第32話
斎藤視点
あれは自分が、中二くらいの時だった。
学校帰りの中、路上の隅にダンボールに入った猫がいた。
捨てられたのだろう。ダンボールに黒いマジックで「拾ってください」と書かれている。
猫と目が合った。
昼間だというのに猫の瞳は爛々と輝き、それは、ひとりでも生きられる強さを持った瞳だった。
僕はその猫に近づき、菓子パンを差し出した。
同情?
いや違う。
僕とその猫は似ていたんだ。
ひとりで生きていく強さ。
僕にもそれを持っている。そういう素質がある。
猫は僕の手を引っ掻き、威嚇するような素振りを見せた。
ほらね。この猫はひとりでも生きていける。
ひっかかれて、落とした菓子パンを拾い、今度は少し離れた場所に置くことにした。
明日も行くことにしよう。
こうして毎日毎日、猫に餌をやるたびに、段々と懐かれてしまった。
二週間もすれば僕の家の前までに来るようになったし、学校が終わる時間には校門の前に待つようになった。
段々と僕はその猫の事を鬱陶しく思ってきた。
何故?
何故なら僕は孤独な一匹狼を誇る、猫の事を気に入ってた。なのに、段々とこの猫は僕になついてきたのだ。
僕は一匹狼を誇る、この猫を気に入っていたのだ。
所詮、こいつも同じだな。
ひとりで生きていくのを決めたのに心の中ではひとりでいるのを怯えている。
とてもがっかりだ。
僕は僕の足にすり寄る、猫の顔を見た。
なんとなく殺意が湧いた。
学校帰り。
あの日は夕焼け空がとても綺麗だった。
目の前には僕になついていた、捨て猫が一匹
それに群がり死肉を貪り喰う、野良犬達が四匹。
よっぽど腹が減ってたんだろう。骨もバリバリと音を立てて食べている。
僕はそんな光景を恍惚に満ちた表情で見ていた。
嫌、どうだろう?
綺麗な夕焼け空にさらされたその顔、本当は醜く歪んでいたかもしれない。
あの猫はいつものように校門で僕を待ち、一緒に帰った。
そして四匹の野良犬に出会った。
その時、僕はふと思ったのだ。
信頼している者にいきなり見捨てられたら、どんな反応をするのだろう?
試す価値はあるな。
猫の首根っこを掴み、野良犬達の中に放り込んでみた。野良犬達は即座に、猫の体を喰い破った。
猫はこっちの方に顔を向けている。
まるで助けを求めるかのように
僕は、それを笑顔で手を振って見せた。
「ギャー」という断末魔の叫び声。
僕はその光景を笑顔で見るが、内心くだらないと思っていた。
「どうでもいい事を思い出したよ」
「へ~遊輝君。動物はちゃんと大切にしなきゃだめだよ」
「ツッコむとこ、そこなの?まあいいや。そろそろ夕食にして」
「はーい!」
藤間美希か…
確かにひとりで生きていくと決めたのにこれではあの捨て猫と同じだ。
いや、同じなんかじゃない。こいつは利用してるだけだ。使えなくなったら捨てる。
それだけのことだ
そうだ。余計な感情はいらない。
ましてや、恋だなんて…
これじゃ廻原達に対して格好の的だ。
僕はそう自分に言い聞かせた。




