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第30話

高崎視点



昼飯は抜いておいた。朝飯に肉類を取りすぎたか、胃の中が気持ち悪い。


昼飯にもこの“肉”を持ってきたんだがなあ。

「なんなら喰うか?神山」



「いつから気づいたの?」


「そんな事、気配で解るさ。いくらここが屋上だからって、大胆過ぎるぞ? まあそういうの好みだかな」


神山は無言で右手に所持してるナイフをこちらに向ける。

「警告をしに来たの。これ以上、廻原君に近づかないで」


「別に俺はあいつと関係を強要してるわけじゃないぞ。あいつは利用価値があるから、付き合ってるんだ」


「違うわ、廻原君があなたを利用してるの。そこんとこ勘違いしないで」


「あいつもそう思ってるだろうな。だが、それで俺達の関係は成立してるんだ」


「時間の無駄かしら」


「そうでもない。今日、昼飯は食わないからな。実に有意義な時間だよ今は」


「…もう一度言うわ。これ以上廻原君に近づかないで」



…はあ。これだから思慮の浅い人間は困る。こいつは自分の恋が上手くいかないから、俺達がいるから恋が実らないんだと曲解してるのか?

どうでもいいけど。

それはそれとしてこの状況、どう打開するべきかだ。

後ろは崖。

眼前には刃物。

どちらも地獄か。

意外と冷静なのは、現実逃避の表れだろうか。


神山がじりじりとにじりよってくる。まずいなこのままじゃ…



「お前らそこで何をしてる」



廻原か。助け舟になる…かな?




廻原視点




修羅場だ。いつも僕が食べる場所で修羅場が起きている。


「廻原。お前の彼女は随分とまあ大胆な奴だな」


「まあな。僕なんか休校の時、何日か監禁されてたからな。言っとくが借りは返さんぞ。面倒だから。神山、お前の好きなようにしろ」


「やったー!」


神山が嬉々とした表情で高崎に突進していった。僕は、興味がなくなったのでさっさと食事を取る事にした。

ベンチに腰掛けると、弁当が置いてある。高崎のか?

中を見ると肉類ばかりだ。ひとつ、つまんでみると、肉は肉なのだが、妙な味がする。変わった味だな。あれ?なんかガリっと音がしたな。僕はそれがなんなのか口から取り出して見ると、それは爪だった。足の爪かそれとも指の爪か。更に弁当の中には髪まで入ってる。



まさかあいつ…



僕は神山と争ってる高崎を見た。高崎は神山の網羅をくぐり抜け、こっちに向かって走る。僕は高崎方に向かって弁当を放り投げる。高崎はそれを受け止め何も言わず、屋上から去っていった。


「廻原君、ごめんね」


「何故謝る?」


「廻原君に仇なす敵を殺せなかったから」


「無理する必要は無い。」

僕は無味乾燥な言葉を言い、無味乾燥な食事を終え、屋上から出た。横には何故か嬉しそうな顔をしてる神山がいる。


僕はさっき他人を気を使う言い方をした。“無理する必要は無い”と。


何故、他人を気遣う言い方をしたのだろう?


ああ、そうか。こいつには利用価値があるから今、ここで何かあったら後々不利になるからか。


僕は、そう自分に言い聞かせた



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