ドキドキの駐屯地訪問 ~感情を利用するのは難しい~
今回は、何も言う事はない。
未だに姿を現さないオカマと、鶏人間、平気で犯罪的な行為を提案する麗奈。そんな一人と一匹の正体不明の敵にに仲間を拉致された自衛隊員達が耳の良い野生児に索敵を、電機の昆虫を操る女医に仲間の捜索を任せている頃に。
三つの陰は、それぞれが罠に掛かった獲物を調理している。
―――さて、と。
「じゃ、作戦通りに人質を盾にして情報を聞き出そうか」
平気で人質作戦を実行中の暫定サイコパス麗奈は、石を口内に捩じ込まれ頭に飛び蹴りを喰らって気絶している女児を無線機や自動小銃、自動拳銃をホルダーごと抜き取り荷物を漁り不要品は川に流し、服を剥ぎ取って蔦で適当な雑木に固定している。
「ああ。良いぜェ~。けどよ、何でおんなじ人間なのにそこまで警戒してんだ、ロゥ」
取り分け仲間意識が強いという程でもないが、生物としての忌避程度は持ち合わせのあるらしいロマンが疑問を呈する。
「ああ、それは君がいたからだよ。性格には、君と人面虫が存在しているから、かな」
麗奈はそれに、さもありなん、と理解を示しつつもこれは必要だと説明する。
「ほぉ。どういうこった?」
「まあ、とどのつまりはアレが何処に属しているのか、そもそも人間なのか。一切の信用はできない、ということだよ」
警戒心の強い、他人の好意を受け止める事を苦手とする麗奈は、人間かどうかさえも疑っていると発する。
「だが、それなら仲間を見捨てることも有り得るだろーよ」
だが、ロマンは麗奈の懸念通りにあれらが人間ではないのだとすれば、今回の作戦は上手く行かない可能性が高いと指摘する。
―――しかし………
「その為の最初の奇襲、だよ」
その言葉に自然と呆けてしまうローマンであったが、成る程そうか、と一拍の間を開けて理解を示す。
「………あー、成る程?流石、お前さんってところか」
―――つまりは、最初の奇襲で見極めたってぇ事かよ、バケモンじゃねぇか。アレ全部相手にして一人で囮と兼任してたっつーことだろ、それは。
「そういうこと。万が一、奴等が仲間を見捨てた時の保険に逃走経路も用意してたでしょ」
「で、結果的にコイツが直情馬鹿で助かった、ってな訳だな?」
「そういうこと。よし、拘束完了。そっちは?」
麗奈は少し得意気に自嗤気味な笑みを浮かべ肩を竦めると、ローマンに作業の進歩を尋ねる。
「おう、すっぽんぽんにひん剥いて縛ってあるぞ」
そう言って、ローマンは裸に剥いて口に石をくるんだ男物の下着を捩じ込まれたチャラ男を指先で示す。
「よし、服を用意していた雑草俵に着せて土と唾を掛けて誘導地点に投棄してきて。私はこの女を使ってトラップを、ロマンはチャラ男をセットして待機」
それに頷くと、麗奈は手早く作戦の手順を再度伝えて手元に視線を落とす。
「了解した。先に行ってるぞ」
ローマンは麗奈の持つ自身の鉈とその手元のソレから視線を反らし、さっと踵を返して麗奈に了解を返し何処かへと去っていく。
「―――よし、完成」
やがて、麗奈はソレを光に翳して目を細めて嗤う。
「うっわぁ、ひどい出来。コレジャナイ感半端ないね」
その手には、太い枝から加工された木の棒切れがある。
「ささくれだって返しになってる………」
麗奈は、自身の手先の器用さに舌を巻く。
それは、その一見すれば不出来に見えるソレが計算された厚みで為されていると確信したからだ。
「………うん、我ながら酷いモノを作ったねぇ~………」
にっとした微笑みが僅かに零れるその表情からは、その表情に反して酷く可逆的な印象が振り撒かれている。
「よっ、と」
麗奈はその威圧ともとれる威力を内に秘めると、軽やかに跳ね上がり女児の傍に立ち上がる。
「さてさて、相手は耳がいいからね。とても、好都合だよね。ふふっ」
麗奈は嗤う。可笑しくもないのに嗤う。
―――それは、とても恐ろしげに。
「チャラ男を使って時間を稼いでいる間に、尋問を済ませてさっさと逃げよう」
ふと、冷めた表情で何処かを見遣る訳でもなく呟く。
「ほら、起きて起きて、御嬢様」
麗奈は優しい手付きで女児を揺すり起床を促す。
「ぅ―――んぁ?」
女児は爽やかとは言えない最低の気分の中で覚醒する。
「あー、まだ寝ぼけてる?仕方ないなぁ」
数十秒経ってもはっきりとした意識を見せない女児に、苛立った事もなく麗奈はソレを使用する。
「痛ッ!! ―――何ッ!?」
痛みにより覚醒した女児を麗奈は微笑みを浮かべながら見つめると、手に握ったソレら二つを女児に見せる。
「ほら、これだよこれ。見える?」
初めて見る道具に困惑している、というよりも意図を図りかねている女児は困惑した表情で不安げに顎を引いている。
「―――?」
「おろ、見たことないかな?これはね、張型って道具だよ。まぁ、木製だから重いし、腐るしで、実用性のない粗悪品だし。で、更には適当に造った急造品だからさ、ほら、この辺りとかささくれだってるでしょ?」
麗奈は困惑した表情で不安げにする女児に、麗奈はソレを女児に近付けて表面を指先で示して見せる。
「あー、まだ解んないかな?」
そう確認をする麗奈に、近付けられたソレと麗奈を交互に見遣りながら更に困惑と恐怖を浮かべる女児。
「ぇ? ―――え?」
