9.リリスside
「マキナー殿下。少しよろしいかしら」
私は王妃教育の続きをするために王宮へ行った。そこで偶然、王宮の客室を与えられているマキナー殿下と会った。
「何かな?アレクセイ伯爵令嬢」
ニッコリと笑って話しかけるその姿は多くの令嬢を虜にする。だから危険なのだ。ヴィオラのようにおっとりとしたタイプには。
「最近、私の妹と随分と仲がよろしいみたいですわね」
「それがどうかしたのかな?」
にっこりと笑う彼が何を考えているのか全く分からない。
「妹はあまり男慣れしていないの。だから勘違いさせるような行動は控えて頂けるかしら」
「彼女が困るようなことは何もしていないよ。君の考えは別にして」
これだからモテる男は。
私は出そうになる溜め息を何とか堪えた。目の前にいるのが妹を惑わす気障な男でも相手は隣国の王族。あまり事を荒らげるとルーファスに迷惑をかけてしまう。
「ヴィオラも迷惑しているんです」
私がそう言うとマキナー殿下は目を細め、こちらの真意を見極めようとしてくる。
嫌な視線だ。
「彼女がそう言ったのかな?」
さっきと変わらないはずなのに背筋がゾクリとするような冷ややかさを感じる。
「・・・・そ、そうですわ。分かったら妹にあまり近づかないでくださらない」
「心には留めておくよ」
そう言ってマキナー殿下は私に背を向けて行ってしまった。
終始、何を考えているか分からない男だ。
ああいう男はヴィオラには相応しくない。
ヴィオラは私と違っておっとりしているから私がしっかりと管理して余計な虫がつかないようにしないと。