それぞれの想定外
(ユーキside)
「とうしゃん、まだでしゅか?」
「ああ、まだだな」
「とうしゃん、まだ?」
「ちょっと遅れてるみたいだな」
「とうしゃん………すうすう」
「あ~あ寝ちゃったか。ディル達まで寝てるのか?」
「仕方ないわ。昨日目が冴えちゃって、寝たの夜中だったもの」
僕が起きたのお昼ちょっと前でした。起きてすぐお父さんにハルトくん来た? って聞いたら、まだハルト君着いてないって。お父さん朝ご飯食べたあとくらいに着くって言ったのに。どうしたのかな?
僕ね準備ばっちりです。うさぎさんのお洋服みんなで着て、うさぎさんのお耳のところに大きなおリボン付けて貰いました。マシロとくろにゃんにもうさぎさんのお耳付けたの。それに遊びのお部屋に、プレゼント綺麗に並べたよ。
せっかくみんなでお昼のご飯食べるって言ってたのに、ハルト君来ないから、僕達だけで食べました。お昼食べてさっきまで僕達寝てたから元気いっぱいです。ハルト君達来るまで何して遊ぼうかな。
みんなでお外見てたら、ハロルド達がお庭に来ました。それに騎士さん達も集まって来てます。すぐにみんなでハロルド達の所に行きました。
「ハロルド、なにちてるでしゅか?」
「ん? ああ、ユーキか。これ見てみるか?」
ハロルドは反対のお庭に僕達連れて行ってくれます。そしたらそこに、大きな大きなくまさん魔獣が倒れてました。あのね街の壁の近くに、突然飛んで来たんだって。だからどうして飛んで来たかこれから調べに行くんだって。街の中に飛んできたら誰かお怪我しちゃうかも。だから今ハロルド達調べに行く準備してるんだって。
僕がくまさん魔獣の方見たら、エシェットがくまさん魔獣のことじぃ~って見つめてます。シルフィーもクンクン匂い嗅いで、それからテシテシ魔獣のこと叩きました。
「なんかエシェットと同じ匂い」
「そうだなシルフィー。我の匂いと似ているな。おい、これはどっちの方角から飛んできたか分かるか?」
「あ、ああ、一応目撃者の話だと…」
エシェットとハロルドがお話し始めます。くまさん魔獣なのにエシェットと同じ匂いするの? 僕魔獣に近づいてクンクン匂い嗅いでみます。………変な匂い。エシェットこんな匂いしないよ。エシェットはねぇ~、うんとねお菓子の匂いがするの。
「シルフィー、おなじにおい、しないでしゅ」
「主、匂いにもいろいろ種類があるのだ。お菓子の匂いもあるし、スープの匂いも、サンドウィッチの匂いもいろいろあるだろう。今エシェット達が嗅いだ匂いは、主達人間には分からない匂いなのだ」
ふ~ん。変なの。なんで匂いがあるのに僕には分かんないのかな?
お話終わったエシェットがスタスタ歩いて来て、くまさん魔獣片手で持ち上げました。それからグルグル回し始めます。お父さんさんが走ってきてエシェットに何するんだって叫びました。
「この匂いは気に食わん。我の縄張りに投げ込むなど、喧嘩を売っているとしか思えん。返してやる。何心配するな大体の距離は分かっている」
そう言って、ぽ~んっ!! ってくまさん魔獣投げました。どんどん離れていくくまさん魔獣。僕達みんなで拍手です。この前魔獣投げるの見てからずっと見てなかったから、とっても嬉しいです。ハルトくん達も居たら良かったのに。
「ふん。清々した」
「清々したって…もし投げた所に誰か居て、怪我でもしたらどうするんだ!」
「あっちの方角には確か森しか無い。おそらく大丈夫だろう」
「おそらくって、はぁ。なんて事を」
「おいルトブル。壁の前に大きな穴が空いているらしい。お前の魔法で埋めてやれ」
僕達マシロに乗って、ルトブルが壁の前の穴元に戻してくれるのも見に行ったよ。穴はすぐにルトブルが直してくれたんだけど、急に穴が空いて、急に直ったから街の人達がびっくりしちゃって、またまたお父さんに怒られてました。
これもハルト君に見せたかったなぁ。ハルト君いつ来るのかな?
