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魔王は威圧的でフレンドリーに

エイボンの独立宣言が大陸中に知れ渡った翌日……


仮設の宿で一夜を明かしたアルカとディア、ティーラは各施設の責任者達と対面する事になった。


「冒険者ギルド、エイボン支部の責任者……サスラだ」


「商人組合、エイボン支部の支店長……ウボだ」


サスラ、ウボは共に普通の……中年の男性だった。


サスラはマッチョとは言えないまでもそれなりに鍛えている印象、ウボは運動不足からかメタボ気味な腹が特徴的である。


「で、俺は騎士団の団長……ティナだ」


この町で最初に声を掛けてくれた兵士……話し合いの席だからか、鎧は着ておらずドレスに仮面と兜という奇妙な出で立ち。


3人共、まさか団長……しかも女性だったとは思っていなかった。


そして兜を仮面を外し……出てきたのは褐色の肌と長い耳、銀色の髪。


「貴方、ダークエルフだったのね」


「……正確にはダークエルフと人間のハーフだ、といっても両親は俺を生んですぐに亡くなって、騎士だった爺ちゃんに育てられたんだけどな」


ティナをいい男だと勘違いしていたアルカだったが特に落胆してはいなかった。


ティーラの魅了に掛かっていなかった事から察していた様だ。




「まずは……アタシの勝手で皆さんを巻き込んだ事をお詫びするわ」


アルカは深々と頭を下げる……続いてディアも下げた。


「冒険者を代表して言わせて貰うが、気にしないで欲しい……君達が居なければ今頃我々は全滅していただろう、むしろ感謝している」


「商人を代表して言わせて貰うが、むしろ良い機会だった……このエイボンは王都に近いという理由で、住民が重い税を強いられていたからね」


「騎士団も感謝してるよ……ここは王都から1番近い前線で、団員は全員が亜人や俺みたいなハーフだ、差別で編隊したクソッタレな王よりあんた達みたいな差別をしない奴等に着いて行きたいしな」


