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道中は甘味で地獄に

腐女子(ディア)達が腐った本を発行して1週間が経った。


その間に冒険者達の解体の腕も上がったのか肉や素材を無駄にする事も少なくなり、騎士団員達もそれなりに鍛えられていた。


また食料に関しても関わり始め……定期的に森へ赴き使えそうな植物を畑で栽培出来ないかと試したり、食べられる動物やモンスターを狩っては腕を奮っていた。


そんな時、アルカに名指しの依頼が入った。


「ふむふむ……【魔族の地の近くに住むオーク達をエイボンまで護衛】ねぇ」


依頼主はヘレナ……魔王の傍に居た少女がそう呼ばれていたのは覚えていた。


「オークってエルフや女騎士を孕ませるのが生き甲斐のモンスターだと思ってたんだけど……」


「それ誰から聞いたの?オークは人間と魔族の間に生まれ易いハーフの代表格よ……そこの騎士団にも何人か居るでしょ?」


当然ながらディアの知識はアニメやゲーム等の受け売りである。


そしてどうやらこの世界だとオークは魔物という訳ではないらしい。


魔王軍に居たティーラが言うんだから間違いないだろう。


「魔族の血が流れているせいで同類と思っている奴が居るのは確かだがな……因みに冒険者にもハーフが何人か居るぞ」


そういえば猫耳やら犬耳やらを生やしていたり、肌が緑だったり紫だったりする騎士や冒険者を何人か見た様な気がしていたアルカだったが……最初はアクセサリーか何かだと思っていたのは黙っておいた。


「それで、指定の場所はここから徒歩で3日の距離だがどうする?」


「受けるわ、報酬もいいし……魔王の依頼となれば断る訳にもいかないでしょ?」


「まあ、断ったら怒った魔王が大軍を率いてここへ攻め混んで来る可能性はあるよね……」


「全く否定出来ないのが何とも言えないわ……」


せめてそこだけは否定して欲しかった。


「それでお願いなんだけど……流石にアタシ達だけじゃ手が足りないと思うから何人か手伝って欲しいのよ」


「あ、それなら……メルさんとメイさんにお願い出来ないかな?」


「ああ、その2人なら手が空いてるから問題ない」


同じ依頼を受けるなら信頼が出来る、見知った人物が居た方がいいだろうとアルカとティーラも賛成し……その後は顔合わせを済ませて必要な物を揃え出発した。




そして半日後……最初の夜営の時だった。


メルとメイが作った料理にアルカがキレた。


「メルとメイだったわね?貴女達は明日から料理を覚えて貰うわよ」


「えぇ……別に食べ物には困ってないんだけど」


「うん……ちゃんと美味しく作れた自信はある」


メルとメイが作った食事は蕎麦粉の様な物を捏ねて、細く切って乾燥させた……乾麺らしき物を茹でて、摘みたての野草を刻んで炒めた物に瓶詰めにされたソースを加えて絡めた……一見ハーブ入りの茶色いカルボナーラに見える物。


確かに麺の茹で加減は良かった……食感はスパゲティと蕎麦の中間で香りはまんま蕎麦だったが、そういう料理だと思えばアリに思えた。


野草もコッソリ【鑑定】したが毒はなく、むしろ疲労回復の効果もあったしそれ自体の味も良かった。


手際も見事で料理が上手いのは確かだった。


だが……その全ては瓶詰めのソースで台無しになった。


「あたしの舌が確かならこのソースはミルクをベースに……刻んだニンニク、セロリ、ショウガ、オニオン……卵白や大豆も入ってるわね、それを刻んで炒めて砂糖と塩で味付けして煮詰めて、シナモンで香り付けをして更に小麦粉でトロミも加えてあるわ」


「凄い……正解、今回のは砂糖をわざと焦がして香りを出してる」


「料理に絡めていいし、そのまま飲んでも美味しい、私達の自信作よ」


実際は【鑑定】で調べた結果である……というのも直接口にするのは遠慮したかったから。


解りやすく言えばホワイトソースに刻んで炒めた香味野菜を入れて、プロテインの素材……もとい、たんぱく質を加えた物。


材料だけを見れば、夜営する機会の多い冒険者の携帯食としては優秀かもしれない。


しかし……


「砂糖の量が多過ぎるのよ!これ、明らかにミルクより多く入れてるでしょ!」


メルとメイは……超が付く程の甘党だった。


先程の料理も焦げた砂糖とミルクが混ざって、溶けたキャラメルの様になっていて、それが必要以上に麺に絡んでいた。


肝心の味はまるで茹でた蕎麦にプリンとアイスクリームを絡めて食べている様な、胸焼けを起こす程の強烈な甘味が口中を支配して……食べ終わった今も甘ったるい後味と頭痛、吐き気に襲われている。


また材料に入っているシナモンが問題で、例えるならアロマオイルの様に強烈な香りを主張して蕎麦の香りと大喧嘩していたのもキツかった……恐らく頭痛の原因はこれだろう。


付け加えればショウガの刺激も甘味を引き立てる要因となっている。


確かにこれをスイーツに、ほんの少量を使うならば美味しく頂ける……かもしれない。


だが主食に……ましてや香りが売りの蕎麦に使いたい物では断じてない。


直接飲むなんてもってのほかだろう、あっという間に糖尿病になってしまう。


「とにかく、この依頼の間だけでもアタシに従って貰うわよ」


「「はぁい……」」


なお、ディアは牛乳アレルギーと言って別の物を食べていたが……今思えば2人の甘党ぶりを知っていたんじゃないかと疑わざるを得ない。


ティーラは甘い物が苦手だったらしく、1口食べただけで気を失っていた。




2日目……昼に早くも指導が始まった。


「メイ、砂糖はその100分の1で充分よ!」


「は、はい!」


「メル、こっそりニンジンを隠すんじゃあないわよ!」


「だってニンジンは美味しくないもん!」


アルカは昼にポトフを作ると言っていた……


材料はタマネギとニンジン、ジャガイモに道中に仕留めたニワトリ(?)のモモ肉。


?が付いているのは羽毛が真っ赤で空を飛んでいたからである。


アルカの料理は期待したいが砂糖が100分の1とか不穏な言葉に不安が募っていた……


ポトフ自体は決して難しくない……皮を剥いた野菜を丸ごと、または半分か4等分に切って肉と一緒に水から煮込むだけだ。


味付けも塩と少量の砂糖、好みで香辛料を加えるだけでいい。


肉を使わない場合はコンソメで煮れば誰でも美味しく作れる(ただし時間と手間は掛かる)。


「うん、いい感じね……そしたらこの包みを取り出してっと」


「アルカさん、その包みは?」


「これ?剥いた野菜の皮よ……出汁袋はないから代わりに綺麗な布で包んで煮たの……こうするといいダシが出てとっても美味しくなるのよ」


どうやらアルカはなるべく無駄を出さない主義らしい。


もし女性に生まれていたらとても良い奥さんになっていた事だろう。


だが悲しいかな……アルカはオカマである。




そして出来上がったポトフは普通に美味しかった。


最もメルとメイは自分の分を味見した後で砂糖を追加していたが……鍋ごと甘くされるよりはいいだろうと思って黙っておいた。

捕捉:メルが姉でメイが妹

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