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1ミリも嬉しくない好意 1

「ったく何なんだよ……」


 結局あの後5時間くらいロブスターに纏わりつかれてたが、思い出したのかやっとかなめがロープを降ろしてくれて何とか解放された。

 今は身体を拭いて香水をつけてるけど、あの時は自分の体から発せられる悪臭が信じられなかった。かなめもかなめで汗臭かったけど、真顔で着替えろと服を投げつけられた。

 そして、僕は今1人でリビングで寝ている。

 一緒に缶詰やら野菜やらを適当に煮たごった煮を食ってる時に言ってたが、何でも久々に女子水入らずでガールズトークするんだとか何とか。

 僕が緊縛放置されてる時に2人は打ち解けたらしい。

 アイツの話って8割悪口残る2割は愚にもつかない自分語りのイメージだけど星子さんがキレないか心配だ。おまけに寝相あんま良くないし。

 しかもアイツさっき、せーはこれからあのザリガニと付き合うんでしょ? お似合いだね末長くお幸せにとか笑いを堪えながら言ってきた。真面目に殴ろうか迷ったぞ。

 着てる服全部僕の借り物のくせに偉そうによぉ。

 アイツ年下の女の子が来たからって調子乗りやがって。考えたら一度は形だけとはいえアイツと結婚したけど、多分もし本当に入籍したとしてもヤツとは長続きせず離婚すると思う。

 だって性格真逆だし。謝らんし。すぐ付け上がるし。アイツを家に招き入れてから僕の器のデカさが改めて分かった。普通ならとっくに焼き殺している。

 もし仮にこの騒ぎが収まって全てが元通りになっても、かなめとは交流は続けるだろうけど結婚はしない。するなら愛人とかだな。

 アイツの長所見た目だけだろ。たまにしおらしくなるけどもう騙されないぞ。


「寝れない…」


 しかし、ずっと夜中はかなめの髪が口に入るくらい密着して寝てたからどうも中々寝付けない。

 外の奴らの呻き声は特に気にならないが、やはりあったかい人肌に包まれる安心感は何物にも変え難い。今頃は星子さんがかなめの胸に顔を埋めて寝てるんだろうか。

 そういえば何故か寝袋取られたな。普通今僕が寝てる布団持ってくだろバカなのか。

 僕が近場にあった隣家からもらってきた子犬のぬいぐるみを抱きしめ、かなめの白い裸体を想像していると背後から足音が近づいてくるのに気づいた。

 かなめの足音だった。ずっと外に出ないで一緒にいるんだから足音だけでかなめって分かる。

 何だろう? 星子さんが寝てやっぱり僕と添い寝したかったのか? しょうがないなぁもう。特別だぞ?

 かなめは毛布を捲って僕の前の方に入ってくると、ごろりと背中を向けて横になった。

 その時に僕の腕が下敷きになったので、無理矢理引き抜くのもアレなのでとりあえず胸を鷲掴みにした。


 ん?


 何か感触が違う。かなめおっぱい縮んだ? 巨乳はコイツ唯一のレゾン・デートルじゃん。貧乳のかなめとかダニ以下だぞ。変だな? 気のせいかなと思って何度も揉みしだいてる内に分かった。


「あっ…」


 あ、これ星子さんか。足音同じだから分からなかった。失敬失敬。

 僕はそれでも小ぶりな彼女の胸をジャージ越しに揉み続けた。やがて、少し硬いからブラジャーをつけてるのが分かった。


「あの、気づいてますよね何でやめないんですか?」


「いや、どうせ肘打ちとか飛んでくるならその瞬間まで揉んでる方が聡いやり方かなと」


「人の乳房いきなり掴むのに聡いも賢いもないでしょ。何もしないから離してください手を」


 そう言われたら続けるわけにもいかないから僕は渋々手を離した。


「まぁ別にいいんですけどね。私、この家に来るまでにいろんな避難所を渡り歩いてきましたけど食糧を得る対価や取り入るためにそこの有力者に散々おもちゃみたいに弄ばれたんで、今更…」


「うぐっ……」


 今、確かに脳がミシッて軋む音がした。鈍痛に交えて脳が破壊される実感があった。寝取られはただでさえ嫌いなのに仮にも婚約者がそれは堪える。


「いや嘘ですけどね。奇妙なくらい誰にも会わなかったですよ」


「そ、そうか。よかった」


 脳が回復していく。


「で、どうしたんですかいきなり?」


「別に敬語もさん付けもいらないって言いませんでした? あのかなめって人、悪い人じゃないのは分かるんですけどベタベタ触ってくるし寝言と歯軋りがひどくて寝れないんですよ」


「ちょっとわかる。僕はもう慣れたけど」


「さっき私に洗剤飲ませた時の反応を思い出して笑った時は本気で殴りたくなりました」


「まぁまぁ」


 なんか途中で止めないと延々と言ってそうだから止めた。許してやってくれ。彼女はサイコパスなんだ。


「ところでどうしたの? 君なら1人で寝れそうだけど」


「うーん……」


 今日も相変わらず外はうるさい。ただ戯言を言うだけならまだしも叫び散らすヤツまでいると来てる。この声を毎晩聞いているのが僕が外に出ようとしない理由かもしれない。

 星子さんは身体をくねらせて僕の方に顔を向けると、ぴったりと僕に身体をくっつけた。まずいな。流石に高校生とは同意があっても法律違反だぞ。


「いや、かなめさんも寝ましたし誠一郎さんには言わなきゃと思いまして。私がどうしてあなたとの結婚を嫌がったのかを」

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