お上りさんの珍道中~③~
今回は三連続更新最終日!
明日からは通常ローテーションに戻ります。
しかしながら、更新頻度はボチボチでも完結までは確りとやり遂げる心持ちです!
応援宜しく!
それでは、どうぞ!
「さぁ。その質問の意図は不明だが『もしその場に君達も見て来た怪物が闊歩していたなら此処では何人が犠牲になったか』という質問だとしよう。もし仮に、私が想定し得る現状最悪の脅威を実際に対処する状況等を当て嵌めるのならば約二十三人の部隊員が犠牲となる試算だが、其がどうかしたかね」
多少、落ち着き払った声で開き直るが如く仕留め損なった事を肯定するとも取れる発言。
「端から言うぞ。無能め!貴様等、嘗め腐っていたな。私の考えではそんなものでは済ま無い被害だ」
麗奈は批難する。この"もう一つ"は、"戦車でも勝てぬ怪物"は、御前達の幾人かを殺した。
そして、当たり前に知っていた筈だ。"怪物"が迫っている事を。
戦車を引っ張り出してきたことはまあ解るだろう。
未知の生物兵器らしきものがクリアに出現したのだから戦車の一騎は派遣せざるを得ないかもしれない。
だが、二十人以上の人員を導入する程か。
民間人も多く街で暮らしているのに、それらを守るべく責務を負った兵士たちがわざわざこんな山奥に。
……有り得ない。
弟子たちは守るべきもののためにこそ命を懸けるのだ。
その守るべき命を見捨ててまでここに来た理由は唯一つしかない。
――すなわち守るべきものを守るため。
"此処に居着く何か"を捨て置けばより多くの犠牲者が出ると考え兵士たちは此処へ派遣された筈だ。
「……素人の君が何を思うかは知らないが、言い掛りは止してくれたまえよ」
「……時にオキムラソウジ、殿。昔の人間はとある兵器を造り出したそうだよ。何でも、動物に操縦させるミサイルらしいね。鶏を積んでいたとか」
「ほう、興味深い話だね。それで、質問は以上かね」
少し不機嫌そうな現場指揮官の声が目前に滞空する指向性マイクの向こう側より聞こえる。
同時に暗く澱んだ向こう側の空気も伝わり来る。
そこで落ち着きを少し取り戻した麗奈はもう一つの質問をする。
「いいや、もう一つあるよ。
――何れだけの熱量が奪われたのかな」
此は、熱量という単語から幾つかの意味に捉える事が出来るが話の流れからするに麗奈の意図した意味としては即ち、
――何れだけの火薬類が紛失したのか。
此に尽きるだろう。
「それは答える事が出来ない。既に質疑応答は終った」
「……言い方を変えても無駄だね、これ以上は」
「その通り。……ああ、そうそう。実は配給されている物資だけではカロリーが不足していてね。兵士の装備品には必需品なのだがね。君が発見したという村落から提供を受けることは可能かな、ウォンド殿」
此には二重の意味がある。
一つ、兵士にとっての必需品であること。
人間にとっての必需品は生活必需品だが、兵士にとっての必需品とは幾つかあるだろう。
その中でもカロリーという単位から考えられるのは食糧か或はエネルギー。現場指揮官は、暗に火薬を持ち込んだ事を明かしつつ表向きの相談として食糧の提供の提案を行っているのだ。
勿論、表向きとはいえ建前ではないかもしれないが。
「……成る程。いえ、流石に不足分を補える程のパイプラインではありませんが……そうですね、人員を数名貸し出して頂ける……いえ、失礼。言い間違えました。派遣為されるのでしたら耕作地は余っているとだけ申し上げます」
――あくまでも、今の話は食糧の提供だよね。
「そうか、ならば任務規定に対象の生活環境の保全業務とサンプルの持帰りを追加する」
――目的も不明、手段も不明。だが、何かしらやる気のある少女だ。気に留めておくに越した事は無いだろうな。さて、時間稼ぎは終り。隊員達は良くやり遂げてくれた。此で……
――なんて、考えたりしているのだろうなぁ。
麗奈は、つまらなそうな眼でじとりとした眼差しを目の前に滞空する無人機、その主へと向けた。
「あ、そうだ。伝え忘れてたけど、あれらには私の知識の一部が与えてある。あれらを接収するには先ずは初めに私からプライバシー侵害について許可を得てね。あと、現時点からあれらの 一切における権利を主張する。具体的には所有権をね」
――む、何だ。唐突に話が変わっている。……何か嫌な予感がする。
「良いのかね、確かにそれならば遺棄には何ら抵触し無いのだから法律的に罪に問われることはおそらくないだろう。が、もし仮にそれが既存の生命体で所有者がいた場合や仮に既存の生命体だとしてその責任は君が負う事になるぞ」
現場指揮官は僅かに驚いた様子を見せ、正気を確かめる様に問い掛ける。
「構わないよ」
麗奈は即答した。一見すればなにも考えて等いないかの様に。
「――解らんな、なぜ益も無いだろうにそれらを庇うのかね、ウォンド殿。失礼ながら貴殿は底抜けた御人好しには見えないが、何か理由がお在りかな」
現場指揮官の言葉に、麗奈は可笑しそうに薄ら笑いを浮かべる。しかし、その口元だけは引き裂けて――
「理由も何も、至極個人的な誓約ですよ。私は今は目的がある身の上なので、其を果たす為に行動する。其だけの事ですから、お気に為さらずとも良いですよ。実際、気にしても意義の無い事ですから」
――まるで、悪魔かなにかの如く。
「貴殿の言葉に嘘は無い様に思う。が、私が学んだ限りは貴殿はどうやら信用できない人間と判断せざるを得ないらしいですな」
「どうとでも。但し、私が手段も目的も選ばない事態にはさせてくれないで欲しいものですがね」
その振るわれた指先には、小さな羽虫の形を取る小型のロボットが摘ままれていた。
「……ッ!……ンッ、御体を大切に、とだけ申し上げます」
そして、ただ唖然と見つめる一人と一匹、そして不穏な気配漂う一人と一機の無人機が山道の只中で立ち竦んでいた。
――唯一人を除いて唯一人も笑わずに。
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次回更新は三日後の(金)を予定しております。