無理解を示す女児に麗奈は心底から優しげに見える表情で困った笑みを浮かべる。
「今から、これをキミに差し込む。そして、キミの中身を直接に削る。解ったね」
先程とは違い、断定口調で理解を求める言葉ではないソレを発する麗奈は目からはハイライトと軽薄さの一切が消え失せている。
「でも、最初にコレは辛いだろうから、先ずは先に此方でキミの相手をしようと思ってね」
相手の意図を正確とは言えずとも、何か恐ろしい事なのだと想像した女児は恐怖に浸喰されている。
「いやっ、やぁ!! 」
ただ実務的な遊びの有るようで無い行為を開始する麗奈は、順調な行程に笑みを浮かべて優しげに女児に微笑み掛ける。
「大丈夫。素直な女の子は嫌いじゃないんだ。ま、短い付き合いだけれどよろしくね、えーっと………」
何か思い悩む様子を見せる麗奈は、合点が行った表情で何かを思い出すと、女児に頬を近付けて粘着質な声色で、耳元に囁くように質問する。
「ああ、名前を聞いていなかったね。私は四条 香住、四つの条約に香りが住まうで、四条 香住だよ、よろしくね」
まるで女友達が仲良さげに在るように、気さくに友好的な言葉を決して友好的ではない声色で繰り出す麗奈は、直感的に逆らうべきではない威圧を伴っている。
「ぁ、椎名、椎名 万智、です、よ、よろしく、お願いします」
威圧に気圧されて名前を告げ、よろしくなどと言ってしまう女児は、あまりの妖しき恐怖に自身が何をしているのかさえも理解していない表情で、困惑は更に極まっている。
―――ふふふ、『お願いします』ねぇ、怯えちゃって、可愛いねぇ。
「じゃ、早速だけれど始めよっか」
相手に信頼して欲しいと、そういう印象を与えるような笑み――子供に接する医者や、教師のようなそれ――を浮かべて、麗奈は無理解を示し続ける女児にナニカの開始を告げる。
「さて、最初にアドバイス。裏切るのなら最初から、仲間に義を通すなら最期まで、自分の意思は曲げないでね。始めに"覚悟"したことを曲げる時程に辛いものはないよ。だから、お姉さんからアドバイス。"絶対に口を割るな"、だよ。解ったね。じゃ、まず一本目から」
麗奈は、初めて本当に心からの言葉を女児に送る。
しかし、女児は全く理解できていない表情でいるのみだ。
「大丈夫。私は玄人じゃないけど、大得意だからさ。お仲間の一人に"医療士官"いたでしょ?あの女の人に頼めば後遺症が残らないようにしてあげるから」
そう言うと、麗奈は手に握る木杭を女児の柔らかな腕の皮を貫通するように雑木に打ち付け始めた。
「それ、いーち」
女児は大声で言葉にもならない悲鳴を上げている。
甲高い悲鳴は天を衝かんばかりだ。
「じゃ、始めに質問。通信に使用している周波数帯はどの程度かな? 万智ちゃん? 」
麗奈は親しげに先ほど教えられた名前を呼ぶ。
女児は、あっさりと口を割った。
「成る程。じゃ、次。にーぃ、っと」
麗奈は、木杭を更に打ち込む。
そして、微笑みを絶やす事なく万智に向け続けながら質問を続けていく。
「兵器の取り扱いに関する業務規定を答えてね」
しかし、万智は軍人である。
特殊な技能でもって特選郡にすら配置される人材が、拷問にて重要情報を積極的に漏らすわけもない。
「で、出来ません!それだけは、言えません」
「うーん。教えてくれない?そっか~!」
―――と、同時に。
麗奈は、木杭を逆手に掴み、ジリジリと持ち上げ始めたのだ。
木杭の頭が上がる度に隙間が開き、生ぬるい血液がとくりとくりと溢れだし始めた。
ささくれだっている木杭が、肉を削りながらジリジリと抜かれていく。
「早く教えてくれないと全部抜いちゃうよー」
「ああああああ!!ち!ちぃ!!血がッ!!」
「大丈夫、大丈夫。指先に穴が空いた程度の出血なら死にはしないって。私も、十一の時にやったから安心してね!―――まぁ、一度抜いた杭をまた刺して出血を止めてやる程私は優しくないけどね」
先程までの甘い顔を捨て去り、ゾッとする引き裂くような笑顔を浮かべた麗奈は更に杭を打ち付けた。
「無理!死んじゃう!お願いします、何でもします」
まるで会話をしていない二人は何処までも奇怪だ。
「お願いしちゃって、可愛いねぇ~、キミは可愛いよ」
また、優しく微笑む麗奈。
「で・も」
―――女児が一筋の希望を見出だしたその瞬間。
怒りを発露させ、瞳孔は開き、眉はつり上がり威圧を越えた殺気を女児へと向ける。
「なんで私がキミのお願いを聞かなくちゃならならいのかな?調子に乗ってるよね?私のこと嘗めてるよね?いけないなぁ悪い子はお仕置きしなきゃぁ、ね」
「ぐーり、ぐーり。ハハッ、どうかな、指先で異物が踊る感覚は!」
女児の顔を間近で覗き込み、目を合わせ続ける麗奈は嗤う。嗤っている。
「次からは、"お願い"じゃなくて、"乞う"んだよ?解ったね」
またもや断定口調で言い聞かせるように女児へと理不尽を告げる麗奈。
「さぁ、続けようか」
女児は、絶望を浮かべている。
―――麗奈が女児を気絶させるなどという下手を打たない限り、逃れられない地獄に女児は囚われてしまった。
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次回更新は12/22(水)です。
次は椎名 万智ちゃん視点です。
お楽しみに、ふふっ。




