第20話
廻原視点
おーおー。人格破綻者同士、仲良く殺り合ってるわ。
僕達の身体能力は普通の人よりもかなり高いからな。それにしても、坂井も萩原もなんであんな嬉しそうな顔してるんだよ。萩原は社会のゴミを排除しようとして、自分の価値を実感しようとしている。対する坂井は似たり寄ったりな思想を持つ萩原にやっとのこさ、自分の思いを伝えてそして願いを成就した。
互いに今までの遅れを取り戻そうとしてるな。銃刀法違反なんざお構い無しに刃物を振り回してるよ。
見てるだけで僕も興奮してきた。
となりの斎藤なんかあいつらの“好意”という名の“行為”を見て自慰にふけってやがる。どうでもいいけど。
「斎藤。興奮する気持ちはわからんでもないが、となりにいる僕の身にもなれ。お前の頭は年中、麻薬でフィーバーしてるのはわかってるが、あんまり声を荒げるとばれちまうだろうが。」
「あああ・・・ふたりともいいなぁ、いいなぁ。」
このままではばれるかもな。場所を変えよう。
「おーい。後始末するためのティッシュ置いておくぞー。」
萩原・坂井視点
「ハギハラー!!!俺の慈愛狂愛を受け止めながらシネー!」
「ふはは。貴様では無理だよ坂井。貴様では私を倒せない。貴様では私を殺せない。貴様の愛では私を射止めれない!愛だけでは社会を築く事なんて不可能なのだよ!故に私のしてる事は正しい!貴様の用な社会のゴミでは私を止められない!」
「言ってくれるじゃねえか。しまった!ブービートラップか!クッ、こんなもの!俺様の愛で!」
「愛だけでは生きていけないという言葉があるが、それは正に貴様にお似合いの言葉だなあ!最初に死ぬ奴がまさか貴様とは・・・だがお前は私達の進展を積極的に取り組んだ愚者。苦しまないように一瞬で殺してやるよ。」
私は、罠など仕掛けてなど無い。我々がただ単に暴れすぎて棚にある荷物などが、たまたま坂井の方に落ちただけだ。
最も、奴はこれで動けない。
ようやく私の答えが出せる。
こいつを殺す事で
「まて萩原!止まれ!ストップだ!」
止まらいとヤバいぞ萩原。こうなりゃもうハッタリだ。
「見苦しいぞ坂井。貴様の負け・・・だ・・・?」
上から何かが落ちてきた。
なんだこの液体は?やけに生臭いな・・・まてよ・・・この匂いは私でも知っている
まさか・・・・
私は上を見上げた。
うえの方には下半身丸出しにして恍惚とした表情で快楽の余韻に浸っていそうな斎藤の姿があった。
なるほど、やはりな。高崎ほどではないが私の頭もなかなかのキレるものだ。
まさか一番、恐れていた予測事態が当たってしまうとは・・・・
私の口の中に生臭い液体が落ちてきた。私は思わずそれを飲み込んでしまった。
ようやく遅れを取り戻した脳みそからの伝達を受け、私はようやく喋れた。
「うぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ひゃはははは!ざまあみろ!萩原!人の忠告を聞かねえからだ!」
まあ、偶然で助かったが。斎藤の奴、野外プレイに感心があったとは。ていうか何故、あいつがここにいる?丁度良い。半狂乱になってる萩原を殺してついでに斎藤も殺してやる!
よし!ようやく脱出できた!
「萩原!覚悟しろ!ってあれ?」
そこには萩原の姿がもういなかった。
いるのは、後始末をしている斎藤のみ。
どちらにせよ、奇妙な事象には変わりない。
斎藤視点
後始末するのは大変だ。まあ、たまたまそこにティッシュが落ちてたから助かったよ。
あれ?いつのまにか誰もいない。下で殺り合ってだ坂井と萩原がいない。となりで傍観してた廻原もいない。
僕が自慰に夢中になってる間に終わったのかな。
廻原視点
長い夜だったな。
思った以上に時間が掛かった。あのときなぜかしらんが、萩原が急に叫び、館内から飛び出した。坂井もあのあと追いかけたが一体全体、何が起きた?
白けムードになってきたので、僕は斎藤を無視してとっとと引き上げる事にした。
興ざめだ。
家に帰ると神山が、玄関の前でゴミ袋を持って外に出ようとしている。
「神山、なにしてる?」
「あっ廻原君?私ね!廻原君にまとわりつく悪い虫を退治したの。ほめてほめて。」
「・・・虫程度でそんなに返り血を浴びるかフツー? その中に何が入ってる?」
神山は即答した。
「坂井君」
神山視点
廻原君に近づく悪い虫は殺さないと・・・・。
私はスタンガンを持ちながら、廻原君の元へと向かう。
すると目の前にやけにオタついてる、人がいた。彼は確か同じクラスの坂井君じゃ・・・。
こいつこそ廻原君に近づく悪い虫だ。
回虫だ!
蟯虫だ!
寄生虫だ!
私は後ろから、彼の首筋にスタンガンを押し当て、ビリビリ言わせた。
坂井君は声にならない悲鳴をあげて、ばったりと倒れる。
どうやらまだ生きてるようだ。
坂井視点
糞!萩原の奴どこにいきやがった!
完全に見失ったか。
結局、奴には俺の愛がわからなかったか・・・。
ああもうだめだ。
早く人を殺したい
殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せえ!!!
そのとき、俺の頭に雷が落ちた。頭から衝撃が走る。体から準々に衝撃が渡っていく。何か、自分でも喋っているが解らない。俺は立ち上がる余力も無く地面に倒れた。
最後に見たのは、出刃包丁を持って薄ら笑いを浮かべている女が見えた。
こいつは確か同じクラスにいる神山ってやつだったな。
予想外の人物が現れ、またしてもこの奇妙な事象に俺は理解出来なかった。
唯一、理解出来たのは。
俺が今から“死ぬ”という事だ。
胸元に何かが突き立てられる。
俺が“死ぬ”
坂井辰弘という人物が“死ぬ”
俺はあと一歩のところで答えを得られなかった。
“死ぬ”という事はこの世のありとあらゆる“規制”“制約”から解放されるという事だ。
あれ? なんだ?
こういう方法もあったのかよ?
だったらはじめからこうするべきだったのかもな。
俺は“開放”される瞬間、答えを得た。それは人を殺す事で得られるのと同様だ。
それは“虚無”という物だ。
なにもないわけではない。“虚無”というのは実在する。日常生活にはあまりにも存在感が薄くて解らないだけだ。
だが、今なら解る。
長年、探し求めた“答えが”。
段々気が遠くなる・・・
あ、でもやっぱり。
死ぬのは・・少し・・・怖い・・・・か・・・・・も・・・・・・




