7 魔力の暴走
「実は、私も第3宇宙からの転生者です」
え。
嘘だろ。
「えーと、冗談……ですよね?」
「いや、本当ですよ。ちなみに転生前は春岡 冬華という名前でした。98回目の転生で、ちなみに今は534歳です。あ、敬語じゃなくてもいいですよ。私はいつもこの喋り方なんで」
だいたいタメ(?)か。
「見張りの人は、魔法使いの事を相当憎んでいるような口ぶりだったが、あれは一体どういう事なんだ?」
「現在、この世界では、魔法使いと、剣士の対立が続いています。このゼード州には剣士の本拠地で、私たち魔法使いはこの強制収容所に入れられ、最後には公開処刑で殺されてしまいます」
「俺たちの処刑はいつなんだ?」
「私は明日です。あなた……ではなく、あなたの体は何か事件を起こしたみたいなので、同じく明日です。そういえばあなたは転生何回目ですか?」
「98回目だ」
「じゃあ、別に死んでも転生できるのでよくないですか?個人差あるらしいですが、転生ボーナスももらえるみたいですし……私も98回目なので、一石二鳥ですよ!」
めちゃくちゃポジティブ思考だな……
というか、それだったらまた出落ちも同然じゃないか!
カメ以外で全部出落ちだった俺にとって、それだけは絶対避けたいのだ。
「どうせなら、脱獄しましょう!」
「ま、まぁ、グライアさんがそう言うのでしたら……」
ーーその夜、フユカとの作戦会議が始まった。
作戦はこうだ。
翌日、脱獄の公開処刑時に、フユカ先頭、俺は一番最後らしいので、間にいる魔法使いたちを全員助けるため、先頭のフユカが人間形態から、ドラゴン形態になる。周りの護衛たちをフユカが倒し、倒れた護衛たちが持っているという手錠の鍵を全て奪いとる。周りの魔法使いには、強制収容所内の魔法使いを全て救出してもらう。おそらく、その後は戦闘に突入するので、フユカや魔法使いたちと戦う。正直、勝算は低いらしいが、ゼード州にいる剣士も、他の州に行っている者もいるため、沢山いるわけではないという。
ーーそして翌日。
作戦は大成功だった。
収容所にいた魔法使いは全員救出され、敵味方共に死者はでなかった。
それと、もう一つ。
剣士と魔法使いの間で、平和条約が結ばれ、両陣営の対立は集結した。この作戦を提案したのは自分だったので、なんか色々表彰された。フユカは別に不満そうな感じではなく、素直に喜んでいた。
別に、そういうことは気にしないらしい。
ーーそして約1500年の月日が経った。
今はちょうど2000歳だ。
今に至るまでに何があったのか、「光操」を使って表示させて見る。
ちなみにこの「光操」は、最初に使用した「ステータス表示」の応用だったみたいだ。
=====
この約1500年の間にあった出来事年表
518歳 剣士と魔法使いの対立集結。
平和条約を結ぶ。
536歳 「延命」(体力の最大値と引き換えに寿
命を増やしてその分若返る魔法。)を取得。
640歳 英雄として讃えられる。
885歳 フユカと再会し、一緒に旅に出る。
1208歳 フユカと結婚
1532歳 ゼード州に帰ってくる。
双子として、二匹(人)の卵が生まれる。
ドラゴンの特性により、フユカが死んで
しまう。転生により、第2宇宙へ。
1533歳 フユカの死で、精神が崩壊し、再び旅へ。
1600歳 ステータスが上限に達する。
世界最強になる。
1601歳 その後も旅を続け、現在へ。
=====
ーーフユカが死んでしまってから、約500年も経つ。今はどこにいるのだろうか。
卵は孵化しただろうか……名前はゼード州のカンナ村というところに預けた時に伝えておいた
が…
「……今、俺には世界最強のステータスがある」
そう言って俺は「ステータス表示」を使う。
=====
グライア=ワイズミ 男(2000)
職業:魔法使い
レベル500(最大:500)
体力:1(最大:1)
魔力:1996(最大:1998))
攻撃力:912
防御力:823
素早さ:1582
知力:2304
魔法:ステータス表示、火操、雷操、地操、風操、水操、光操、闇操、氷操、時操、延命、転生……(あと百個ぐらいある。)
特殊能力等:転生ルーレット使用(残り使用回数1回)、自害転生、言語理解、平和主義
=====
もうレベルMAXなので、旅をする必要はない。
もう、体力も限界で、次に「延命」を使えば、俺は確実に死に、自害転生が発動し、1500年前からやり直しだ。そんなことは絶対にあってはならない。
すべきことは、ただ一つ。
ーー「転生」だ。
この魔法を使用すれば、転生することが可能だ。しかし、膨大な情報を一気に他の次元に送ることになるので、何が起こるかわからない。
でも、やるしかない。
俺は転生魔法を起動し、溜め込んで来た膨大な魔法が全て放出されるーーすなわち、魔力の暴走だ。
だが、もう手遅れのようだ。どんどん俺の周りの魔力は収縮していきーー凄まじい音とともに
大陸一つ吹き飛ばすほどの勢いで爆発した。
俺の意識はだんだん遠のいていった……
次回、本編に突入します!!