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37 勝ち目がない

開けた木箱の中には謎の枝が入っていた。



「な、何でしょう……」

「とりあえず、リアさんの所に持って行けば、分かるのでは?」



俺たちはリアの所へ戻った。



リアはシルフィから逃げ回っているようだ。

「遅い、遅いのだ!アレは持ってきたのか!?」

「アレってこれ?」

「なんなのだ?」

「いや、持って来いって言ったのあなたでしょ!」

「まぁ、いいのだ。とりあえずこっちに投げるのだ!」

リアに謎の枝を渡すべく、投げた。



「なんだその貧相な枝は。目障りだ」

リアが謎の枝を受けとる少し前に、シルフィから斬撃が飛んできて、リアに向かっていく謎の枝を横から切断ーーしたように見えた。



枝に当たった斬撃は、ダメージを与えることもなく、そのまま消滅してしまった。

「「「は?」」」

3人同時に驚いている。



「な、何が起こったのだ……」

枝はリアの所までついたが、唖然としていて受け取らないし、勢いのまま地面に衝突して、割れーーずに深々と突き刺さっている。



「「どんな枝なんだよ!」

今度は俺とシルフィが同時にツッコミを入れる。



「これ、一体何なのだ?」

興味津々のリアが刺さっている枝を抜こうと触れた瞬間、強い光が枝から放たれた。



「うおっ!?」

目を開けると、リアの手には枝ではなく、立派な槍が握られていた。



「す、すごすぎるのだ……。力が無限に湧いてくるのだ……」

「なんだ?それは?」

「ちょっと、意味わからないんだけど……」

エイレーネが答えてくれた。



「恐らく、先程の謎の枝はかつてポセイドンが使っていた武器の三又の槍、トライデントです。リア様はそれを手にしたので、今まさに神の力を手に入れました」

「神のポセイドンって、どれぐらい強いの?」

「……わからないです。見てれば分かると思います」

「じゃあ、アタシがあいつを倒せばアタシが神ってことか?」

「それは違うだろ!」



「……カミカゼ=ラシルフィード、かかって来い」

今までの言動から想像できないほど覇気のかかった声でリアが言った。



「いくぞ!」

最初にシルフィが斬撃を飛ばして後ろにつく。

さっき俺を吹っ飛ばしたのと全く同じ方法だ。



「これがどうしたのだ?」

リアが槍を勢いよく振ると、背後から9つも頭がある巨大な水の龍が現れた。



「行け。ヒュドラ」

リアがそう言うと、ヒュドラは咆哮を上げながら、シルフィに向かっていった。



「あれ何だ!?どういう仕組みだ!?」

「水に命を吹き込んだ。早く倒さんと、やられるぞ?」

リア、やばすぎるだろ。

命に関わる魔法は、「延命」か、「不老不死」しかないはずだ。

これも神が成せる技なのか?



「うっ!あぐっ!ぐぁぁっ!」

さっきから、ヒュドラの攻撃は一方的で、斬撃で首を切り落としても、他の首が襲ってくる。



「ほらっ、どうした!?剣聖?我に辿り着くのは、まだまだ早かったのだな」

「う、うるさい……!」

そう言ってシルフィが斬撃を飛ばすと、ヒュドラの最後の首が切り落とされて、ヒュドラは消滅した。



「少しはやるようだな。これならどうだ?」

今度はリアが槍を頭上で振り回すと、ものすごい数のヒュドラが現れた。



「なっ……!」

「ヒュドラが11体なのだ。合計、99本の首だな。こんな物、我の魔力のスズメの涙ほどでしかないが、まぁゆっくり観戦させてもらうのだ」

もうここまで来ると、カオスだな。



ヒュドラの首が、一斉にシルフィに襲いかかる。

「うぐぁぁぁぁっ!……ハァッ…ハァッ……!」

「お前ら、もう一度だ」

もう一度、ヒュドラたちがシルフィに襲いかかる。



「うっ……ぐっ……」

「これで最後だ。行け」



ドォォォンッ!

俺は咄嗟に「朱雷」を使って、ヒュドラ達を消滅させる。

「お前……なんで助けた……」

「強いて言うのなら、旧友だからかな」

俺は回復魔法でシルフィの体力を回復させる。

「……礼を言う」



「リア!?もう十分でしょ!?なんでそこまで……」

「神へ逆らった罰なのだ」

「……シルフィ、完全に意識を乗っ取られてるみたい」

「……そうみたいだな」

「ここはひとつ、協力しない?」

「お前、アタシより弱いだろ」

「本人の前で言うな。……それは接近戦での話だよ。魔力と知力なら、あなたよりは全然高い」

「……援護を頼む。魔法が飛んできたら、消滅させてくれ」

「わかった。その前に、あなたの剣貸して。すぐ返すから」

俺はシルフィから剣を受け取り、「朱雷」を付与して返した。



「これ、威力やばくないか?」

「多少は、リアの魔法にも対抗できるはず」

「さっきまで、本気を出していないのはお互い様だったようだなーー」



「仲直りは済んだか?お前らもろとも、神に逆らったこと、後悔させてやるのだ!」

「……グライア……いや、ライナ。行くぞ!」

「うん!」



シルフィが走り出したのと同時に、リアが水のレーザーを飛ばしてくる。

最初に戦った時とは威力が全く違う。



「ライナ、頼む!」

「はぁっ!」

水のレーザーを、魔法で消滅させる。



水と雷が飛び交う所をシルフィがくぐり抜け、リアの所に辿り着く。

「接近戦か。いいだろう」

そう言ってリアが槍を振り下ろす。



「剣聖、舐めんなっ!」

風操魔法を使って体を横にスライドさせて槍を回避して、リアに一撃を決めようとするーーが、その瞬間にリアが体の向きを変え、シルフィが顔面にモロにパンチを食らってしまった。



「ぶはっ……!」

「まじか……」

殴られたシルフィが一直線にこちらへ飛んできたので、受けとめてあげた。



「今度はこちらから行くぞ」

リアが槍を持ってこちらへ走ってくる。

走ってくると言うよりは、殆ど低空飛行しているような状態に近い。



トライデントの射程に俺たちが入ると、横になぎ払ってきた。

「ちょっと待っーー」



リアが走り始めてからなぎ払い終わるまでにかかった時間はほんの0.1秒。

俺たちとリアの距離は、50メートルくらいしかなかったが、リアの槍が俺たちを吹っ飛ばすのに十分すぎる時間だった。



防御もできないままリアの槍を食らい、2人そろって横に吹っ飛ばされる。

念のため俺たちは防御魔法を使いながら戦っていたので、体は半分になることなく、吹っ飛ばされただけで済んだ。



だが、槍が当たった後は、俺たちが弾丸の如く飛んでいき、村を破壊し続けて最終的に村を囲う海水に入って100メートルぐらいの所で勢いは止まった。



「ゴボベブッ!(溺れる!)」

「ゴボ……シルフィって魔法殆ど使えないの!?」

「ゴブッ!ゴボッ!(そうだ!早く!)」

苦しそうにしてたので、「水中呼吸」など、計3つの魔法をかけてあげた。



「あ、ありがとうな」

「うん。いいよ。……ところで、どうするの?」

「今のところ、お前らに勝ち目はないのだ」



振り向いて見ると、後ろにリアが立っていた。

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