2人は頭を上げて席に着く。


次にティーラが頭を下げようとしたがそれは静止された。


「私は魔王の命でここを攻めた……貴方達に殺されても文句は言えないわ」


「だが君は我々を殺しはしなかった」


「連中が怪我をしたのも未熟だったからだ、あんたに恨みはないさ」


アルカはいざとなれば身体を張って止めるつもりだったが、それは杞憂に終わった様だ。




「それでアルカとディアだったね……この町でカフェを開く、と聞いたのだが」


「ええ、定住出来る家と……お金を稼ぐ手段を両立するにはアタシの料理の腕を振るうのが手っ取り早いと思ったのよ」


「この町は食料屋と雑貨屋、後は冒険者ギルドがやってる酒場と宿ぐらいしかないからな……店が増えるのは歓迎するが資金はあるのか?」


とりあえず強盗から奪ったコインと金目の物をテーブルに並べ、森で採集した薬草に動物の皮や角を出した。


「ふむ、中々良い状態のラビの毛皮に綺麗な角、それにポーション作りに欠かせないシナモンの葉か」


「うむ、しかしここにある全てを換金しても……それなりに値引きした空き家を買うのが精々といった所だな」


少なくともこの町では野宿をする必要がなくなった様で安心した。


「とりあえず空き家は買わせて頂きたいわね……いつまでも兵士達の寝床を借りるのは悪いもの」


「暫くは他の仕事を探さないとですね……」


「それなんだが、冒険者に解体を教える気はないかね?」


「何なら商人見習いでもいいぞ」


詳しく聞いてみたら今この町に居る冒険者は動物やモンスターの解体が下手くそで、毛皮はおろか肉も大部分を無駄にしているらしい。


更に大半の住民が戦争が始まる前に逃げ出してしまったせいで殆どの店が空き家となってしまっていた。


つまり商品は手配するから売り子をして欲しいという事だろうと推察出来た。


「君達は恩人だからな、給金は弾ませて貰うよ」


「そうねぇ……ならアタシが冒険者に解体を教えて、ディアちゃんは商人見習いでいいかしら?」


「まあ、他の選択肢はないですよね……あたしは解体出来ないし」


「ではアルカは……そうだな、テイマーとしてギルドに登録しよう」


冒険者の中には魔族に家族を殺された者も居る……


その中にティーラを敵視する者が居ないとは限らない、だからアルカがテイムしたという理由を付ける事で緩和するのが狙いだった。


「そういう訳でティーラはなるべくアルカの側に居る様に」


「解ったわ」


気のせいかティーラの頬が赤く染まっている様に見えた。


「それとついでで構わないんだが……あんたのその見事な筋肉から判断するが、効率がいい鍛え方なんて知ってたりするか?」


「ええ、個人差は出るけれど……2ヶ月もあればそれなりにはなれる筈よ」


「なら暇な時だけでいい、うちの兵士を鍛えてやってくれないか?」


「解ったわ」


その後も給金について、何時から始めればいいのか、何処の空き家を買えるのか……細かく話し合い決めていった。




「ふむ、一先ずはこれぐらいか」


「ではこの額で買える空き家を紹介しよう」


「……ちょっと待って貰えるかな?」


全員が入り口に向かおうとした瞬間、反対側の窓から声がした。


一斉に振り返ってみればそこには見慣れぬ少年と少女の2人が居た……


更に2人を見たティーラは怯え……震えていた。


「……何時からそこに居た?」


「そこのお姉さんが仮面を脱いだ辺りだったかな?」


割と最初の方から居た……だが誰も気付く事が出来なかった。


アルカは底知れぬ恐怖を感じたのか、初めて他人に【鑑定】を発動させる。


しかし見れる筈のステータスは一切出なかった。


「成程、君とそこの女の子は異界から来たんだ……いいよ、それなら特別に見せてあげるよ」




【魔王 ヨグ・トース】


13歳


STR:18×18


CON:18+18


POW:18+18+5


DEX:18+18


APP:18


SIZ:9


INT:18+18+10


EDU:18



B:ナイショ


W:ナイショ


H:ナイショ




【スキル】


鑑定


他は秘密だよ(はぁと)



「嘘……でしょ、こんなの、人間辞めてるとしか思えないわ」


魔王という事実にも驚いたが何よりステータスに驚愕した。


特に攻撃力にあたるSTR……ディアから聞いた話だと最大値は18の筈、だがそこから更に18倍とか、たちの悪い冗談としか思えない。


といってもディアの知識はあくまでもゲームやアニメ等を基準とした物、この世界でそれが当てはまるとは限らない。


だが少なくともこんなステータスをした人間は居ない、そう思った。


「魔王だからね、これぐらいでないと部下は着いて来てくれないんだ」


「ねえティーラ……あの子が本当に魔王なの?」


「そう……あの方が魔王様よ」


どうやら本物の魔王らしい。


確かにそれならティーラが怯えるのも理解が出来た。


「そんなに怯えないでよ、ティーラ……僕は君を処罰する為に来たんじゃないから」


「……………………え?」


「君は今までよく尽くしてくれたし、この後次第だけどまた協力を仰ぎたい人材だ……幹部は揃って脳筋だし、兵は殆どが理性を持っていない、だから頭脳労働が出来る人はとても貴重なんだ」


魔王から出た愚痴……まだ13歳にして相当の苦労が伺えた。


「君がティーラを負かせた人間だね……僕がここに来たのは君に聞きたい事があったからだよ」


「アタシに?」


「君はこのエイボンを中立にすると言った……その言葉に嘘は?」


「ないわ、アタシ自身争いは嫌いだし」


魔王から唐突に魔力の圧力が掛かる……


部屋に居た者達はティーラの様に震える中、アルカとディアは平然としている。


最もアルカは背中に大量の汗が流れていた……かなり無茶をしているらしい。


なお、ディアはよく解らないといった表情でポカーンとしている……ある意味1番の大物だった。


「君達から魔族を襲わない、と誓えるかい?」


「ソッチから手を出さない限りはね……当然喧嘩を売られたら買わせて貰うわよ」


「それと同じ言葉を、人間の王に向かって言える?」


「勿論よ」


「……魔族にも戦う力を持たない者が居る、そんな彼等を住民として受け入れられる?」


「それはアタシの一存では決められないのだけれど……」


アルカと魔王が各施設の責任者達を見る。


「ぼ、冒険者ギルドは俺から説得をする……異論は封殺してみせる」


「商人組合も何とかする、後は……」


「騎士団なら心配はいらない、全員が亜人とハーフだしな……迫害される気持ちは解っている筈だ」




「それじゃヘレナ、例の物を」


「ここに」


少女が出したのは魔物の皮に魔王自身の血で字を書いた契約書。


内容は【この地が魔族の難民を受け入れ、魔族に対して敵対の意志がないならば、魔王軍は一切の手出しをしない】だった。


そこにサスラ、ウボ、ティナ、アルカが血判を押し……契約が成立した。


「それじゃ1週間後に……およそ30名の魔族がここに来るから宜しくね」


「ええ、任せて頂戴」




その帰り道……


「ヨグ、本当に契約なんかして良かったの?それにエイボンに向かっている魔族って淫魔達の事でしょ?」


「ああ、彼……彼女?まあどっちでもいいか……あのアルカって人はともかくもう1人の方を敵に回したくなかった、だから敵対しないで済む最善の方法を取ったんだ」


「確かディアと呼ばれてた……そんなに強いの?」


「ハッキリ言って弱いよ、ヘレナでも片手で倒せるぐらいにはね」


訳が解らなかった……


そもそも人間の殲滅を掲げている魔王が人間と契約する事も理解出来ないし、弱いと解っている相手を何故生かしておくのか。


「多分あの子自身も知らないんだろうけど……あの子が病気や寿命以外で死ぬと同時に、周囲を焼き尽くす呪いが掛かっていた」


「呪い……まさか人間にそんな事が?」


「いや、恐らくは転移の際に……」


そこまで言って……言葉を切った。


「ヨグ?」


「……何でもない、急ぐ必要もないしゆっくり戻ろうか」


「……貴方は一応魔族を束ねる王ですからね、時間を掛けたらその分仕事が溜まりますよ」


「はぁい、って僕は一応じゃなくてちゃんとした魔王なんだけど?」


魔王ヨグ・トース……


彼がディアから何を見たのか……それはディアにすら解らない。

捕捉:TRPGにおいてSTR18は某史上最強の生物並の筋肉を身に付けておられますが魔王さんは細いです

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