こねこねクッキー
「こねこね、こねこね。」
「もう少しですよ。頑張ってくださいませユーキ様。」
「はいでしゅ! こねこね、こねこね。」
この前パン作ったでしょう? 今日はねクッキー作るの。僕達の分でしょう、それからお父さん達の分、後お庭綺麗にしてくれるおじいちゃん達でしょう。使用人さんにメイドさんに、それからそれから…。たくさん作らないといけないの。
僕そんなにたくさん作れないって思ってたんだけど、お母さんもアメリアもいい方法があるって。僕でもたくさん作れるんだって。だから今一生懸命クッキー作るための材料こねこねしてます。
ちょっとしてアメリアがつんつんして確認します。
「ちょうど良さそうですね。ではユーキ様、この三角の袋にこれを入れて貰えますか。」
こねこねしたやつ全部で6個出来ました。アメリアが三角の袋にを持ってくれて、僕はその中にこねこねしたやつ入れました。それで袋の入れるところアメリアがゴムで結びました。
「ぜんぶ、はいらなかったでしゅ。」
「大丈夫ですよ。この袋の中身がなくなったらまた入れますからね。ではユーキ様よく見ていてくださいませ。三角の下の所を…。」
アメリアが三角の下の部分を板の上の所に、それから袋をちょっとだけ握ったの。そしたら三角の下の所からこねこねしたやつが出てきたんだ。それで小さなひらべったい丸が出来たの。これたまにおやつに出てくるクッキーと同じ形!
「ふわわクッキーできたでしゅ!」
「ふふ。ユーキちゃんクッキーだけど、まだ食べられないわよ。ちゃんと焼かないといけないわ。さあ、今度はユーキちゃんがやってみて。」
アメリアに袋もらって真似して袋を握ります。ぐにゅっ…。こねこねが出てきました。でも…。
「およ?」
綺麗な丸じゃなくて、変な曲がってる棒みたいになっちゃった。
「ユーキ様握るのはちょっとですよ。ちょっとだけ握ってみて下さい。」
ちょっとだけ、ちょっとだけ…。にぎっ、ぐにゅっ。今度はアメリアよりもっと小さい石ころみたいになっちゃった。う〜ん。難しい。
「流石に加減は難しかったわね。こればっかりは仕方ないわ。ユーキちゃん。好きにやっていいわよ。いろんな形があった方が楽しいでしょう? あんまり大きいのはダメよ。」
僕はどんどんにぎにぎします。おんなじ形のクッキー1つもないんだよ。これ難しいけど面白いね。それでたくさんできたクッキー。こねこねが最後の1個になりました。
僕が袋に入れようとしたら、お母さんが待ってって。それでお母さんがこねこねを棒でくるくるして伸ばしたんだ。ハンカチみたい。それからお母さんがいろいろな小さい穴の空いた輪っか出したの。輪っかは丸じゃなくて変な形何だ。それをこねこねハンカチの上に乗せて上から押してみてって。僕は1つ選んで上に乗せて押してみました。
「そっと上げてみて。」
「しょうっと、しょうっと…。!!」
輪っかあげたらマシロの形になってました。
「他にもあるからどんどん押してみて。これから作るのはユーキちゃん達のよ。ディル達もやってみて。」
みんなでペタペタ押していきます。お花の形が出来たり、星の形にねこさんの形、それからシルフィーの形とドラゴンエシェットとカメさんルトブルでしょう。ディル達やキミル達の形も出来ました。
できたりクッキーの乗ってる板を、どんどんアメリアが焼く所にいれていきます。
「パンよりも早く焼けますよ。今のうちに入れ物の用意をしておきましょう。今日はクッキー入れる可愛い小さな袋をご用意いたしました。クッキーが焼けましたら、3個位ずつ入れて下さいな。リボンは私がいたします。」
「は〜いでしゅう!」
クッキー、小さいからすぐに焼けました。とってもいい匂い。熱いから冷めるの待って袋に3個ずつ入れていきます。たくさんの可愛い袋が出来ました。みんなに渡しに行きます。使用人さんとメイドさんにも渡しに行こうとしたんだけど、今日は休憩してる人少ないから、夜アメリアがみんなに渡して置いてくれるって。
僕達はみんなでお庭でクッキー食べました。とっても美味しかったです。今度は何作ろうかなぁ。プリンとか出来ないかな?
(その日の夜ユーキ就寝後。使用人、メイド休憩室にて)
「良いですか。これは今日ユーキ様が作られたクッキーです。全てユーキ様の手作りクッキーなどそう食べられるものではありません。」
机の上にはクッキーの袋が乗せられている。そして机から少し離れた所で待機する使用人とメイド達。彼らは今日、このクッキーの為だけに働いていたようなものだった。
「ですが、ここにあるクッキーの袋。人数分はありません。そんなに簡単にユーキ様のクッキーが頂けると思いますか。私達には恐れ多いユーキ様の手作りの品。さあ、後は自分達の力で手に入れなさい!」
その言葉と共に、やはりパンと同様、クッキー争奪戦が始まった。アシェルとアメリアはその様子を見ながら、自分達の袋に目を向ける。そしてアシェルとアメリアが目を戻しもう1度袋に目を向けると、袋が1つずつ増えていた。
「まだまだですね。数が少なくなったことに気づかないとは。」
「そうですわ。まったくまだまだ鍛錬が必要ですわね。」
2人は一瞬であの争奪戦が繰り広げられている所から、袋を取ってきたのだった。ニヤリとそれぞれが笑みを浮かべると、争奪戦が繰り広げられる休憩室から退室する。
アメリアは今日と明日でゆっくりとクッキーを味わい、そしてアシェルは…。
「くろにゃん、これを仕舞って置いて下さい。私専用の方はそのまま保存します。先程もらってきた方を食べますので。」
「俺の空間は保存のためにあるんじゃないぞ…。」
「何か言いましたか?」
「いいや。」
ぼそっと言ったくろにゃんにすぐに反応するアシェル。すぐにクッキーをしまうとくろにゃんは部屋を出て、外の小屋に向かった。そこは庭道具がしまってある小屋だが、そこにくろにゃんはある隠しものをしていた。今日もその隠し場所にあるものを置きに行ったのだ。
「そろそろ別の場所を見つけるか。絶対にマシロ達やチビ共に見つからない場所を。」
そこにはたくさんのユーキに似せて作られた、布で出来た小さなユーキ人形がたくさん置かれていた。いつもアシェルの保存に付き合う代わりに、この人形を貰っていたのだ。これはくろにゃんのお気に入りになっていた。
人形をスリスリした後、くろにゃんはユーキの元に戻る。早く次の場所を見つけなければ、ちび軍団に見つかるのは時間の問題なくらい人形は貯まっていた。