!ふたりともうるさいよ。もう、さっき適当に殺してきたばっかりじゃないか!頼むからこれ以上、騒がないでよ。」
まだまだ幼い体で、とてとてと歩く少年はニタ・カイムという名前を持つ。
「ニタ君。この様な社会の誤身は消し去ったほうが世の為なのだよ」
「カイム。こんな丁寧口調の分際で言ってる事とやることがむちゃくちゃな奴は、殺すのが一番良いんだよ」
「サブナク。冗談にしては面白みがないな。あなたが私を殺す? ハッ、お釈迦様の手のひらに小便を垂らすより有り得ない事象だ」
「そうかそうかハーゲンティ。そんなに俺に殺されたいのか」
「いい加減にしてよ二人とも! ほら、ここが斎藤さんの家だよ!」
「ここですか。美希さんが同棲してる相手の住んでる場所は。なかなか、ご立派な家じゃないですか」
「それはそれとしてさっき殺した死体、大丈夫なのか。証拠とか……あるだろ?」
「まあ大丈夫でしょう。ここ最近では、行方不明や、殺人事件などが多発していますからねえ。多少、人が死んでも紛れちゃいますよ」
「あ、藤間さんだ」
「三人ともこんな時間帯に来るとは思わなかったよ。ダートにジョンにカイム君」
「我々もこんな時間に呼ばれるとは思いませんでしたよ美希さん」
「まったくだ。いくら“家系を直に継ぐ者”の呼びかけとはいえ、こんな時間からはかなりだるいぞ」
「それに、リーダーが一番最初にいないというのも非常に不愉快である」
「まあいいじゃない。遅かれ早かれみんな来るわけだしさあ」
(僕としては、早く斎藤さんの顔を見たいんだけど……あ!来ましたよ!)
「気に入らないな…」
「何がだい、バアル?」
理知的な顔立ちで、バアルと呼ばれた男は更に、悪態をつく。
「全員召集など、滅多にない事なんだよ。それなのにこうやって来てみる理由を藤間の野郎に聞いてみれば、楽しむためにだとか。そんなくだらない利己的な理由の為に俺たちを使ってんじゃねーよ」
「まあ、いいじゃないか。せっかくだから僕達も楽しもうよ。なあ、セエレ?」
「……………」
セエレと呼ばれた女の子は、ボーっとしながらおぼつかない足取りで二人の後をついて行く。
「お前たちはそれでいいかもしれないが、俺はお前らを仕切るリーダーなんだからなあ。それなりの立場ってもんが俺には有るんだよ。わかってんのか、ウィネ?」
ウィネと呼ばれた女性はオーバーなリアクションで肩をすくめる。
「ふー。まったく頭の固い奴はこれだから困るんだよ。リーダーならリーダーらしくもっと柔軟な思考を持たないと」
「………チ、わかってるさ」
「見えてきたよ」
と、セエレが指をさす方向。そこには既に、何人か集まっていた。
「フフ、リーダーが一番最初に到着しないんじゃあね~。これだから僕達のあいだでは絶対的な統制力というものが無いんだよなあ」
「うるせえなあ。黙ってろ!」
30分後。
あと数人来ていない。
久々に再会したのだが、会話が見つからない。
この連中にコミュニケーションを求める事自体、間違ってるのだ。
かといって彼等はこの重苦しい雰囲気をどうとも感じてはいない。
仲間というのは形だけで味方すらも思っていない。
そんな最中、残りの数人が到着する。
「ウヴァル、どうやら私たちが最後のようだけど、まさか遅刻って事はないわよね?」
「しるか。アンドラスさんが、一々、道草食うのがいけないんだろ?」
「しょうがないでしょ!ここらへんに来るの久しぶりなんだから、ちょっとは迷うわよ!」
「ねえ、まだかよ?いつになったら僕達、到着するんだよ?」
「ヴァルファーレ、あともう少しだから我慢して!男でしょ?」
他の残忍な性格をした9人とは違って、この、マンデネア・アンドラスという女性は違っていた。年齢も年上なだけあって、他者を優しく包む、聖母のような性格をしている。
そのとなりにいる男の子、エミル・ヴァルファーレはゲームをしながら、歩いている。
そして後ろから歩いてきてるのはゲル・ウヴァル。10人組の中でも番犬の様な存在だ。コートの裏には多重の銃火器を持っている。
彼等、10人組はようやく全員集まった。斎藤の余暇を満喫するためのフォローとして。




