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私はイリス殿下のエスコートで馬車に乗った。
イリス殿下は私の対面に腰を下ろす。
ふかふかのクッションが用意され、馬車の振動を吸収してくれるので、振動をあまり感じずに座り心地は最高だった。
さすがは王宮の馬車だ。
「イリス殿下、先程は失礼しました」
私が頭を下げるとイリス殿下が苦笑するのが気配でわかった。
「随分と過保護なお姉さんだね」
それが姉に対する皮肉だというのは直ぐに分かった。
「申し訳ありません」
「君が謝ることじゃないよ」
「ですが」
「君とお姉さんのことにはなんの因果性もない」
その言葉と笑顔でイリス殿下は私の反論を封じる。
「折角なんだから、今朝のことは忘れて楽しもう」
「はい」
私の言葉にイリス殿下は満足そうに笑った。
イケメンの笑顔は私には刺激が強すぎるので赤くなる頬を見られたくなくて顔を俯かせた。
「今日、とても可愛らしい格好をしているね。私のためにおめかしをしてくれたと自惚れて良いのかな」
「・・・・えっと、あの」
「ん?」
事実だけどそれを肯定するのはとても恥ずかしい。でも、だからって否定をするのは失礼だし。
答えに困っていると前に座っていたイリス殿下の手が伸びて、私の髪を掬い上げた。
「本当に可愛いよ」
ちゅっとイリス殿下が私の髪にキスをした。
それだけで私の全身は湯だったお風呂に浸かったみたいに熱くなり、顔から湯気が出そうだった。
そんな私をイリス殿下は嬉しそうに眺めている。
きっと、私をからかって楽しんでいるのだろう。そう、分かっていても一度沸騰した体はなかなか元には戻ってくれなかった。




