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第25話

廻原視点



「僕を助けるなんてどういうつもりだ高崎?」


あの時、僕は脱出に失敗して今度はキツいお仕置きを迫られるかと思ったが、望んでもないのにこいつが僕を救出しやがった。

「妙だと思ったんだよ。偶然、お前の家を通ると門の所が鎖で雁字搦めになってたからな。だが勘違いするなよ、お前のような利用価値の塊はまだまだ生きてなくちゃ困るんだからな。だから助けてやったのさ。」


・・・・チ。

こいつ言いたい放題言いやがるな。僕は坂井の奴みたいにはならない。人間なんざ、自分の正しさを振りかざし、自分の尺度でしか考えず、他人の言う事を考えない人間が多くいる。間違いなく神山はその部類だろう。実際、僕の言う事が通じなかった。


まあ、そこが気に入った理由なんだがな。


“どの時代においても狂人が世界を変えていく”



言い方自体は大袈裟だが、殺人鬼などが良い例だ。アメリカなどでは少し前にシリアルキラーと呼ばれた狂人がいたが、既に死刑に処せられた奴らが殆どだろう。


人間の知能は高いようで実は低い。

失ってからこそ、必要だった事に気づく。


そこを殺人鬼だけとは限らない数々の狂人が身を挺して、時代を創り世界を創るのだ。


この矛盾したシステムが無ければ、世界は成り立たない。


「おい、廻原!逃げるぞ!」


僕はとっさに振り返ると、目が暗く濁りきった神山が右手にスタンガンを、左手に出刃包丁を持っている。


「廻原君!そんなやつに連れてかれちゃダメなの!廻原君は私とずっと一緒にいるの!」



「あのアマ!武器持ちかよ! 廻原!お前もコレを持て! 無いよりはマシだ」

僕は高崎から部屋からの脱出の為に窓をぶち破りついでに拘束を解くために使った木刀を持たされた。

とは言っても、相手はスタンガンを持ってるので威嚇程度にしか使えない。



結局、僕らは二手に別れて逃げることにした。


やはり世界は狂人が動かしてるな。






高崎視点




二手に別れれば、あの女は絶対に廻原の方に行く筈だと俺は思った。


だが何故だ!?


何故俺を優先する!?


今も奴は般若のような形相で俺を追いかけてる。持久力なら自身があるのだが、あの女は一体、なんだ!?

何故、此処までついてこれる!?救出したのが夕方だから、もう辺りは夜だぞ!?



「廻原君~この害虫を駆除したら直ぐに捕縛しに行くからね~」


そういえば、以前にも似たような視線だな。

まさかあの女、学校で廻原と話してる時にこちらを睨んでた奴か。



「廻原君、私と障害を乗り越えて愛をはぐむの~。将来の子供は五人でも十人でもいいの~。その前にこの害虫を駆除するの~」



奴が何か言ってるが聞ける余裕はない。


こうなったら撹乱作戦だ



俺は山の道へと入り闇雲に森の中を突っ込み、走った。




もう奴の足音も声も聞こえない。



・・・・・諦めたか?



「おや、高崎君?そこで何をしてるのかな?」


振り向いた。


そこには、作業服で籠を背負って、頭に懐中電灯を付けてる、萩原がいた。




「なる程、事情は飲み込めた」


「お前の事情は飲み込めねえよ」


「私か? 見てのとおり、山々の新鮮な幸を摘んでいたのだよ。暇だしな」

「まあいい。とっと下山するぞ」


「無論、そのつもりだ。しかしその神山とかいう女、奇行からして利用できそうにもないし後々、厄介だな。」


「それにあいつは廻原の協力者だ。」



「ほほう?廻原の?そういえば、斎藤の奴も協力者がいるぞ。名前は藤間美希というらしい。」


「今は斎藤の事なんざどうでもいい」




「そうだよ? 他人の事なんで今はどうでもいいでしょ? 廻原君は例外だけど」


ダルいな。もう来やがったか。


「同じクラスの高崎君だよね?あれもう一人は萩原君かあー。流石に二対一は厳しいかな」


「だったら諦めてくれよ」

正直、冷静は保てない。何故なら神山が持ってるのはスタンガンとナイフ。ナイフは当たりさえしなければ問題ないが、スタンガンはやばい。



「まあ、いいや。高崎君。今回は許してあげる。でも私はいつかあなたを殺しに掛かるからね。あ、あと萩原君も、斎藤君もね、“坂井”君みたいにね・・・」




萩原視点



そうか。こいつが坂井を殺した張本人か。高崎はようやく、合点がいったような顔をしている。



「今の目標は高崎君。君だから、犠牲者第二号は」


「ほざいてろ、返り討ちにしてやるよ」



山菜を取りにきただけなのに、こんな局面に達するとは。




非凡だな。




坂井。貴様は私の手で殺したかった。あのときの自分の価値観を表現するなら。


次はこの女を殺すか



生きる価値なさそーだし

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