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「どう思う?」

「私はありだと思う」

「ええ!私はないな。だって、そんな行動力無さそうだし」

「馬鹿ね。だから他人に任せたんじゃない」

自宅謹慎中は家で自主勉強となっている。

実は陛下が気を使ってくださり、一週間学校を休ませてはどうかと父に提案したそうだ。

姉の誘拐に、誘拐犯の疑いがかかり騎士団への連行と何かと疲れているだろうからと。

父が私に自宅謹慎を命じた裏にはそんな事情があった。もちろん、私がそんな話を知るわけがない。

私は父に言われた通りにしているだけ。ついでに。

「お前は姉と違ってできが悪いのだから休んでいる間もかかさず勉強をしろ」

と、父に言われて渡されたのは私にはかなり難しい本だった。

図書室へ行くことは許されているので侍女のミランダを連れて図書室へ向かっていた。その途中、曲がり角ちょうど私たちから死角になるところで侍女たちが話していた。

「でも気持ち分かるな。あーんなできたお姉さん持っちゃったら私、恥ずかしくて生きていけない。コンプレックスまみれで死んじゃうかも」

そう言ってゲラゲラと若い侍女が笑う。

「ヴィオラ様も優秀じゃないわけではないのよね。でも、リリス様と比べるとどうしても劣るのよね。天才と秀才の差は歴然だわ」

茶髪の侍女が作ったような神妙な顔で首肯く。

「まぁね。だから私はヴィオラ様がリリス様を害しても仕方がないとは思うわ。むしろその方が自然」

「っ」

出て行って文句を言おうとするミランダの腕を私は掴んだ。

「ヴィオラ様」

私の気持ちを慮ってか、ミランダは小声で自分を止めた私を咎める。

でも私は静かに首を降って、嫌がるミランダの手を引き、部屋へ戻った。

「どうしてお止めになったんですか?」

「本当のことだもん」

私の言葉にミランダの顔に怒りの表情が刻まれる。

「お姉様は優秀で、私がどんなに頑張っても追い付けない。だから、ララシュ嬢の話を聞いたとき、少し期待した。いなくなればいいのにって思ってる」

「そんなことを思わずに生きている人はいません。みんな、誰かに対して似たような感情を抱きます。重要なのは実行するかしないかです。ヴィオラ様は実行しなかった。それどころかそのことをきちんと報告されています。

私はそんなヴィオラ様を尊敬します」

ミランダは私の手を握ってそう言ってくれた。でも私の心は晴れなかった。

私がそれをしなかったのは怖かったから。

自分のせいで何かが起こることが。犯罪をおかしてしまうことが怖かっただけ。

そこに、姉に対する想いは一切なかった。

でも、私のことを大切に思ってくれるミランダをこれ以上心配させてはいけないと思い、私は笑顔を作った。

「・・・・ありがとう」

でも、上手くできなかったみたい。

ミランダは少しだけ悲しげに微笑んだ。

私のことを心配してくれるミランダに悲しい思いをさせるなんて私はダメだな。

どうしてこんなにも上手くできないんだろう。

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