(ハルトside)
「何をやってるんだお前は!!」
「何とは何だ? これだけの魔獣が集まっていたのだ。ハルトに何かあったらどうする。こいつらの爪の攻撃は強力だからな」
「その事について文句を言っているんじゃない。何で1匹だけ遠くに飛ばしたのか聞いてるんだ! 飛ばした先に誰か居て怪我でもされたら…下手したら死人が」
朝早く着く予定で、久しぶりの野宿した僕達。て言うか、ディアンがふらふらするから、予定がめちゃくちゃになっちゃって、泊まる街に着かなくて野宿になっちゃったんだけどね。
それでいざ出発しようとしたら、オニキスとディアンがくま魔獣の群れを発見して。僕が危ないからって全部倒してくれたのは良いんだけど…。最後に襲ってきた魔獣をディアンが思いっきり飛ばしちゃったの。遠くに遠くに飛んで行った魔獣。お父さんも言う通り、もし魔獣が落ちた場所に誰か居たら…。
「お前はグレンにいろいろ教わったんじゃなかったのか?」
「はぁ、私もかなり教え込んだつもりでいたのですが…。帰ったらもう1度最初からやり直さなければ」
ブツブツ言いながら、この大量の魔獣の死骸をどうするか相談するお父さん達。そんなお父さん達にディアンが自分が食べるって言ってきました。このくま魔獣美味しいんだって。ディアンがササっと森に隠れるくらいの大きさになって、どんどん魔獣を食べて行きます。ついでにオニキスもね。
お母さんが2人に2匹だけ残しておいてって。この魔獣は僕達人間でも美味しいみたい。けっこう強い魔獣だからなかなか倒せる人いなくて、街だと高く売ってるお肉だから、ユーキ君のお家にお土産にするって。
1匹をライネルさん達が、もう1匹をお父さん達が解体していきます。
きれいに骨と皮だけになったくま魔獣。骨も皮も武器とか防具とかに使えるから、捨てるところ1つもないんだって。
それを運ぶのにどうしようかお父さん達が考えてたら、ディアンが森の中から大きな葉っぱ持ってきてくれて、それに包んで荷馬車に乗せました。
さぁ、今度こそ出発。だいぶ予定が遅れちゃってるから早く進まないとって、お父さんが相変わらずブツブツ言ってた時でした。
「下がれ!!」
ディアンが叫びました。オニキスが僕の洋服の帽子咥えて後ろに飛びます。お父さん達も後ろに下がりました。そして下がってすぐ、僕達の真ん中に何かが凄い勢いで落ちて来ました。
土煙りが上がって、少しの間何が落ちて来たのか確認出来なくて。やっと見えてきたと思ったら、まさかのくま魔獣でした。これってもしかしてディアンが投げたやつ? まさかね…。
ディアンがくま魔獣に近づいて、クンクン匂い嗅いだ途端、くま魔獣を踏み潰しました。何々? 一体何なの? お父さん達も突然のディアンの行動にびっくりしてます。
「どうしたんだ? 今踏み潰した魔獣は、飛んできた方角からも、もしかしてお前が投げた魔獣か?」
「ああ、そうだが…」
「一体何が………」
「ふん。我に喧嘩を売ってくるとは。待っていろ。我の力の方が上だと、すぐに分らせてやる」
小さな声でブツブツ言ってるから、ディアンが何言ってるか分かりません。でもすぐに何か言うのやめたディアン。急にさっさと動き始めました。
「早く行くぞ。遅れているのだろう。ほらハルトそのままオニキスに馬車に乗せてもらえ。さぁ、出発だ!」
「誰のせいで遅れていると…」
押し込まれるように馬車の乗せられた僕達。ディアンがオニキスに乗って前に回って先頭で馬車の先導します。何なのほんと。まぁ、でもこれで少しは早くユーキ君が居る街に着けるかな。こっちでの初めての同じ歳の友達。仲良くなれると良いなぁ。