第17話
廻原視点
朝方、何故だか知らんが、神山が家に押し掛けてきやがった。朝飯を作るだの何だのぬかして家にズカズカとあがり、何気に美味い飯を食わされた。
みそ汁に、髪の毛が入ってたり、飲み口に血がついていたのを聞くと、顔を赤らめて、何かをつぶやいていた。敢えて突っ込まなかったが。
なんやかんやで一緒に登校するようになり、校門をくぐると、周囲から奇異な眼差しを受ける。どうでもいいけど。
「廻原君。朝の料理のことは怒らないでね?私、廻原君の為に愛情込めて作った朝ご飯なんだから。」
「別に構わない。何か考えあっての事なんだろ?言及するつもりはない。」
独自の思想感を持ったやり方なのだろう。嫌悪は抱かない。
寧ろ感心する。
「フフ、ありがと。じゃあ毎日朝ご飯作るために、これからは・・・・」
「?」
僕は、彼女の顔を見据える。彼女が言うのを気長に待つ。
「親がいないんでしょ?じゃあ、私が廻原の家に同居してもいいわよ?」
ほう?僕の家に住むだと?
なかなか良い案だな。こいつに雑務を任せれば、僕はかなり楽な生活を送れる。
「いいだろう」
彼女はガッツポーズをとった。
こんなやりとりを公衆の面前でやってると視線が本当に痛い。
よく考えると武術を嗜み、社交的でクラスの中心人物である神山と、この学校の最も底辺に属する名も知れない人間である僕。
これだけ、奇妙な空間は無いだろうな。
「おい神山。なんで僕みたいな奴と一緒に居たがるんだ?お前まで白い目で見られるぞ?」
「別に周りの人間なんてどうでもいい。私は廻原君がいればそれでいいの。」
「・・・解らねえな。そんな感情、僕には到底、理解できない。」
「別に今解れなんて言わないわ。時間を掛けてゆっくり、私の物にしていくから。」
今の言い方からして、こいつは“好きになること”と“依存すること”と勘違いしてないか?
どうでもいいけど。
「あ、廻原君!私達同居するんだから、荷物とか、廻原君の家に持って行くわ! だから今日はもう、家に帰るから!」
僕は何も言わずに、教室へと向かった。
高崎視点
「時斗、お前に質問がある。」
「おや?高崎じゃないか。ケガはもう良いのかな?」
「戯れ言はいい。時斗、あの時ここでお前は俺を助けたな。」
「あ〜確かそうだったな。お前の顔面に放尿と言う名の引導を渡してやろうと思ったけど寛大な私はおまえが死にかけてる姿に悲壮感を抱き、慌てて先生を呼びに行ったというわけだ。」
まるで話にならない。
俺は時斗の腹を思いっきり蹴り上げた。
時斗は苦笑いを浮かべながら、膝をつく。
俺は素早く時斗の背後に回り、ナイフを首筋にあてる。
「これが最後の慈悲だ。時斗、次、真面目に答えなかったら頸動脈が面白い事になるぞ?」
時斗は舌打ちして渋々頷いた。
「わかったよ。して、質問は?」
「フン、しれたことだ。あの時お前は俺を助けた。だがそれには理由がある筈だ。」
「はあ?決まってるだろそんなの。答えを見つけるまでお前たちを利用しなければならないんだ。
お前もまだまだ利用できる。だから見殺しにするのは惜しいと思ったのさ。」
「それはお前の都合だろ?俺の都合を考えてなかったなお前は。」
「・・・なにが言いたい?。」
「お前は俺を止めた。そして坂井の殺人衝動も止めた。それは自分が答えを見つけられない焦りからでる行動だったんだろ?」
「なに?」
「お前はいつもニヤニヤ笑い、余裕ぶっこいてるがそれは、焦りと焦燥感を隠すためだろう?」
「高崎、貴様・・・」
俺は時斗の表情の変化を見た。
それは憎悪。
人の心の盲点を突くのはじつに気分が良い。
「まあなんにせよ、お前は俺の邪魔をしたことに変わりはない。今はさすがに殺さないが、あの借りはいつか必ずかえしてやる。」
話は終わりだ。
俺はトイレからでる。
ドアが閉まる寸前に時斗をみた。
むかつくと言うような表情で俺を凝視していた。
萩原視点
心を覗かれるのはいい気分じゃないな。
高崎の野郎・・・
奴が私の本心に気づくとは・・・
今のとこ注意すべきは坂井だが、高崎に変更しようか・・・
最近ある意味、人気者だな私は。(笑)
トイレから出て私はものすごく気分が悪くなったので、自販機に向かった。ホームルームにはまだ時間がある。
リフレッシュするために私は朝の健康果実をえらんだ。
平和だ
実に平和だ。
こんな平和な世界で惨劇が起きても、平和と呼べるのだろうか?
人なんてどこかで勝手に死んでいる。
所詮は他人事だ。
私もそう思う。
だがもしも、明日に死ぬのが自分だったら・・・
私は一体、何を考えてるのだろう。私らしくもない。
私は法律に疑問を持っている。
世界中のどこかで人は死んでいる。
病気や自殺などで死ぬ人間はともかく、絶え間ない、争いで死ぬ人間はどうだ?
飢えで苦しむ子供達
突然に起きる殺人事件
理不尽なテロ
そんなものがはびこっているのに、“法律”というのは何をしてるのだ?
法律は最低限の道徳だ。
それすらも守れないのなら、法律なんてものは無意味じゃないか。
罪を犯すのも悪い。
だがそれ以上に、法律という不甲斐ない制約がもっと許せない。
だが私は休日の時に決心した。もう迷わない。一応、覚悟はできている。
私は朝の健康果実をゴミ箱に捨てて、教室に戻る。振り向くと、斎藤が立っていた。
斎藤視点
「僕は自分を見いだすのが目的であり、お前らを傍観するのも目的だ。お前はなにやら決心した顔をしてるようだが、まだ完全に付き物が落ちてはないようだな。」
「さあね。だがなんとなく見えてきたさ。自分がこれからどうするべきかをな。」
「萩原、まさかお前は今日中に坂井と・・・・」
「それはむこう次第だ。」
「・・・そうか。まあ精々、僕を楽しませてくれよ。」
「おいまて、麻薬中毒野郎。廻原はどうした?」
「勿論、来ているよ。」
「・・・坂井は?」
「あいつはまだ見てないな。」
萩原の奴、内心焦ってるな。坂井も同じだろう。
僕はなんとなく、これから起きる惨劇を予想していた。恐らくは廻原と高崎も予想してるだろう。
答えを見つけ、自分を切り開く坂井とまだ迷いながらも、答えを見つけ、葛藤してる萩原。
僕自身の為にもまだまだ利用したかったが、もうそろそろ潮時だ。
今日は長い夜になるんじゃないかな。
どうでもいいけど




